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5-9、カメ、探す
エターナニル魔法学園特殊クラス
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「ちぇ、お堅い生徒会長さんに見つかったらやっぱ無理か。先生だけなら言いくるめる自信あったんだけどよ」
「カズはん、校舎が!」
レイカの声に振り向いたカズも口をポカーンとあけて驚愕した。先程まで何もなかったはずの校舎が闇の中でボーっと怪しく光っている。校舎全体ではなく、部分部分で発光しているのがまた不気味である。
「・・・・・・・なんじゃこりゃ!?」
「・・・何やろ?自然光みたいやけど」
お互い顔を見合すとロープを結んだところまで来た。まだ発見されていなかったそれにつかまり、再度校舎内に侵入する。窓下に身を隠していると何度もドタバタと忙しそうに駆け回る先生達がいた。しかし、2分もしない内にその騒ぎが急に静まった。
怪訝に思い、窓から中を覗くと倒れている先生の姿を発見する。窓ガラスを破り急いで開けると嫌な空気が溢れてきた。急いでハンカチで鼻と口を抑える。少し吸ってしまったのか眠気に襲われるが、頬を摘まむことで覚ます。
「心配ない。寝てるだけだ」
ついでに鍵束も手に入った。カズの手の中でジャラリと音を立てる。
「今のうちに見て回ろうぜ」
「はい」
2人が向かったのは生徒会室だった。その前に職員室に向かって期末試験のチェックをしたカズを咎める人はこの場には起きていなかった。レイカもちょっと覗き見たところ、進んでいる科目と自分でもわかるレベルの科目に分かれた。後者が圧倒的に多かった。
「魔法学と数学が不安なんだよなぁ」
「どっちも得意やし、うちでよければ教えるえ?」
「ちょwwせめてお兄さんにしてwwww」
生徒会室で資料をあさりながら2人は小声で会話する。
「しっかし、几帳面だな。職員室の資料より細かく分かれてるぜ」
「せやなぁ、グループ別になってはる」
どの生徒がどちらに所属しているか、どのような活動を行っているかが事細かに書かれている。中には恐喝などの犯罪も混ざっていた。この様子ではどちらも黙認されているようだ。
「何かなぁ。一昔前の不良校そのままやわ」
「ち、目立ったグループはできていないようだな」
「その様子ではそっちでも把握できていないようだな」
振り向くとそこには生徒会長が腕を組んで二人を睨んでいた。
「そっちも何も掴んでなさそうだな」
「何だったら情報交換します?嘘つきますけど?」
「ふん、そっちの持っている情報ならすでに手に入れてある」
「なぁ、うちが質問してええ?」
「何だ?小娘」
「お兄ちゃん知らへん?ここに入るの見たんやけど」
質問すると露骨に舌打ちされた。
「知らん。貴様らこそ何故いる?」
「お兄ちゃん探しに来たんよ」
「先生だったらあっちで寝てたぜ」
「貴様らの仕業ではあるまいな」
「違うっての!」
「たぶん、蛇さんの仕業だと思います」
「蛇、どういうことだ?」
事情を説明すると生徒会長は眉間のシワをさらに深くした。
「土地神様とかそんなんやあらへんの?」
「聞いたことがない」
「そんな噂なかったぜ。眠らせる効果の毒なんて、そっちも聞いたことないんだけど」
「バジリスクの眼力を直で浴びなかったら気絶しはることがあるらしいです」
「成程、その可能性はあるな。だが、その能力を得るためには胴回り2m位に成長しないといけないのではなかったか?排気口の直径は50cm程しかないのだぞ」
「未熟な奴だから気絶で済んでるんじゃないのか」
「せやな~、成熟していたら石化してしまうぇ」
「厄介なものが潜んでいるのは確か、ということか。よし、貴様ら一緒に来い」
断るかと思った。だが、カズはあっさりと承諾した。疑問に思っているレイカの手を取って生徒会長の後ろについて行く。
「なぁ、何でなんどす?」
