転移者と転生者と現地チート

シロ

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 治療師から三日は安静と言われた。魔力が完全回復していないのが問題なのかと思ったが、どちらかと言うと、消費魔力負荷による身体のバランス回復が必要らしい。ようは、風邪を引くと精神まで参ってしまう、これの反対の現象だそうだ。起きて直ぐはナナが身体を動かそうとしても上手くできなかった。握力もかなり落ちていたので、食事を食べさせてもらったのだ。だから、あれは断じて甘えていたからではないとナナは自分に言い聞かせていた。
「変な夢を見た気がするのです・・・」
「気が散っているようですし、今日はこの位にしましょう」
 本を閉じて立ったシサにナナは慌ててお辞儀をする。自動通訳は付けてくれたが、それは交易共通語会話のみ。文字はさっぱり読めないし、解説がないからナナが知っている知識と結びつけることが非常に困難だった。なので、この際にとギルドマスターにお願いしたのだ。子供が文字を覚えるのに使うカードを持参したシサ先生の元勉学に励んでいる。言葉はわかるので、感覚としては英単語を覚えるのと大差変わりない。英語はナナの得意科目だ。
「受付業もあるのに、ありがとうなのです」
「いえ、覚えのいい生徒で助かります」
 それでは、と一礼してシサはドアから出て行った。
 そして、誰も来なくなった。カイは小銭稼ぎを兼ねた荷物運びの仕事を昨日からし始めたので帰りは遅くなる・・・・・・と言って、昨日から戻って来ない。防寒着の冒険者も三日前に食事を届けてきてくれたっきり、姿を見せない。顔は最初から見せていない。優しい人と妖精のペアなのはわかっているが、それ以外はさっぱりである。ノツは探し人がいると言っていたが、報酬を置いった後、宮殿の神官が連れて行ってしまった。
「皆、忙しそうなのです」
 魔法の練習をしようにも、カテゴリー分別が攻撃、回復、支援しかない。気分もよくなった昨日、自分に支援魔法をかけたのだが、何故か足下が光り、天井に頭がめり込むギャグのような展開を引き起こした。シサが大爆笑していたのは初めてだと言われた。
「タンコブくらいなら一瞬で直るのですね、この世界」
 ヒールが初級回復魔法だとわかった。この三日で収穫があったのはこれくらいである。そして、無駄打ちしないための処置としてHPが満タンであるモノを対象に回復魔法をかけようとすると“効果がありません”と警告が出ることがわかった。
「もう寝るのは退屈なのです」
 ゴロゴロとベッドを転がるが、一向に眠れる気がしない。月がすっかり上がった。


                         続く
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