異世界の学園にて学園生活を謳歌するはずだった

シロ

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1、始まりの逃避とウサギの国での活劇

ウサギ、カメ、出会う

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「おやぁ、興味深いものを持っていますね。日本製の扇で、檜製ですか。はてさて、どれだけ素敵な絵が描かれているのか。非常に気になりますねぇ」
上から降ってきた声に全員頭を上げる。
頭を上げなかった者が1人いたが、レイカに襲い掛かろうとした途端イスカの裏拳を喰らった。
「レイカの知り合い?」
「それが全く知らへんのよ。なんか、向こうは知ってはるようやけど覚えあらしまへん」
レイカの答えにイスカはあからさまに安堵した。
アーモンド状の仮面を被った触手の様な腕が6本ある知り合いがいると言われた時には・・・・・・対応の方法を変えるだけで結果は変わらないだろうが。
「うん、その子の言うとおり。初対面だよ。姿見たの初めてだし」
「「「ご機嫌麗しゅう、サザエルド様」」」
突如盗賊達が地面に這い蹲り、口々に賛美の言葉を唱える。目には正気の光が無くなり、額に何かの紋が浮かび上がる。
「成程、従属の魔法ね。けど、ただ単に三流盗賊をはべらせて悦に入ってるって訳じゃないでしょ、魔族さん」
「そうでもないよ。こうしているのも結構楽しいものだって。特に本人の意思に関係なく下賤の者を従わせる優越感なんて最高です。たまりません」
「悪趣味どすなぁ」
「同感よ。吐き気がするから消えて、フレームストリーム!」
炎を含んだ赤い熱風が盗賊達を一気に吹き飛ばした。
「さて、これで話しやすくなったわ」
「あ~あ、勿体ない。折角の下僕を~」
「心無い言葉って響かないのよね。で、魔族があたしたちに何か用なの?答え次第じゃ相手になるわよ」
正直あまり相手したくないと心の中で付け加える。
ちょっと間を空けたのは何かを考えたからだろうか。魔族はポリポリと頭をかくと1本の触手でイスカを指した。
「とりあえず、あなた自身には用がありませんねぇ。盗賊の真似をするのは非常に不本意ですが、これもあの方のため、我慢我慢」
「あのさ、こっちも急いでんの。さっさと言ってくれないんならもう行くけど」
「そっちの君はそれでもいいけど、そっちの子も一緒に連れてってしまうんでしょう。それじゃあこちらが困るんだよね。それにほしいのもあるからそれは置いていってもらわないと」
「は、何言ってんのよ。あんたが邪魔したから盗賊の宝手に入れ損ねたんじゃない。金目の物なんて持ってないわよ」
「いえいえ、あるはずですよ。だってそれはあなたの最も大切なリングなのですから」
「だったら余計渡せないわね。どちらも」
攻撃すると見せかけてレイカの手をとると魔族が動作を終える前に追い抜き、そのまま全速力でその場から逃げ出した。
魔族の放った黒い塊がそれまで2人がいた地面を砕く。
まさしく、間一髪。
連なる大岩を盾にしながらイスカは道を真っ直ぐに走った。ある程度だが整った道なので岩場を走るより楽である。全力疾走から少しスピードを落としたのはレイカを連れているからだ。運動が苦手であることも、平気そうな顔の裏に学園島脱出の時の疲れがまだ残っていることも、イスカはわかっていた。
心配をかけたくない時、レイカは無意識にその話題から逃げようとする。
それになんだかレイカの体調が変だ。手から伝わる体温が通常より高い。風邪って感じでもないのだが。
「レイカ、しっかり摑まってるのよ」
胸元に引き寄せると足に力を入れて思いっきり地面を蹴った。ウサギ族だからできる大ジャンプ。魔族のいる高さよりもさらに高い岩に着地した。

                           続く
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