「多い方が安全じゃん」
何がとつけないところが不穏である。
「貴様ら聞こえてるぞ」
「別に、聞かれて困るもんじゃないし」
「ふん、まぁいい」
どうやらあちらの狙いも同じだったようだ。レイカだけ歩幅が小さいので時々おいてかれそうになりながらも三人は暗い廊下を歩いた。所々で先生達が転がっている。揺さぶったり叩いたりしてみるが、一向に起きる気配がなかった。
「やっかいな」
「先輩無事やろか?」
「大丈夫なんじゃねー。見たところ眠らされてから食われるわけじゃないし」
「倒れていないところを見ると俺達と同じく何らかの形で回避した可能性が高い。貴様ら電話かけんのか」
シマッタとレイカは思った。兄弟設定にしたのに携帯の電話番号を聞き忘れた。
「俺がかけるぜ・・・・お、繋がった」
カズの言葉に全員が注目する。ワンタッチでスピーカーにする。
「よ、そっちはどうなってんだ?」
「貴様そんな悠長な口調で言っている場合か!?おい、リトア。今どこにいる?」
『学校に。忘れ物をしたので』
「それは分かっている。どこにいるかと聞いているのだ」
『西棟三階の自分の教室です。今下りてくるところですからすぐに会えるかと』
「そうか、さっさと合流しろ」
「東棟の1階にいるから」
「お兄ちゃん気ぃ付けて。変なんが徘徊してはるから」
「うん、わかったよ。て、あれ?」
返事は傍の階段の上からあった。見上げると下りて来たリトアの姿があった。
「貴様、どうやって学校に入った」
「門から入ったよ」
「それはない。強制下校の後封鎖した・・・・・・貴様、下校しなかったな」
「あははは・・・」
壁を飛び越えて来たとは言えないようだ。
「何故封鎖したのですか?」
「貴様には関係ない」
「じゃあ、俺には関係あるんだな」
「揚げ足を取るな。まぁ、よい。明日にはわかることだ。話してやろう」
「なんか事件でもあらはりました?」
「校長先生が殴られて倒れているのが発見された。夕方のことだ。すぐさま学校内の全生徒に事情聴取を取り、そして帰した。だが、犯人はまだ見つかっていない。校長先生も意識不明のままだ」
「・・・僕が犯人ってこと?」
「現状推理ではそうならんな」
「へ~、何でだ?」
「証言が矛盾しているからだ。貴様が忍び込んだことは知っている」
「あ、あれ・・・」
「相変わらずリトアは嘘が下手だよなwww。で、そんだけ?」
「襲撃理由もない」
「他の生徒にはあるってか?」
「時期からしてテスト目当てだったのか、偶然居合わせたか。突如暴れ出す奴らだぞ」
カズも問題用紙をチェックしていた。先輩に聞いた見たところ、歴史なら調べてみたいかなと笑った。
「する必要ないだろう、成績上位者のくせして」
「俺らの喧嘩にもちゃんと理由があるってのwww」
両陣営からもリトアの信用が高い。変な怖さを感じるくらいに。
「いてしまったのは仕方がない。貴様らを外に出す。ついてこい」
玄関に向かうその途中だった。窓ガラスが割れ、丸い物体が廊下に転がり込んできた。驚愕するのに反応したかのようにそれらは出芽し、鋭利な牙を覗かせた化け物へと変容した。
「なぁ?!」
「なんだ、これ!?」
驚きっぱなしなレイカとカズを背後に回してリトアと生徒会長は臨戦態勢に入った。
「ふん、幽霊の類ではなさそうだ」
「シードでしょうか?」
前の大戦で生み出された人工生命体だとレイカは魔法学園の授業で習ったことを思い出す。
「まぁ、いい。討伐するぞ」
2人の前に剣が具現化される。
「使えるなら使え」
「カズ、持っていてください」
「貴様!!」
叫ぶと共に生徒会長は化け物へと突進していた。剣の一線にて一刀両断にする。真っ二つに斬られた化け物は粒子となって四散した。
「ふん、つまらん敵だ」
飛び掛かってきた敵を生徒会長は避けようとしなかった。彼が身を翻す前にリトアが蹴り飛ばした。
「二人とも強過ぎwww」
「カズも余裕あるね」
「ないない。ガクブル状態だけど、こいついるから大丈夫ってな感じ」
