上 下
97 / 214
13頁

6

しおりを挟む
「え……リード……って」

「分かるでしょ?何のことか。」

「分かるけど…僕にそんなことが…」

「できるのっ!…もし、隼くんが私のことを隼くんの好きなようにできたらね?隼くんはきっと、男としての自信を持てるようになると思うの。……私との関係は外に漏れてはいけないから、そこで自信をつけることはできなくてもさ。…私との間で自信をつけていくことはできるじゃない?」

「そ、そうだけど……」

「だから、ね?やってみてよ。」


好奇心と興奮と優しさが見事に混在している菜摘さんの気持ちをそのまま表すかのような笑顔で、菜摘さんは僕の体を自分の方へと引き寄せた。

菜摘さんの言う事はよく分かる。

僕が、大好きな菜摘さんを…それも1周り以上離れた大人の女性をリードすることができたら…満足させることができたら、きっと少しは胸を張って菜摘さんの隣にいられるようにはなると思う。

そして自分に自信をつけることは、菜摘さんと精神衛生上健全に付き合う上で早急の課題であることも痛感している。

「隼くん……ねえ、私を好きにしてよ……。」


僕の戸惑いが直接菜摘さんの体に伝わったのだろうか。

菜摘さんはそんな僕の背中に手を回し、優しく指を動かしながら僕の気持ちを昂らせる。

「菜摘さん……」

「隼くん……?隼くんはもう、私がどんなことをされると悦ぶのか…どこをどう触られるのが好きなのか、ちゃんと分かってるよね……?」

「う、うん……」

「隼くんお願い……はやく……」

「……っ……」


菜摘さんの好色めいた目と艶やかな息遣いに、僕は思わず自我を一瞬にして忘れ去りそうになる。

最近、理性と感性のスイッチが切り替わる瞬間を自覚できるようになってきた。

僕の全身に触れる菜摘さんの柔らかい体温。

耳にかかる温かな吐息。

嗅覚を雅に刺激する彼女の甘い香り。


僕は気がついたら、菜摘さんをソファの上に押し倒していた…。
しおりを挟む

処理中です...