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1、始まりの逃避とウサギの国での活劇
ウサギ、カメから水をかけられた
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「失礼します。こちらにロン様はいらっしゃいますか?」
入ってきた一般兵はイスカの形相にたじろいでその場に凍りついた。いや、イスカは火属性なので焼け崩れたとでもいうべきだろうか。ミミが声をかけなかったらその場に気絶したまま放置されていたかもしれない。それほどまでイスカの気は荒れに荒れていた。
「それで、ロンさんがどうかしたのですか?」
「帰ってきたの?」
「出かけておられるのですね」
期待を込めたイスカの言葉は一般兵の1言で無残に砕かれた。やはり、あれは現実なのだと再認識させられる。悪夢だと思いたかった。
「その方宛てに荷物が届いているのですが」
「うそ・・・」
誰からどうして。イスカの頭の中を疑問符が駆け巡る。どうしてロン宛の荷物が王国宛てに届くのか。あたしたちがここにいることを知っている人がいるだろうか?
いや、違う。ロンがここに送るように指定したと考えるべきだ。
なら、中身は・・・・・・今回の事件に関するものである確率が高い。
「どちらへ運びましょうか?」
「ここに置いといて。それと、至急この事をロイズを探し出して伝えるの」
活気を取り戻したイスカにミミは肺に詰まっていた息がようやく抜けたように感じた。あまりの落ち込みに事情を聞けなかったので何があったかは知らないが、やはり姉はこうでなくてはと思う。
兵士がいなくなるとイスカは箱を開け始めた。何が入っているかわからないので慎重に包装を解いていく。出てきたのは見たことのない機械と巨大な魔方陣が埋め込まれた大宝玉だった。これ1つで国の何割が買えるだろうか。それが8つも。
「まぁ、こんな純粋で高魔圧力の魔晶石、いえ、この大きさですと魔晶岩ですわね。いったいどなたが作ったのでしょうか?」
「おそらく、魔法学園を支えてるスポンサーのスタートウだと思うわ。どんな組織なのか今1つわからないけど、彼がそことなんらかの関わりを持っているのは確かね。これを使ってロンが何かしようとしたのは確実なんだけど・・・・」
「説明書、ありませんね」
取り出したりひっくり返してみたり考え込んだりしていた2人の頭からいつしか白い煙が立ち上ってくる。上から水をぶっかけられ、イスカは顔をあげた。丸い顔、亜麻色の大正浪漫ヘアー、穏やかな灰色の瞳。
「レイカ・・・」
「おい、よりにもよってあいつと間違えるなよ。身体差ありまくりだろ」
180超えのロイズと130未満のレイカを見間違える。イスカの精神はかなりガタが来ているようだ。
「悪い。あいつと出会った時も同じことされたから」
「インパクトは強いが、色気どころか雰囲気がまるでないな、そりゃ。で、ロン宛の荷物ってのはそれだな」
水から逃れた荷物を拾い上げると1つ1つ丹念に調べていく。そして、全てを調べ終えるとロイズはため息を吐いた。
「まったく、大した奴だ。自分が持ってる情報から即座に予想し、最悪の事態に備えてある。協力者の種類も実力も権力も豊富。臨機応変に対応できる実力。これでもう少し頼ってくれればいうこと無いのだがな。これは俺なりに有効活用させてもらうぜ」
「で、結局、これってなんなのよ」
痺れを切らしたイスカが尋ねる。
「技術先進時界スタートウでも数個しか製造できない程特製の超高度魔科学装置。魔法と科学の融合により亜空間を形成する機械だ」
その夜、城下町中の住民に直接手渡しの手紙で緊急通達が伝えられた。
続く
入ってきた一般兵はイスカの形相にたじろいでその場に凍りついた。いや、イスカは火属性なので焼け崩れたとでもいうべきだろうか。ミミが声をかけなかったらその場に気絶したまま放置されていたかもしれない。それほどまでイスカの気は荒れに荒れていた。
「それで、ロンさんがどうかしたのですか?」
「帰ってきたの?」
「出かけておられるのですね」
期待を込めたイスカの言葉は一般兵の1言で無残に砕かれた。やはり、あれは現実なのだと再認識させられる。悪夢だと思いたかった。
「その方宛てに荷物が届いているのですが」
「うそ・・・」
誰からどうして。イスカの頭の中を疑問符が駆け巡る。どうしてロン宛の荷物が王国宛てに届くのか。あたしたちがここにいることを知っている人がいるだろうか?
いや、違う。ロンがここに送るように指定したと考えるべきだ。
なら、中身は・・・・・・今回の事件に関するものである確率が高い。
「どちらへ運びましょうか?」
「ここに置いといて。それと、至急この事をロイズを探し出して伝えるの」
活気を取り戻したイスカにミミは肺に詰まっていた息がようやく抜けたように感じた。あまりの落ち込みに事情を聞けなかったので何があったかは知らないが、やはり姉はこうでなくてはと思う。
兵士がいなくなるとイスカは箱を開け始めた。何が入っているかわからないので慎重に包装を解いていく。出てきたのは見たことのない機械と巨大な魔方陣が埋め込まれた大宝玉だった。これ1つで国の何割が買えるだろうか。それが8つも。
「まぁ、こんな純粋で高魔圧力の魔晶石、いえ、この大きさですと魔晶岩ですわね。いったいどなたが作ったのでしょうか?」
「おそらく、魔法学園を支えてるスポンサーのスタートウだと思うわ。どんな組織なのか今1つわからないけど、彼がそことなんらかの関わりを持っているのは確かね。これを使ってロンが何かしようとしたのは確実なんだけど・・・・」
「説明書、ありませんね」
取り出したりひっくり返してみたり考え込んだりしていた2人の頭からいつしか白い煙が立ち上ってくる。上から水をぶっかけられ、イスカは顔をあげた。丸い顔、亜麻色の大正浪漫ヘアー、穏やかな灰色の瞳。
「レイカ・・・」
「おい、よりにもよってあいつと間違えるなよ。身体差ありまくりだろ」
180超えのロイズと130未満のレイカを見間違える。イスカの精神はかなりガタが来ているようだ。
「悪い。あいつと出会った時も同じことされたから」
「インパクトは強いが、色気どころか雰囲気がまるでないな、そりゃ。で、ロン宛の荷物ってのはそれだな」
水から逃れた荷物を拾い上げると1つ1つ丹念に調べていく。そして、全てを調べ終えるとロイズはため息を吐いた。
「まったく、大した奴だ。自分が持ってる情報から即座に予想し、最悪の事態に備えてある。協力者の種類も実力も権力も豊富。臨機応変に対応できる実力。これでもう少し頼ってくれればいうこと無いのだがな。これは俺なりに有効活用させてもらうぜ」
「で、結局、これってなんなのよ」
痺れを切らしたイスカが尋ねる。
「技術先進時界スタートウでも数個しか製造できない程特製の超高度魔科学装置。魔法と科学の融合により亜空間を形成する機械だ」
その夜、城下町中の住民に直接手渡しの手紙で緊急通達が伝えられた。
続く
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