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好きな人と付き合うということ。

それは、お互いの愛情と深い信頼関係の上で、互いを受け入れ合うことだと思う。

だからこそ時には衝突もするし、意見が合わない時だってある。

だけどそんなぶつかり合いすらも愛おしくて尊く感じてしまう。

それが、僕が菜摘さんから教えられた愛情だ。


「……ごめん隼くん。」

「謝らないで。……僕はこうして菜摘さんと素直な話し合いができるのが嬉しいから。」

「私もよ。隼くんとなら、どんな時間も愛おしい。…思ってることを言ってくれてありがとね。」

「うん……!……とにかく、僕は菜摘さん以外からお菓子は受け取れない……そう伝えておいて欲しいな。」

「そっか。ありがとね隼くん。」


柔らかく微笑む菜摘さんの頬が少し紅くなったのが分かった。

僕は菜摘さんのこういう照れ屋な所も、僕がまだ子供だと思って色んな意味で油断しているところも好き。

「でも隼くん…それを言っちゃうと、昭恵ちゃんに私たちの関係がバレちゃわないかな?」

「関係自体がバレることはないと思うよ。ただ僕が菜摘さんに好意を持ってるっていうだけの話になると思うし。村上くんの時もそうだったけど、まさか僕と菜摘さんが付き合ってるなんて誰も思わないだろうし。」

「……それもそうね。」


僕が菜摘さんと付き合っていることを知ったら、クラスメイトはどう思うのだろうか。

特に男子のあこがれの存在である彼女と付き合えていることが分かって、僕に対しての見る目を変えてくれるのかな。

とても綺麗で優しくて上品な年上の女性と付き合えている僕に、嫉妬してくれたり見直してくれたりするのだろうか。


時折、こんな馬鹿なことを考えてしまう。


だけど僕は、菜摘さんとの関係を皆に見せびらかして自分の存在意義を高めたいわけではない。

僕と菜摘さんの世界に、誰も入ってこない方がむしろ好都合だ。

こんな独り善がりで閉鎖的で排他的な気持ちは、僕が全力で菜摘さんを好きだからこそ生まれてくるもの。

そんな自らの暴走をも心地よく感じてしまう程、今の僕には菜摘さんしか見えていないんだ……。
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