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1、始まりの逃避とウサギの国での活劇
カラス、姿を消す
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ロンの眉間にシワが現れる。能面のように無表情なのがロンだから、これは珍しいことである。
「・・・思わない」
「あ、なんだと」
「・・・思っていない。そなたに好かれても迷惑なだけ」
「俺様も言い忘れていたぜ。その生意気な瞳と口を除いてだってことをなッ!」
見た目と反するほどのスピードで繰り出される攻撃。
「屈服させてやる。そして俺様に命乞いし、その身を差し出しな」
斬るためではなく破壊するために作られた大剣の威力は凄まじい。ロンの持っている小太刀は斬に特化した剣なのでとても受けられない。斬馬刀に近い武器なのだろう。小太刀の強度を考えると刃を交えようなら即砕かれてしまう。
それに細身なロンの体にはあの力を正面から受けるパワーも耐久力も無い。正面から受け止めようなら弾き飛ばされるか、真っ二つになるか。同理由で組もうなら組み伏せられてしまう。
だから、ロンは攻撃を避け続けた。自分は騎士や武士の類ではないし、元々そういう戦い方なのだから別だって苦ではない。攻撃はしたいが、潜入時に怪しまれないためにほとんど武器を持って行けなかった。持っているのは潜入前に岩陰に隠しておいた小太刀1つ。つまり、この武器が壊れることはロンの攻撃手段がほとんどなくなることを示している。そのため、ロンは受けずに避け続けていた。
「おらおら、力で敵わなくても魔法学校の生徒なら魔法でも使って攻撃したらどうだ?」
「・・・訂正を要求する。魔法学園」
それができたらとっくにやっている。
大きく後ろに跳び距離をとるとロンは刀を構えなおした。戦いにおいて表情を変えない彼にしては珍しく眉を顰めている。
それもそのはず。ロンが最も苦手としているのが攻撃魔法だと見抜かれたかもしれないからだ。他の魔法なら何の問題はないし、回復魔法なら得意中の得意。だが、何故か攻撃魔法だけは授業中でさえ1度も使っていない。
実は、先生でさえ彼が魔法を使ったことを見たことがなく、得意の回復魔法も出発前に校長先生に対して使ったのが学園生活上最初の魔法だった。
「来ないんならこっちから行くぞ。喰らえ貫け、レッドスティングズ!」
10個の赤い小石サイズの球体が周りに現れた。ザリアの合図で一斉にロンへ襲い掛かる。魔法の弱点の1つに呪文がある。魔法構成を知っている人が呪文を聞けばどのような形でどのように動き、当たるとどのような効果が得るのか全てがわかってしまう。最後に叫ぶ術名は技の種類と属性を表す言葉で構成されている。
最小限の動きで避けると後ろの岩に同形の貫通穴ができる。
「ほぅ、よく避けられたな。いや、それしか特技がないのか?」
ザリアの挑発にも怒りも悲しみも藤の瞳に映さず、ただ冷静にロンは彼の姿を見ていた。そして、持っていた小太刀の向きを逆に変え、静かに息を吐く。
「だが、何時まで逃げ続けるかな?」
振り下ろされた大剣の勢いに粉塵が舞い、辺りを包み隠す。今まで攻撃を受けても形を保っていた岩々も一気に崩壊し始めた。
いや、それだけにしては砂塵の量が多すぎる。砂塵が辺りを覆い、巨体であるザリアの胸元まで舞い上がり、小柄であるロンの姿を覆い隠した。
「ふん、姿を隠したか。臆病者め」
そう吐き捨て大剣を肩に担ぐとザリアは周囲を睨みつけるように見渡した。
目は血走り、飢えた獣に変貌する。その醜悪な気は彼の形相を変え、その瞳を見た者は畏怖に支配され、その場にへたり込む。
続く
「・・・思わない」
「あ、なんだと」
「・・・思っていない。そなたに好かれても迷惑なだけ」
「俺様も言い忘れていたぜ。その生意気な瞳と口を除いてだってことをなッ!」
見た目と反するほどのスピードで繰り出される攻撃。
「屈服させてやる。そして俺様に命乞いし、その身を差し出しな」
斬るためではなく破壊するために作られた大剣の威力は凄まじい。ロンの持っている小太刀は斬に特化した剣なのでとても受けられない。斬馬刀に近い武器なのだろう。小太刀の強度を考えると刃を交えようなら即砕かれてしまう。
それに細身なロンの体にはあの力を正面から受けるパワーも耐久力も無い。正面から受け止めようなら弾き飛ばされるか、真っ二つになるか。同理由で組もうなら組み伏せられてしまう。
だから、ロンは攻撃を避け続けた。自分は騎士や武士の類ではないし、元々そういう戦い方なのだから別だって苦ではない。攻撃はしたいが、潜入時に怪しまれないためにほとんど武器を持って行けなかった。持っているのは潜入前に岩陰に隠しておいた小太刀1つ。つまり、この武器が壊れることはロンの攻撃手段がほとんどなくなることを示している。そのため、ロンは受けずに避け続けていた。
「おらおら、力で敵わなくても魔法学校の生徒なら魔法でも使って攻撃したらどうだ?」
「・・・訂正を要求する。魔法学園」
それができたらとっくにやっている。
大きく後ろに跳び距離をとるとロンは刀を構えなおした。戦いにおいて表情を変えない彼にしては珍しく眉を顰めている。
それもそのはず。ロンが最も苦手としているのが攻撃魔法だと見抜かれたかもしれないからだ。他の魔法なら何の問題はないし、回復魔法なら得意中の得意。だが、何故か攻撃魔法だけは授業中でさえ1度も使っていない。
実は、先生でさえ彼が魔法を使ったことを見たことがなく、得意の回復魔法も出発前に校長先生に対して使ったのが学園生活上最初の魔法だった。
「来ないんならこっちから行くぞ。喰らえ貫け、レッドスティングズ!」
10個の赤い小石サイズの球体が周りに現れた。ザリアの合図で一斉にロンへ襲い掛かる。魔法の弱点の1つに呪文がある。魔法構成を知っている人が呪文を聞けばどのような形でどのように動き、当たるとどのような効果が得るのか全てがわかってしまう。最後に叫ぶ術名は技の種類と属性を表す言葉で構成されている。
最小限の動きで避けると後ろの岩に同形の貫通穴ができる。
「ほぅ、よく避けられたな。いや、それしか特技がないのか?」
ザリアの挑発にも怒りも悲しみも藤の瞳に映さず、ただ冷静にロンは彼の姿を見ていた。そして、持っていた小太刀の向きを逆に変え、静かに息を吐く。
「だが、何時まで逃げ続けるかな?」
振り下ろされた大剣の勢いに粉塵が舞い、辺りを包み隠す。今まで攻撃を受けても形を保っていた岩々も一気に崩壊し始めた。
いや、それだけにしては砂塵の量が多すぎる。砂塵が辺りを覆い、巨体であるザリアの胸元まで舞い上がり、小柄であるロンの姿を覆い隠した。
「ふん、姿を隠したか。臆病者め」
そう吐き捨て大剣を肩に担ぐとザリアは周囲を睨みつけるように見渡した。
目は血走り、飢えた獣に変貌する。その醜悪な気は彼の形相を変え、その瞳を見た者は畏怖に支配され、その場にへたり込む。
続く
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