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インターミッション
ゲーム大会
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防衛班詰所には30人近くが入れる大学の講義室のような会議室が有る。
元々がゲーマーばかりな未帰還者たちがそんな部屋を自由に使えるとなれば、考える事は1つだ。
『それではこれよりぃっ、第1回ぃ未帰還者ぁゲーム大会を、開催しまぁす!!』
「「「いえええええええっ!!」」」
教壇で開催宣言するアンソンに防衛班のほぼ全員が声援を送った。
カオルとガルドは人によっては緊張させてしまうと思い理由を付けて参加を辞退している。そんな訳で会場は完全に大人の居ない子供の遊び場状態だ。
『ではでは早速ぅ、全世界で大人気、あのパーティ格ゲーから初めて行きましょうっ!』
最前列の4人用長机にはコントローラが置かれ会議室の大画面にはゲームが表示されている。世界的に知られた様々なゲームキャラが一堂に会する2Dアクション対戦ゲームだ。
アンソンに促されて最初の4人が席に着き各々が好きなキャラクターを選択する。
玄人やプレイヤースキルのみで楽しみたい者たちは好まないが、パーティ色の強い大会なのでステージは真っ平な物を含めた様々な地形からランダム選択だ。アイテムは全て有りでハンデも無い。
『第1回戦から防衛班きってのヒーラー、レミアちゃんが参戦! 仕事じゃ優しい戦闘スタイルだが口を開けば俺には毒舌! 使用キャラは、ガッチガチの鈍足パワーファイター!? さあさあっ、イメージと違う戦闘スタイルに他プレイヤーたちは、おっとコピーキャラ、カウンター剣士、シンプル万能! どいつもこいつも相手に合わせる気無し! 『俺はコイツを使いたいんだ、敵キャラとの相性なんて知った事か』と言わんばかりのキャラ選択だ!』
最前列に座ったレミアに思いっ切り睨まれるが素知らぬ顔でやり過ごす。
防衛班では見慣れた姿なので参加者たちは笑って流し、ステージのランダム選択が始まった。選択されたのは一見シンプルだがギミックが有り時間経過で足場の形状が変わるステージだ。
『テージセレクト完了! それでは皆さん、ご唱和ください! レディー、ゴオォッ!!』
「「「ゴオォッ!!」」」
後にレミア参戦禁止と成った未帰還者ゲーム大会の火蓋が切って落とされた。
▽▽▽
『こ、これは酷い』
4人対戦トーナメントは勝者1名が勝ち上がりだ。そんなトーナメントは早くも決勝戦だが、実況のアンソンの戦慄は会場のほぼ全員が共有している。
恐ろしい事にレミアは初戦から全く残機を失わずに決勝まで勝ち進んでいる。
決勝も中盤、各プレイヤーが3つの残機の1つ2つは落としている中、レミアは全く残機を落とす様子が無い。
「な、何だコレ」
「待て、レミアって、あのレミアか?」
「え、いや、嘘だろ?」
これだけの差が開いているにも関わらず、レミアは有名なハメ技などは使わない。
堅実な立ち回りと完璧なガードタイミングによって攻撃側の体勢を崩して攻撃する、自身が受けるダメージ量を減らす戦い方だ。それをタイマンではなく複数人に狙われながら行っている。
そして、観客の数人は物理崩壊前のゲーム大会の中継を思い出していた。
「いや、でも、あの戦い方はそうだろ?」
「確かに練習したところであの戦い方はできねえけど」
ネット中継された過去の大会で、あるプレイヤーが注目を集めていた。
有名なハメ技も、効率的なコンボも使わない。
ただ堅実な立ち回りと完璧なガードタイミングによって攻撃側の体勢を崩し、カウンター技も無いキャラクターでカウンターを成立させる。そんなロマンに全振りした戦い方にも関わらず参加者数万人の頂点を決める大会で準決勝まで上り詰めた猛者。
そのプレイヤー名はレミアだった。
『何を隠そう、レミアちゃんは全日本大会準決勝進出の参加者、本大会の優勝候補です!』
「先に言え!」
「勝てるか!」
「子供の遊びにプロが居るようなもんじゃんか!」
対戦相手3人が悲鳴を上げる中、1人また1人と残機を減らしていく。
3人の残機は均等に1。
レミアは余裕を持って3つの残機を保持したままだ。
『もう1度言う! これは酷い! 確実に止めを刺せるシーンすら作らない、残機すらレミアちゃんの掌の上、完全に踊らされている! あっと、最初の脱落者が出た!』
1人がレミアによってステージの外に叩き出され、その瞬間を狙い別プレイヤーがレミアへ確実なダメージを与えに向かう。
そんな割り込みは、むしろレミアにとっては美味しい餌だった。
完璧なタイミングで展開されたガードによって攻撃したキャラクターは弾かれ、即座に掴まれる。そのキャラクターを最後に残ったプレイヤーに向けて放り投げた。
『これは、決まったあああああああっ!!』
アンソンの絶叫と同時にレミアが最後の強攻撃を放ち、2体のキャラクターを纏めて吹き飛ばす。
ダメージが蓄積されていたキャラクターたちは抵抗する間も無く画面外に吹き飛び、決勝戦は決着した。
『完、全、決着っ! 文句無しの最強! そして誰もがコメントに困る展開! 子供の試合にプロとは正にこの事! 試合展開は最初から最後までレミアちゃんの掌の上!』