レイカを背後に庇いながら答える。魔法戦でなければ役に立てないのはレイカも良く知っていることだった。レイカは彼らの背後を注視していた。
「何かいるの?」
リトアの質問にレイカは首を振って答えた。視線は逸らされることなく暗い廊下の先を見詰めている。
「ひょっとして幽霊だったり・・・・・」
そうカズが呟いた時だった。レイカの視線の先から生温かい突風が四人を巻き込んで廊下を通り過ぎて行った。
「何だ?今のは?」
「低級霊の集合体どす」
「何かから逃げてきた感じだけれど・・・みんな気を付けて」
リトアは腰からリボルバーを抜いてレイカの前に出ると闇中に照準を合わせる。生徒会長もだが、この学校では一定の生徒に武器の装備は許可されているようだ。
エターナニルの常識なのだろう。狙われていたとはいえ、平和ボケした日本育ちのレイカには信じられない日常だった。だが、そんなことを考えている暇はない。レイカも懐から扇を取り出す。
ゴクリと誰かがつばを飲み込む音が聞こえた。四人が注視する奥の暗闇から何かを引き摺る音が響いてくる。ズルリズルリと不気味な音を立てて近づいてくるそれに全員の身体に緊張が走る。
現れたのはこの学校にふさわしくない人物、女性だった。長い髪を垂らし、白いワンピースを着ている。手から赤い何かを滴らせながらゆっくりと四人の方へ向かってくる。
「貴様、何者だ?」
「ちょ、止まれっての」
生徒会長とカズが剣を構える。リトアも銃口を女性へと向けた。レイカも扇を開く。
「みんな、動かないで!」
通り過ぎ間に切りかかろうとした生徒会長とカズをリトアがさらに前に出て制止する。女性はゆっくりと血を落としながら横を通り過ぎ、壁の中へと消えて行った。
「ふん、単なる幽霊だったか」
「悪霊じゃなくってよかったな」
ジッと幽霊の消えた所を眺めるレイカの肩をリトアは叩いた。
「レイカ、帰るよ」
「はいです」
何かが落ちたかのようにレイカは視線をリトアに向ける。
「みんな大丈夫か?」
廊下の奥から聞こえてきた先生の声に3人は目を合わせると手を振って答えた。
続く
「カズはん、校舎が!」
レイカの声に振り向いたカズも口をポカーンとあけて驚愕した。先程まで何もなかったはずの校舎が闇の中でボーっと怪しく光っている。校舎全体ではなく、部分部分で発光しているのがまた不気味である。
「・・・・・・・なんじゃこりゃ!?」
「・・・何やろ?自然光みたいやけど」
お互い顔を見合すとロープを結んだところまで来た。まだ発見されていなかったそれにつかまり、再度校舎内に侵入する。窓下に身を隠していると何度もドタバタと忙しそうに駆け回る先生達がいた。しかし、2分もしない内にその騒ぎが急に静まった。
怪訝に思い、窓から中を覗くと倒れている先生の姿を発見する。窓ガラスを破り急いで開けると嫌な空気が溢れてきた。急いでハンカチで鼻と口を抑える。少し吸ってしまったのか眠気に襲われるが、頬を摘まむことで覚ます。
「心配ない。寝てるだけだ」
ついでに鍵束も手に入った。カズの手の中でジャラリと音を立てる。
「今のうちに見て回ろうぜ」
「はい」
2人が向かったのは生徒会室だった。その前に職員室に向かって期末試験のチェックをしたカズを咎める人はこの場には起きていなかった。レイカもちょっと覗き見たところ、進んでいる科目と自分でもわかるレベルの科目に分かれた。後者が圧倒的に多かった。
「魔法学と数学が不安なんだよなぁ」
「どっちも得意やし、うちでよければ教えるえ?」
「ちょwwせめてお兄さんにしてwwww」
生徒会室で資料をあさりながら2人は小声で会話する。
「しっかし、几帳面だな。職員室の資料より細かく分かれてるぜ」
「せやなぁ、グループ別になってはる」
どの生徒がどちらに所属しているか、どのような活動を行っているかが事細かに書かれている。中には恐喝などの犯罪も混ざっていた。この様子ではどちらも黙認されているようだ。
