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『20XX年 3月20日


隼くんが、今日から春休みに入った。

隼くんは4月になったら6年生になる。

こういう時期になると、隼くんがまだ小学生であることを改めて意識せざるを得なくなるから困る。

私と隼くんの関係は、まるで一般的なカップルのよう。

隼くんが異常な程に大人びていて聡明であることも関係しているのだが、普段は私達がそこまで年の離れていないカップルのような感覚に陥るっている。

それなのにまだ隼くんは小学校すら卒業していない年であることを考えると、やっぱり気が遠くなってしまう。

隼くんが早く、せめて18歳になってくれれば……

そんなことを考えてもどうしようもないということは分かっているが、どうしても考えてしまう。

そして、少し不安でもある。

隼くんが、バレンタインに女子からチョコを貰ったと聞いたから……。

やっぱり隼くんの魅力は他の女子たちにも見つかってしまっているのだ。

普段はいじめられていて、クラスでも目立たない存在なのかもしれないが、もともとのスペックの高さに加えて完璧に近い人間性や子供ながらに持ち合わせている妙な色気を感じ取っている子もいるんだ……。

そう思うと、私もみすみす今の関係にあぐらをかいているわけにはいかなくなる。

普段は割と余裕ぶってはいるけれど、心の中ではとても不安。

今は私を好きでいてくれても、隼くんの良さに気づいた同い年の子が隼くんにアピールしたら、隼くんはどうするのだろうか?

年の離れた私よりも、堂々と交際できる同い年の子に気持ちが傾いてしまうのではないか?

…そんな不安がたまに頭の中を掠めるのだ。
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