異世界の学園にて学園生活を謳歌するはずだった

シロ

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2、魔獣飼育と新しい命

ウサギと性別偽装と雰囲気

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「ちょっと、お腹をやられたの?」
「ち、違います。そ、その」
「?」
「おかしゅうて」
「悪かったわね」
あの事件で変化したことが1つあった。イスカの性別が男性だとルームメイトのレイカだけに勘付かれたのだ。ロンとロイズは最初から知られていた。その前から薄々と気付いてはいたので彼女にとっては確定させただけだった。
それまでは疑いたくなかったのかそれまでレイカからイスカにその疑問を投げかけることはなかった。あの時はふと口にしてしまったそうだ。
「別にいいじゃない、この体は女の子なんだから(本当は違うけど)。美少年が美少女って名乗っちゃダメなんて校則ないんだし」
本来の、生まれ持っての姿を見られたわけじゃない。そう知ったイスカは美少女に見える少年という設定を突き通すことを心に決めた。
本来の姿を見せたわけじゃないので見た目の誤解を解くのが面倒になった男の娘だろうとレイカは思っているらしく、元々あれこれ探索しない性格も相まってイスカが言わない限りレイカの方からは特に何も尋ねてこない。さらに都合のいいことに側にいい例がいた。レイカはそれが当たり前なのだとすんなりと受け入れてくれたし、部屋もそのままでいいと言ってくれた。
書類に偽装さえしなければ性別偽装は法で裁けない。
どうやら知らないうちにレイカのイスカに対する人物評価が仲の良い生徒から友達へと昇格していたらしい。
イスカにとって非常に喜ばしい事実である。
「でも、何故胸が?」
「う、そ、それは・・・・・・ほら、どうせ女の子になるんだったら巨乳美少女の方がいいでしょ」
 言えない。ロイズのあの言葉にカチンときたからだなんて。
「そう、どすなぁ」
明らかに意気沈降したレイカの手をイスカは思いを籠めてしっかり握る。
「あたしは貧乳のほうが好きだからね」
両手を握り締めて彼女の顔を真正面に見据えた状態で力説するような内容ではない。
案の定、イスカの頬に真赤な紅葉が張り付いた。
「成長(同調術を使用)したら大きくならはるからええもん」
確かに同調術で精霊の力をその身に宿した姿のレイカはモデル顔負けのナイスバディーだったな、胸はなかったけど、と思い出すイスカの顔は緩みきっていた。
「けどさ、いくら学園を無断外出した罰って言っても課題の量が半端じゃないよ。一国と学園を救ったんだからもうちょっと少なくしてくれてもいいじゃん。どうせ誰も覚えてないんだから」
苦笑いをしながらレイカは本棚に本を戻そうとして倒れた。背丈が足りないで爪先立ちになりバランスを崩したのだ。床に衝突する前にイスカがレイカの小柄な体を後ろから受け止める。
「高さが足りる人がいるんだから頼みなさいよ」
そうできないのがレイカの謙虚なところであり、消極的な性格だった。本人は直したいと思っているようだが、この調子ではまだまだ努力が報われたとはいいがたい。
「あのなぁ」
「うん、何?」
「そういえばロンはん最近見いひんなぁ思うて」
なんで恋人みたいないい雰囲気になるたびに毎回見事フラグを圧し折ってくれるのだろうか、あたしの想い人は。どうしてこの状況で他の人、しかも男性で身近な奴の話が出るのか。
大きさも抱き心地も丁度いいレイカの温かさを腕の中に収めたまま、イスカはガクリと項垂れるのだった。
「あとちょっとでいいから雰囲気を感じてよ」
「そういえば、何か出そうどすな」
その雰囲気じゃない、と叫ぼうとして止めた。

                                 続く
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