「何かなぁ。一昔前の不良校そのままやわ」
「ち、目立ったグループはできていないようだな」
「その様子ではそっちでも把握できていないようだな」
振り向くとそこには生徒会長が腕を組んで二人を睨んでいた。
「そっちも何も掴んでなさそうだな」
「何だったら情報交換します?嘘つきますけど?」
「ふん、そっちの持っている情報ならすでに手に入れてある」
「なぁ、うちが質問してええ?」
「何だ?小娘」
「お兄ちゃん知らへん?ここに入るの見たんやけど」
質問すると露骨に舌打ちされた。
「知らん。貴様らこそ何故いる?」
「お兄ちゃん探しに来たんよ」
「先生だったらあっちで寝てたぜ」
「貴様らの仕業ではあるまいな」
「違うっての!」
「たぶん、蛇さんの仕業だと思います」
「蛇、どういうことだ?」
事情を説明すると生徒会長は眉間のシワをさらに深くした。
「土地神様とかそんなんやあらへんの?」
「聞いたことがない」
「そんな噂なかったぜ。眠らせる効果の毒なんて、そっちも聞いたことないんだけど」
「バジリスクの眼力を直で浴びなかったら気絶しはることがあるらしいです」
「成程、その可能性はあるな。だが、その能力を得るためには胴回り2m位に成長しないといけないのではなかったか?排気口の直径は50cm程しかないのだぞ」
「未熟な奴だから気絶で済んでるんじゃないのか」
「せやな~、成熟していたら石化してしまうぇ」
「厄介なものが潜んでいるのは確か、ということか。よし、貴様ら一緒に来い」
断るかと思った。だが、カズはあっさりと承諾した。疑問に思っているレイカの手を取って生徒会長の後ろについて行く。
「なぁ、何でなんどす?」
「多い方が安全じゃん」
何がとつけないところが不穏である。
「貴様ら聞こえてるぞ」
「別に、聞かれて困るもんじゃないし」
「ふん、まぁいい」
どうやらあちらの狙いも同じだったようだ。レイカだけ歩幅が小さいので時々おいてかれそうになりながらも三人は暗い廊下を歩いた。所々で先生達が転がっている。揺さぶったり叩いたりしてみるが、一向に起きる気配がなかった。
「やっかいな」
「先輩無事やろか?」
「大丈夫なんじゃねー。見たところ眠らされてから食われるわけじゃないし」
「倒れていないところを見ると俺達と同じく何らかの形で回避した可能性が高い。貴様ら電話かけんのか」
シマッタとレイカは思った。兄弟設定にしたのに携帯の電話番号を聞き忘れた。
「俺がかけるぜ・・・・お、繋がった」
カズの言葉に全員が注目する。ワンタッチでスピーカーにする。
「よ、そっちはどうなってんだ?」
「貴様そんな悠長な口調で言っている場合か!?おい、リトア。今どこにいる?」
『学校に。忘れ物をしたので』
「それは分かっている。どこにいるかと聞いているのだ」
『西棟三階の自分の教室です。今下りてくるところですからすぐに会えるかと』
「そうか、さっさと合流しろ」
「東棟の1階にいるから」
「お兄ちゃん気ぃ付けて。変なんが徘徊してはるから」
「うん、わかったよ。て、あれ?」
返事は傍の階段の上からあった。見上げると下りて来たリトアの姿があった。
「貴様、どうやって学校に入った」
「門から入ったよ」
「それはない。強制下校の後封鎖した・・・・・・貴様、下校しなかったな」
「あははは・・・」
壁を飛び越えて来たとは言えないようだ。
「何故封鎖したのですか?」
「貴様には関係ない」
「じゃあ、俺には関係あるんだな」
「揚げ足を取るな。まぁ、よい。明日にはわかることだ。話してやろう」
「なんか事件でもあらはりました?」
「校長先生が殴られて倒れているのが発見された。夕方のことだ。すぐさま学校内の全生徒に事情聴取を取り、そして帰した。だが、犯人はまだ見つかっていない。校長先生も意識不明のままだ」
「・・・僕が犯人ってこと?」
「現状推理ではそうならんな」
「へ~、何でだ?」
