異世界の学園にて学園生活を謳歌するはずだった

シロ

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1、始まりの逃避とウサギの国での活劇

ウサギ、ガッカリする

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 振り返ると先程まで走っていた生徒や先生の姿が何時の間にか消えている。地面に倒れている数十人以外は・・・・・・死んではいないようだ。
「なぁ、その前に」
「何、レイカ?」
「そろそろ下ろしてくれへん?」
「え~、当分このままでいいじゃない」
「でも~、重くあらへんか?」
「ないない。小さくて軽くって、抱き心地抜群、ガッ」
レイカのアッパーがイスカの顎にクリーンヒットする。力が弱いので大して痛くはないが、意外な行動にイスカが怯んだ時、レイカは体を捻って腕から抜け出した。
「何時までも小そうて悪かったなぁ~!」
「ごめんごめん、やっぱ気にしてたのね。わかるわ、その気持ち。あたしもあと10センチほどはほしいもの。よし、一緒に牛乳飲もう!」
「はいなぁ」
「オマエラ、現実逃避スルノ止メロ」
大声で怒鳴りつけるロイズを2人はジト目で見た。
「だってねぇ~」
「これが船どすか?」
そこには帆があるだけのイカダが叢に隠されていた。帆の形が変わっていてかなり大きな作りになっているが、イカダ自体は5人までならなんとか乗れる程度で、かなり粗末な作りだ。長期航海に向いていないのは目に見えて明らかである。
「仕方ガナイダロウ。コレデモ最初ヨリハマシナンダゾ」
「これで・・・」
「最初よりマシなんどすか?」
自分たちも作ればよかったと後悔する2人だった。しかし、最初から作るには時間がないのでこの丸太を蔓で繋げただけの船を使うしかない。
「で、そっちの計画ではこれからどうするつもりなのよ」
「コレヲ海マデ持ッテクンダ」
「ちょっと、こんなんで本当に大丈夫なの?」
「俺モソウ言ッタンダガ、ろんガナ。“この方がいい”ッテ言ッテキカナインダ。念ノタメ補強シテ俺デモ乗レルヨウニシトイタンダガ」
形は頑として変えなかったそうだ。不安が拭えない3人だった。
「と、ともかく、早う持って行かな。ロンはんに何時までも頼ってるわけいかへんし」
「ソウダッタ。タダデサエ今朝体調悪ソウダッタ」
イカダを担ぎ上げるとロイズは海に向かって走り出した。足をキャタピラに変えたので速い速い。車並みのスピードにイスカとレイカはというと、
「よっしゃ、そこだ!それ行け、ロイズ!!」
「がんばってぇなぁ」
「オ前ラ、降リロ」
ちゃっかりイカダの上に座っていた。
「いいじゃない。あんた重さ感じないんでしょ」
「うち、こんな速よう走れへんわぁ」
「それに、防ぐ人も必要でしょう」
飛んできた氷の矢を炎で溶かす。種族属性が炎であるイスカにとって発火発熱はお手のもの。初級程度の氷魔法など簡単に防げる。上から襲い掛かってきた者はレイカの発動した風魔法で吹き飛ばされ、正面に立ち塞がった者はロイズの鋼のボディーによって弾き飛ばされ、落ちてきたところをキャタピラの足で轢かれる。
「よし、あと一息よ。そのまま突っ走れ!」
「そうもいかへんみたいや」
海まで後一歩というとこで進路に立ちはだかったのは先生達だった。3人とも実技の先生で、微かに聞こえた魔導歌の一節を耳にしたイスカは青ざめた。
中級の攻撃魔法の魔導歌だ。真ん中の1人なんか上級の魔導歌を唱えている。
「ちょっと、いくらなんでも普通の炎で上級魔法防ぐ術なんて無理よ」
「うちもちょっと自信ない。進路変更できへん?」
「デキルンナラ交通事故ナド簡単ニ激減ダ」
「威張って言うな!」
そうこう言っている間に距離が縮まり、先生達の手に光が集まっていく。ロイズがスピードを速めたが、間に合わない。
「ちょっと、あたしたち生徒なのに!手加減ってもの知らないの!!」

                            続く
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