転移者と転生者と現地チート

シロ

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84、

冒険者のジェンダー

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「何で、この屋敷の住民じゃないと思ったのです?」
「は、人が住める状態じゃないだろ」
いいえて、ごもっとも。窓には打ち板。壁にはヒビ。床には大穴。水光熱全部止まっている状態で、食料もない。住んでいると思う方が不思議である。
「それでなぜ金置いてけとなるのです?」
この屋敷の住民じゃないと見抜いたのなら、大した金銭なんて持ってないと思うだろう。真っ先に思いつくのは乞食。服装で想像がつくとか言われたら、その目は節穴である。ナナの服は逃走中のフリーマーケットで上下3点セット100円で手に入れた戦利品である。防寒着の冒険者の服の方がまだ耐寒効果付きなので高そうだ。しかし、観察すればするほどウルクススの女性防具にしか見えない。男女の区別がつかないのは、長ブーツにもこもこ半ズボンだからだ。だが、フワフワの隙間から覗く絶対領域とチャーミングなウサギミミ風フードは変わらない。おかげでナナもカイもまだ口より上を見たことがない。でも、まぁ、高そうではある。
「金を持っているからだ」
「なぜそこが確定なのです?」
「ちびはわからん」
むっと眉を顰めるが、ここは我慢だとナナは口を押さえた。
「だが、そこのお前は冒険者だろ」
逆にモヒカンに問いたい。矢筒を背負い剣を腰に装備している格好を見て冒険者以外の選択肢があるだろうか、と。狩人はありそうだと思った人、防寒着の冒険者が装備している剣はロングソード程の大きさがある。
「そうだ」
男声が答えるとモヒカンは面を喰らったようだ。
「なんだ。男かよ・・・・・・」
そりゃ、モヒカンの肩くらいまでしかないから女性と思ったのだろう。だが、甘い。その認識は甘いぞ。世の中には女性よりも女性服を着こなす女装男子と言うジャンルがあるのだ。もはや、背格好で性別を認識できる時代は終わった。ジェンダーフリーィ。
「まぁ、いい。冒険者の装備はかなり高値で売れるからな」
「追剥発言は見過ごせないぞ」
「は、その細腕で何ができる!!」
力こぶを作り、威嚇で釘バットが壁を壊す。魔法を使おうとウィンドウを開いて・・・・・・・防寒着の冒険者がナナをかばうように前に出た。

                                  続く
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