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2、魔獣飼育と新しい命
カラス、端的に話す
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「はぁ?脅迫状??」
「学園にどすか?」
「・・・あの子の両親に」
淡々と話すロンの言葉をつなげていくと、
先日に赤ちゃんの両親に脅迫状が届いた。内容までは教えてくれなかったが、頓珍漢なものだったらしい。共に学生であることを学園に隠していた両親は育児疲れと相まってダメもとでロンに相談した。調査期間中のみと約束して秘密裏に預かったが、ロンも育児疲れに突入し、イスカ達にばらしてしまった。
そういうことらしい。何ともロンらしくない行動である。そうとう参っていたのだろう。
「それで何かわかったの?」
「・・・ある程度は」
「王様と何話してはりました?」
「・・・取引」
「身の安全と引き換えに何を?」
「・・・人探し」
ロンが差し出した写真にはプラチナブロンドの美女が赤ちゃんを抱いて微笑んでいた。エルフの中でも五本の指に入る美人だろう。
「綺麗な人どすなぁ。王女様とかやろか?」
「それはないんじゃない。だったら軍が動いてもおかしくないし」
「・・・・・・」
「おまえら、すごいことに首突っ込んでるんだって自覚あるのかよ」
「え、ないわよ」
「あらしまへん」
「・・・ない」
3人の返事にギジト先輩はイスにもたれ掛った。
「あったら教えてくれ、程度なんだな」
「・・・そう」
「なら、俺にも見せてくれ」
「・・・必要ない」
「なんでだ?」
言うなり、ロンはギジト先輩に切りかかった。隠しクナイが喉を切り裂く。悲惨な光景を見せまいと咄嗟にレイカの視界を塞いだイスカだったが、一滴の血も流れずに首が離れる。乾いた音と共に首が下に落ちた。
「な、な、何?」
「・・・彼が、敵」
「どこでばれたんだ?」
「・・・王と話を、の下り」
「そうね、先輩ならもうちょっと突っ込んでそう、ってそれだけ?」
「・・・人外臭はしていた」
「だとしても突然過ぎない?黒だったからいいものの」
「ふ、その程度でばれるとは、我もまだまだだな」
声が少年からしゃがれた男のものへと変わる。
「ふえ、誰かいはるの?」
あたふたしているレイカを落ち着かせるためにイスカは抱いている手にさらに力を咥えた。もちろん、目隠しもしたままである。首が落ちた先輩の姿など見せられない。
「ここでは逃げることもできんか」
天下無敵の霧白森で騒ぎを起こすなど滅多にないことなのだろう。住民が皆遠巻きに見守っている。
「ならば、せめて一太刀!」
そう叫ぶとロンでもイスカでもなく赤ちゃんに向かっていく。
「あ、危ない」
「・・・ッ」
「死ね!カーレントの神子!!」
「・・・五月蠅い」
ロンのクナイが間に合わないと思ったまさにその時だった。それまで黙っていた青年が放った重い矢の一撃によって首から下の死体は沈んだ。
「まったく、他国の者はこれだから困る」
涼しい顔で手を振る青年とのアイコンタクトに答えたロンが左胸にナイフを突き刺す。同時に黒い何かが首の穴から外に飛び出す。丸くて黒いそれは木々の陰に消えていった。
「なんだったのあれ?」
「カーレントの神子っていってはりました」
「そなたのことではないのか?」
「は、はい。そうどす」
カーレントとはこことは違う別の次元、科学が栄える次元のことである。レイカが底出身で、機械音痴の彼女がカーレントの神子である。
「これもおまえか?」
「ロンはんどうなんどす」
「・・・そう」
「じゃあ、あたし達ずっと小さなレイカちゃんを守っていたのね」
「・・・そう」
「こ、これがうち何どすか?」
「よく相消滅しなかった」
「・・・加工済み」
「どういうこと?」
「えっと、本来同一次元に同じ人がいるはずがあらへんの」
神子の中でもタブーとされている同空同時同心。レイカは今まさにその状態にあった。
「ロンはんありがとう」
「・・・礼は先生」
「どっちの?」
「リルク先生とリング先生」
「さすがこの世界の導きの神子はんと守りの神子はん。うちも早ぅそうならないと」
「それよりも、今学校にレイカのご両親がいらっしゃるのよね。挨拶行きたいんだけれど」
「・・・無理」
「諦めた方がいい。2週間はかかる」
「ガクッ、残念無念」
「うちら、どうやってここまで来はったん?」
