異世界の学園にて学園生活を謳歌するはずだった

１、始まりの逃避とウサギの国での活劇

男、現る

「逃がしませんよ」
「それはこっちの台詞だ！」
伸ばした蔓は飛んできた火属性の魔法弾によって射撃され、レイカの体に触れることなく焼き消えた。
向かいの大岩のマンションの屋上からライフルを構えている男を視界に捕らえながらレイカは信じた友達の胸の中に落ちていった。
「よしよし。よく頑張ったね」
「うち信じとったから。ちゃんと受け取ってくれるって」
「もちろんよ。このあたしがあんたを取り逃がすわけないじゃない」
ナイスなキャッチとその雰囲気に周りから歓声が湧き上がる。顔を真っ赤にしたレイカがイスカの胸に顔を埋めてさらに小さくなった。
もしかして、彼女は気付いているのだろうか。それはあるはずじゃないと思い直したが、そうであってほしいとも思う。なんとも複雑な気持ちで二人を見守るミミだった。
「あーあ、邪魔が入ってしまった。でも、諦めるわけにいかないんですよね」
「ほーぉ、この状態でか？」
何時の間にか魔族の後ろに１人の男が立っていた。背丈が高く逆光で顔はよく見えないが、纏った白衣が風にたなびいている。手に持っているのは鉄製の筒に木製の手持ちがついた見慣れない道具だった。レイカだけは分かった。あれは種子島だと。さっき、視界に捉えた男の人だと。
白衣の右袖についているのは魔法学園の校章だ。
「あの人、うちらと同じ学校の人なんどすなぁ」
「あなたもしつこいですね。関わってほしくないんですけれど」
「あいつを傷つけたんだ。落とし前はきっちりつけさせてもらうぜ」
「傷って頬を掠っただけなんですが・・・そうですね、あなたみたいな人と戦ってみたい気もしますが、今は大切な時期。悪いけど引かせてもらいます」
「悪いが、それだとこっちの気が治まらねーんだよ！」
鉄砲を構え、引き金にかけていた指を即座に引いたが、一足遅く魔族は宙に姿を消す。弾はその残像を撃ち貫いて、後ろの壁に小さな穴を開けた。
「ち、逃がしたか。おい、そっちは無事だったか？」
上から降ってきた人物を見た２人の目が丸くなる。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く