エターナニル魔法学園特殊クラス

シロ

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12ー9、カメ、ショックを受ける

エターナニル魔法学園特殊クラス

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「・・・検索条件が必要」
「パソコンと扱いは一緒どすな」
遠見の水晶と言うらしい、この水晶。一定角度から対象を観察できる品物である。それは、さながら望遠鏡を覗いたように。
「うーん、火属性の強い人ではどうどすか?」
「・・・数値を決定してください」
「高めってどの位どすか?」
「・・・パーセントがお勧め」
「その人が持つ属性の割合どすか・・・・80%以上で」
火属性が強いとはいっても、イスカも他属性魔力を持っている。属性が偏っていると言われるのは一属性60%越えから。80%ともなると、特殊クラス生となるに相応しい暴走っぷりである。
「・・・二名該当」
「へ、2人もいはる!?」
もう一人は・・・・火属性の特徴から考えて、戦闘クラスにいそうだ。
「どちらとも見ることは可能どすか?」
「・・・無理。お1人様限定」
「うーん、90%に上昇させて再検索お願いしはります」
「・・・誰もいなくなった」
「さすがに高過ぎたんどすな・・・・・83%で再検索」
「・・・該当者一人」
「映せはる?」
「・・・火属性の魔力が必要。割合はこんな感じ」
数値がはじき出される。二大属性しか持っていないロンには無理だろう。レイカも固定魔力がないので、通常なら無理だ。
「これ、使えへんか?」
巾着袋から赤い形の歪な宝石を取り出した。単なるルビーではない。吸収したイスカの魔力をレイカがロイズの方法を模倣して作り出したものだ。燃えるように赤いそれは純粋にイスカの魔力である(レイカには魔力がないので)。
「・・・代用になる」
受け取って操作する。片手に魔晶石を持ち、もう片方の手を水晶に掲げて魔力をゆっくりと注入していく。魔晶石が次第に小さくなっていく。米粒くらいになった時に水晶に反応があった。薄く光ったかと思うと、何かを映し出した。それは、文字だった。エターナニル交易共通語に似ているが、文章になっていない。少なくともレイカが学んでいる文字並びではなかった。文字の格好も微妙に違う。長い耳みたいなものが生えている。
「ロンはん、読めはります?」
「・・・5分くれれば」
異国語か暗号だろうに、ロンは自信満々に言った。暗号解読が得意なのかもしれない。ロンが壁に寄りかかってジッと見つめて動かなくなった。頭の中は凄い速さで文字がはじき出されているのだろう。やることを見失ったレイカは自分の机に行くと語学の教科書をパラパラとめくった。リトアに貸してもらった4年生の教科書で、エターナニルで多く使われている共通語以外の言語、獣人語、インセクター語、エルフ語。あと、ちょっとマニアックだが、覚えておくと損はない鉱山語、森人語、深海語が載っている。だが、映し出されている文字と同じものはなかった。
「・・・解読完了」
「なんて書いてあらはりました?」
「・・・説明書みたいなもの」
使い方が分かったのか、ロンは残った魔力を使って効率よく操作を進めていく。光が揺れ、別の何か、今度はフォト写真のような映像になった。
「なっ?!」
映っている顔にレイカは見覚えがあると言えばあるし、ないと言えばなかった。顔が赤くなるのを感じる。
「見ぃひんで!!」
それは、亜麻色の髪の少女が寝ている写真だった。布団に包まり、すやすやと寝息が聞こえてきそうなほどよく撮られている。布団の柄まではわからなかった。だが、レイカはそれが誰だかすぐにわかった。慌てて映像の前に立って手を広げ、見えないようにする。だが、像がぶれるだけで、完全に見えなくなることはなかった。
「・・・・・・」
レイカの意図を組んでかロンはそっぽを向いた。
「何でユーキ従姉はんの写真が・・・しかも、何で寝顔?」
「・・・・・・」
「なぁ、こんな写真持ってはるってことは、もしかして、イスカはん・・・・・・」
レイカの表情が暗くなる。ただでさえ光の薄い瞳から明るさが消える。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
部屋の空気が一段階下がる。ロンは水晶から魔力を引き抜いていくレイカを見ないようにしながらただ部屋の中にいた。何をするわけでもなく、興味で動くこともなく、隅の方で座っていた。視線は窓の外をジッと眺めていた。
「・・・もうええよ」
「・・・そう」
「・・・・・・寝顔の写真ばっかやった」
「・・・そう」
レイカを慰めてくれる人はここにはいなかった。
「行こう。リムル先生ならイスカはんの行方追えるかもしれへん」
「・・・了解」
負の感情を撒き散らかしながらレイカはロンを連れて女子寮を後にした。ロンは何も言わずに表情を変えることなく黙ってレイカに手を引かれていった。


                             続く
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