2人を気にすることなく、ロンはロイズへと連絡するのだった。
続く
「学園にどすか?」
「・・・あの子の両親に」
淡々と話すロンの言葉をつなげていくと、
先日に赤ちゃんの両親に脅迫状が届いた。内容までは教えてくれなかったが、頓珍漢なものだったらしい。共に学生であることを学園に隠していた両親は育児疲れと相まってダメもとでロンに相談した。調査期間中のみと約束して秘密裏に預かったが、ロンも育児疲れに突入し、イスカ達にばらしてしまった。
そういうことらしい。何ともロンらしくない行動である。そうとう参っていたのだろう。
「それで何かわかったの?」
「・・・ある程度は」
「王様と何話してはりました?」
「・・・取引」
「身の安全と引き換えに何を?」
「・・・人探し」
ロンが差し出した写真にはプラチナブロンドの美女が赤ちゃんを抱いて微笑んでいた。エルフの中でも五本の指に入る美人だろう。
「綺麗な人どすなぁ。王女様とかやろか?」
「それはないんじゃない。だったら軍が動いてもおかしくないし」
「・・・・・・」
「おまえら、すごいことに首突っ込んでるんだって自覚あるのかよ」
「え、ないわよ」
「あらしまへん」
「・・・ない」
3人の返事にギジト先輩はイスにもたれ掛った。
「あったら教えてくれ、程度なんだな」
「・・・そう」
「なら、俺にも見せてくれ」
「・・・必要ない」
「なんでだ?」
言うなり、ロンはギジト先輩に切りかかった。隠しクナイが喉を切り裂く。悲惨な光景を見せまいと咄嗟にレイカの視界を塞いだイスカだったが、一滴の血も流れずに首が離れる。乾いた音と共に首が下に落ちた。
「な、な、何?」
「・・・彼が、敵」
「どこでばれたんだ?」
「・・・王と話を、の下り」
「そうね、先輩ならもうちょっと突っ込んでそう、ってそれだけ?」
「・・・人外臭はしていた」
「だとしても突然過ぎない?黒だったからいいものの」
「ふ、その程度でばれるとは、我もまだまだだな」
声が少年からしゃがれた男のものへと変わる。
「ふえ、誰かいはるの?」
あたふたしているレイカを落ち着かせるためにイスカは抱いている手にさらに力を咥えた。もちろん、目隠しもしたままである。首が落ちた先輩の姿など見せられない。
「ここでは逃げることもできんか」
天下無敵の霧白森で騒ぎを起こすなど滅多にないことなのだろう。住民が皆遠巻きに見守っている。
「ならば、せめて一太刀!」
そう叫ぶとロンでもイスカでもなく赤ちゃんに向かっていく。
「あ、危ない」
「・・・ッ」
「死ね!カーレントの神子!!」
「・・・五月蠅い」
ロンのクナイが間に合わないと思ったまさにその時だった。それまで黙っていた青年が放った重い矢の一撃によって首から下の死体は沈んだ。
「まったく、他国の者はこれだから困る」
涼しい顔で手を振る青年とのアイコンタクトに答えたロンが左胸にナイフを突き刺す。同時に黒い何かが首の穴から外に飛び出す。丸くて黒いそれは木々の陰に消えていった。
「なんだったのあれ?」
「カーレントの神子っていってはりました」
「そなたのことではないのか?」
「は、はい。そうどす」
カーレントとはこことは違う別の次元、科学が栄える次元のことである。レイカが底出身で、機械音痴の彼女がカーレントの神子である。
「これもおまえか?」
「ロンはんどうなんどす」
「・・・そう」
「じゃあ、あたし達ずっと小さなレイカちゃんを守っていたのね」
「・・・そう」
「こ、これがうち何どすか?」
「よく相消滅しなかった」
「・・・加工済み」
「どういうこと?」
「えっと、本来同一次元に同じ人がいるはずがあらへんの」
神子の中でもタブーとされている同空同時同心。レイカは今まさにその状態にあった。
「ロンはんありがとう」
「・・・礼は先生」
「どっちの?」
「リルク先生とリング先生」
「さすがこの世界の導きの神子はんと守りの神子はん。うちも早ぅそうならないと」
「それよりも、今学校にレイカのご両親がいらっしゃるのよね。挨拶行きたいんだけれど」
「・・・無理」
「諦めた方がいい。2週間はかかる」
「ガクッ、残念無念」
「うちら、どうやってここまで来はったん?」
2人を気にすることなく、ロンはロイズへと連絡するのだった。
続く
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