その男、人の人生を狂わせるので注意が必要

いちごみるく

文字の大きさ
9 / 213
2人目:偏屈教師の話

5

しおりを挟む
「え……先生……?」

驚き動揺する醍醐が後ろを振り向いた瞬間、俺はその頬にキスをする。


「えっ!……????」

醍醐の目が泳ぎ、半分パニックになりそうな勢いで俺の行動に驚いている。

「すまない醍醐。俺自身、今どうしてこんなことをしているのかわからない。だが、今だけこうさせてくれ……!」

俺は醍醐の手を引き椅子から下ろし、壁に背を押し付けキスをした。

「んっっ!!!」

突然の出来事に咄嗟に抵抗するが、俺の舌は容赦なく醍醐の口へと入っていく。


「っっんんっ」

苦しそうに息を繋ぐ醍醐の吐息とその声に、俺の体は本来男子生徒相手にすべきではない反応を示していた。


「すまないな醍醐。………いや、隼……。お前は、俺にとっての唯一の生徒だよ」

泣きそうな目を向け必死に逃げようとする隼の手を抑え、自分の脚で隼の脚を動かないように固める。

暴れながらも時々見せるその目には、さっきまでの言葉を後悔するような哀しい後悔を宿していた。


無理もない……

あんなに信頼してくれていたのだ。

俺は今、25年間得られなくてやっと得ることができた信頼を一瞬にして壊したのだ。

だけど、もうどうすることもできない……


やっと気づいた自分の本当の気持ちに、もう歯止めをきかせようなどとは思えなかったのだ。

「奥山先生…なんでこんなこと……」

隼は涙目になりながら、俺の行動を咎めるような弱々しい声を出す。

「俺は、お前のためなら教員を辞めてもいい。今こうして…一瞬だけでもお前と繋がれるなら、その後の人生がどうなろうと後悔などしないよ」

そう言って俺は、堪らず隼の身体を貪り始める。

すると隼は思いの外、激しく抵抗をした。

「なんでだよ隼っっ……お前、俺に同情してくれたんじゃないのか…?」

隼の耳を噛み、唇を奪い、ネクタイを外し、ブレザーを脱がす。

隼の抵抗に合いながらも、力技で無理やりその上半身を顕にすることができた。

「同情なんて、してません……僕はただ……」

目の前に現れたのは、信じられないくらいに綺麗な上半身。

若さを見せつけるような肌に淡い色の2つの突起。

うっすらと割れた腹筋が余計に欲を誘う。


それを眺める俺の上からは、隼の哀しそうな声が降り注ぐ。


「先生には、こんなこと…してほしくなかった……」


ポロポロと涙を溢しながらそう訴える目は、本当に俺を憐れんでいるかのようだった。


俺に現れた最後の生徒。

俺を1人の教師として、人間として見てくれた唯一の生徒。

そんな生徒からの、唯一無二の信頼。

それが音を立てて崩れていくのは、隼の顔を見ればすぐに分かる。

こいつは、俺に教師としてここに居続けてほしいからこそ止めようとしたのだろう。

話によると、駅のヤサグレ連中の時はさほど抵抗をしなかったという。

しかし俺のときには激しく抵抗した。

それはきっと、俺をギリギリの所で踏みとどませる為の最後のチャンスを与えてくれていたのだと思う。

だけどそれももう、無意味だ……


俺はこいつがくれた最後のチャンス、尊敬の念、信頼というものを、全て自分の手で握り潰すしかなかった。


「んんっ……」

再び入っていく俺の舌。

柔らかくて熱い隼の唇。

こんなに若くて綺麗な少年が、俺のような50近くて汚いオッサンに汚されている……

その構図に俺は堪らなく興奮した。


「隼……」

俺は名前を呼びながら、隼の手を俺の自身に持っていく。

隼はもう、抵抗などしない。

こいつはもう、俺を止めることを…

俺を教師として認識することを、諦めたのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...