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2、魔獣飼育と新しい命
カメ、励まされる
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5時間目が終わり、今日の昼からの授業時間ほとんどが自習となってしまった。
午後の授業は全て特性別クラス(特別クラス)に分かれての授業に割り当てられている。ロンが強制療養となり、リング先生も途中で姿を消したため今日も今日とて自習となった。
レイカも別だって文句はなかった。自習は自慢できることでもないが、結構得意だし、授業中なので誰からも邪魔されずに静かに本を読むには最適な時間でもある。
しかし、今日は目にしているはずの文字も小さな挿絵も頭の中に入ってこない。脳裏に流れるのはずっと同じ映像だった。
液体の入った袋から出ている細い管が新雪のような腕に針を通し、時計の刻む音よりもゆっくりと中の液を送り込んでいく。何も言わず、海の色を閉じ込めた紫水晶の瞳も白い門の向こう側で見たくてもそれは敵わない。
彼の姿は昔病院で少し眠ると言ったっきり起きてこなくなった祖母に似ていた。
「なーに、落ち込んでんだ」
教科書を片付けていたはずなのに何時の間にかボーっとしていたらしい。イスカに頭を小突かれてレイカは不安定な世界から現実へ手を引っ張られた。
「・・・イスカはん」
「大丈夫よ。彼どう見たってあたし達と同じくらいの少年でしょ。寿命が尽きそうってわけじゃないんだから、すぐいなくなるってことはないわよ」
「そうどすな」
子供の姿のままで死ぬ種族など聞いた事がない。文献にも載っていなかった。
イスカの言葉に心が少し軽くなったレイカは、彼と保健室を目指して・・・・・・入るのを躊躇した。
「何、あの臭い」
「うち、黄緑色の煙って見るの始めてやわ」
ツーンと鼻を突く異臭といかにも目に沁みそうな煙が保健室から発生している。そして、周りに死屍累々と転がる生徒達。
「獣人とインセクター。嗅覚が鋭い種族にこの臭いは強烈過ぎるってことね」
「イスカはんは平気なんどすか?」
獣人は五感のいずれかが特化する形で進化してきた種族だ。オマケ効果として獣になれる能力もついてきた。そのため、こういった現象には弱いのだろう。様子を見に来た獣人とインセクターの先生もドアに触れられずに次々と倒れていく。そのうち、他の種族の先生が助けに来るだろう。保健室内に原因があるのでこの部屋で治療は無理だが、今は運び出す生徒もいない。
「あたしは聴覚特化型の獣人だから。きついことはキツイけどそこまでないわ」
「うさぎはんでしたね」
「レイカは平気?気分悪くない?」
「うん、うちは平気。せやから、ちょっと行ってくる」
人間の嗅覚だと少しきつい程度にしか感じない。
人間の五感はどれにも特化していない。中途半端な品物だ。今日ほどそれでよかったと思える日もないかもしれない。
続く
午後の授業は全て特性別クラス(特別クラス)に分かれての授業に割り当てられている。ロンが強制療養となり、リング先生も途中で姿を消したため今日も今日とて自習となった。
レイカも別だって文句はなかった。自習は自慢できることでもないが、結構得意だし、授業中なので誰からも邪魔されずに静かに本を読むには最適な時間でもある。
しかし、今日は目にしているはずの文字も小さな挿絵も頭の中に入ってこない。脳裏に流れるのはずっと同じ映像だった。
液体の入った袋から出ている細い管が新雪のような腕に針を通し、時計の刻む音よりもゆっくりと中の液を送り込んでいく。何も言わず、海の色を閉じ込めた紫水晶の瞳も白い門の向こう側で見たくてもそれは敵わない。
彼の姿は昔病院で少し眠ると言ったっきり起きてこなくなった祖母に似ていた。
「なーに、落ち込んでんだ」
教科書を片付けていたはずなのに何時の間にかボーっとしていたらしい。イスカに頭を小突かれてレイカは不安定な世界から現実へ手を引っ張られた。
「・・・イスカはん」
「大丈夫よ。彼どう見たってあたし達と同じくらいの少年でしょ。寿命が尽きそうってわけじゃないんだから、すぐいなくなるってことはないわよ」
「そうどすな」
子供の姿のままで死ぬ種族など聞いた事がない。文献にも載っていなかった。
イスカの言葉に心が少し軽くなったレイカは、彼と保健室を目指して・・・・・・入るのを躊躇した。
「何、あの臭い」
「うち、黄緑色の煙って見るの始めてやわ」
ツーンと鼻を突く異臭といかにも目に沁みそうな煙が保健室から発生している。そして、周りに死屍累々と転がる生徒達。
「獣人とインセクター。嗅覚が鋭い種族にこの臭いは強烈過ぎるってことね」
「イスカはんは平気なんどすか?」
獣人は五感のいずれかが特化する形で進化してきた種族だ。オマケ効果として獣になれる能力もついてきた。そのため、こういった現象には弱いのだろう。様子を見に来た獣人とインセクターの先生もドアに触れられずに次々と倒れていく。そのうち、他の種族の先生が助けに来るだろう。保健室内に原因があるのでこの部屋で治療は無理だが、今は運び出す生徒もいない。
「あたしは聴覚特化型の獣人だから。きついことはキツイけどそこまでないわ」
「うさぎはんでしたね」
「レイカは平気?気分悪くない?」
「うん、うちは平気。せやから、ちょっと行ってくる」
人間の嗅覚だと少しきつい程度にしか感じない。
人間の五感はどれにも特化していない。中途半端な品物だ。今日ほどそれでよかったと思える日もないかもしれない。
続く
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