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あっという間に放課後になった。

僕は今日がイベントだったおかげで、いつもよりイジメられずに済んだ。

みんなの意識がイベントの方に向くおかげで、誰も僕を意識に留めておくくらいの余裕など持ち合わせないのである。

それはとても有り難いことだった。



(あれ…?この箱は……)

教室から出て昇降口へ向かい、自分の靴棚の扉を何気なく開ける。

すると中には、淡いピンクの花柄の包装紙でラッピングされた箱が入っていた。

思わず取り出して箱の全面を見てみるが、特に名前が書いてあったり手紙が一緒に置かれたりしている訳ではない。

(本当に僕にくれたものなのかな…?もしかして、誰かと間違えてたりして……)

学校における僕はこのイベントに無縁であるとばかり思っていたので、僕は真っ先にそう考えた。

せめて記名があれば確認することも出来るのに……。

僕が困ったようにその場に立ち尽くしていると、後ろから声をかけられた。

「隼?何してんの?」

「…村上くん!」

僕の後ろに立っていたのは、冬休み明けに菜摘さんについて話したとき以来特に会話をしていなかった村上くんだった。

「お前、それ……」

「ここに入ってたんだ。…でも名前も書いてないし、本当に僕にくれたものなのか分からなくて…。」

「箱開けてみたら?」

「いいのかな?もし、誰かと間違えてた僕の所に入れてたとしたら……」

「あー、まあその可能性もあるか。てかその可能性の方が高いよな。」

「うん……」

「あれ?よく見たら紙と箱の間になんか入ってね?」

「え?……あ、ほんとだ。」


村上くんに言われて気づいたのだが、よくよく見てみると包装紙の中に何か手紙のようなものが入っていた。

「とりあえずそれ見てみろよ。」

「そうだね…」

丁寧なラッピングをゆっくりと剥がし、中にある小さな手紙を取り出した。

そこには………

『隼くんへ。絶対に誰にも言えないけど、本当は好きです。よかったらチョコ食べてね。』

何と、本当に僕にくれたものだったということが分かる文章が書かれていた。

「……はぁ~。何なんだよお前!モテやがって!」

「ぼ、僕もわかんないよ……誰なんだろう…」

「知らねーよ!菜摘さんという存在がありながら更に他の女に好かれるとかよー!ふざけんな!」

「ふざけてないよ……僕だって驚いてる……」

村上くんに言った通り、あまりにも身に覚えのない文章に驚くしかなかった。

学校でいじめられている僕を、好きだと言ってくれる子が本当にいるのだろうか……。

僕は普段、女の子と話すことすらないのに……

特に昭恵さんの一件以来、むしろ女子から避けられているのに……。
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