「証言が矛盾しているからだ。貴様が忍び込んだことは知っている」
「あ、あれ・・・」
「相変わらずリトアは嘘が下手だよなwww。で、そんだけ?」
「襲撃理由もない」
「他の生徒にはあるってか?」
「時期からしてテスト目当てだったのか、偶然居合わせたか。突如暴れ出す奴らだぞ」
カズも問題用紙をチェックしていた。先輩に聞いた見たところ、歴史なら調べてみたいかなと笑った。
「する必要ないだろう、成績上位者のくせして」
「俺らの喧嘩にもちゃんと理由があるってのwww」
両陣営からもリトアの信用が高い。変な怖さを感じるくらいに。
「いてしまったのは仕方がない。貴様らを外に出す。ついてこい」
玄関に向かうその途中だった。窓ガラスが割れ、丸い物体が廊下に転がり込んできた。驚愕するのに反応したかのようにそれらは出芽し、鋭利な牙を覗かせた化け物へと変容した。
「なぁ?!」
「なんだ、これ!?」
驚きっぱなしなレイカとカズを背後に回してリトアと生徒会長は臨戦態勢に入った。
「ふん、幽霊の類ではなさそうだ」
「シードでしょうか?」
前の大戦で生み出された人工生命体だとレイカは魔法学園の授業で習ったことを思い出す。
「まぁ、いい。討伐するぞ」
2人の前に剣が具現化される。
「使えるなら使え」
「カズ、持っていてください」
「貴様!!」
叫ぶと共に生徒会長は化け物へと突進していた。剣の一線にて一刀両断にする。真っ二つに斬られた化け物は粒子となって四散した。
「ふん、つまらん敵だ」
飛び掛かってきた敵を生徒会長は避けようとしなかった。彼が身を翻す前にリトアが蹴り飛ばした。
「二人とも強過ぎwww」
「カズも余裕あるね」
「ないない。ガクブル状態だけど、こいついるから大丈夫ってな感じ」
レイカを背後に庇いながら答える。魔法戦でなければ役に立てないのはレイカも良く知っていることだった。レイカは彼らの背後を注視していた。
「何かいるの?」
リトアの質問にレイカは首を振って答えた。視線は逸らされることなく暗い廊下の先を見詰めている。
「ひょっとして幽霊だったり・・・・・」
そうカズが呟いた時だった。レイカの視線の先から生温かい突風が四人を巻き込んで廊下を通り過ぎて行った。
「何だ?今のは?」
「低級霊の集合体どす」
「何かから逃げてきた感じだけれど・・・みんな気を付けて」
リトアは腰からリボルバーを抜いてレイカの前に出ると闇中に照準を合わせる。生徒会長もだが、この学校では一定の生徒に武器の装備は許可されているようだ。
エターナニルの常識なのだろう。狙われていたとはいえ、平和ボケした日本育ちのレイカには信じられない日常だった。だが、そんなことを考えている暇はない。レイカも懐から扇を取り出す。
ゴクリと誰かがつばを飲み込む音が聞こえた。四人が注視する奥の暗闇から何かを引き摺る音が響いてくる。ズルリズルリと不気味な音を立てて近づいてくるそれに全員の身体に緊張が走る。
現れたのはこの学校にふさわしくない人物、女性だった。長い髪を垂らし、白いワンピースを着ている。手から赤い何かを滴らせながらゆっくりと四人の方へ向かってくる。
「貴様、何者だ?」
「ちょ、止まれっての」
生徒会長とカズが剣を構える。リトアも銃口を女性へと向けた。レイカも扇を開く。
「みんな、動かないで!」
通り過ぎ間に切りかかろうとした生徒会長とカズをリトアがさらに前に出て制止する。女性はゆっくりと血を落としながら横を通り過ぎ、壁の中へと消えて行った。
「ふん、単なる幽霊だったか」
「悪霊じゃなくってよかったな」
ジッと幽霊の消えた所を眺めるレイカの肩をリトアは叩いた。
「レイカ、帰るよ」
「はいです」
何かが落ちたかのようにレイカは視線をリトアに向ける。
「みんな大丈夫か?」
廊下の奥から聞こえてきた先生の声に3人は目を合わせると手を振って答えた。
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