アンソンの試合終了宣言と共に決勝戦メンバーがコントローラを机に置く。
レミアに注目が集まる中、当の本人は周囲の視線など意に介さずに緊張から解放されたように大きな息を吐いている。
『え~、それでは勝者インタビューと参りましょう。優勝者のレミアちゃん、今大会の手応えはいかがでしたか?』
「新鮮で楽しかったですよ。一般的な大会だとキャラごとに研究された強い立ち回りの人が多くて対策も似たような事ばっかりに成っちゃうんです。でも今回みたいに何してくるか分からない参加者ばかりだと試合の中で研究する楽しさが有りましたね」
『これは余裕のコメントを頂きました。さてさて、まだ1つ目のゲームが終わっただけ! ここからは別ゲームに移りますが、優勝したレミアちゃんは俺の隣で実況をお願いしますっ』
この先にレミアは出ないと察して全員が安堵した。
元々がゲーマーばかりな未帰還者たちがそんな部屋を自由に使えるとなれば、考える事は1つだ。
『それではこれよりぃっ、第1回ぃ未帰還者ぁゲーム大会を、開催しまぁす!!』
「「「いえええええええっ!!」」」
教壇で開催宣言するアンソンに防衛班のほぼ全員が声援を送った。
カオルとガルドは人によっては緊張させてしまうと思い理由を付けて参加を辞退している。そんな訳で会場は完全に大人の居ない子供の遊び場状態だ。
『ではでは早速ぅ、全世界で大人気、あのパーティ格ゲーから初めて行きましょうっ!』
最前列の4人用長机にはコントローラが置かれ会議室の大画面にはゲームが表示されている。世界的に知られた様々なゲームキャラが一堂に会する2Dアクション対戦ゲームだ。
アンソンに促されて最初の4人が席に着き各々が好きなキャラクターを選択する。
玄人やプレイヤースキルのみで楽しみたい者たちは好まないが、パーティ色の強い大会なのでステージは真っ平な物を含めた様々な地形からランダム選択だ。アイテムは全て有りでハンデも無い。
『第1回戦から防衛班きってのヒーラー、レミアちゃんが参戦! 仕事じゃ優しい戦闘スタイルだが口を開けば俺には毒舌! 使用キャラは、ガッチガチの鈍足パワーファイター!? さあさあっ、イメージと違う戦闘スタイルに他プレイヤーたちは、おっとコピーキャラ、カウンター剣士、シンプル万能! どいつもこいつも相手に合わせる気無し! 『俺はコイツを使いたいんだ、敵キャラとの相性なんて知った事か』と言わんばかりのキャラ選択だ!』
最前列に座ったレミアに思いっ切り睨まれるが素知らぬ顔でやり過ごす。
防衛班では見慣れた姿なので参加者たちは笑って流し、ステージのランダム選択が始まった。選択されたのは一見シンプルだがギミックが有り時間経過で足場の形状が変わるステージだ。
『テージセレクト完了! それでは皆さん、ご唱和ください! レディー、ゴオォッ!!』
「「「ゴオォッ!!」」」
後にレミア参戦禁止と成った未帰還者ゲーム大会の火蓋が切って落とされた。
▽▽▽
『こ、これは酷い』
4人対戦トーナメントは勝者1名が勝ち上がりだ。そんなトーナメントは早くも決勝戦だが、実況のアンソンの戦慄は会場のほぼ全員が共有している。
恐ろしい事にレミアは初戦から全く残機を失わずに決勝まで勝ち進んでいる。
決勝も中盤、各プレイヤーが3つの残機の1つ2つは落としている中、レミアは全く残機を落とす様子が無い。
「な、何だコレ」
「待て、レミアって、あのレミアか?」
「え、いや、嘘だろ?」
これだけの差が開いているにも関わらず、レミアは有名なハメ技などは使わない。
堅実な立ち回りと完璧なガードタイミングによって攻撃側の体勢を崩して攻撃する、自身が受けるダメージ量を減らす戦い方だ。それをタイマンではなく複数人に狙われながら行っている。
そして、観客の数人は物理崩壊前のゲーム大会の中継を思い出していた。
「いや、でも、あの戦い方はそうだろ?」
「確かに練習したところであの戦い方はできねえけど」
ネット中継された過去の大会で、あるプレイヤーが注目を集めていた。
有名なハメ技も、効率的なコンボも使わない。
ただ堅実な立ち回りと完璧なガードタイミングによって攻撃側の体勢を崩し、カウンター技も無いキャラクターでカウンターを成立させる。そんなロマンに全振りした戦い方にも関わらず参加者数万人の頂点を決める大会で準決勝まで上り詰めた猛者。
そのプレイヤー名はレミアだった。
『何を隠そう、レミアちゃんは全日本大会準決勝進出の参加者、本大会の優勝候補です!』
「先に言え!」
「勝てるか!」
「子供の遊びにプロが居るようなもんじゃんか!」
対戦相手3人が悲鳴を上げる中、1人また1人と残機を減らしていく。
3人の残機は均等に1。
レミアは余裕を持って3つの残機を保持したままだ。
『もう1度言う! これは酷い! 確実に止めを刺せるシーンすら作らない、残機すらレミアちゃんの掌の上、完全に踊らされている! あっと、最初の脱落者が出た!』
1人がレミアによってステージの外に叩き出され、その瞬間を狙い別プレイヤーがレミアへ確実なダメージを与えに向かう。
そんな割り込みは、むしろレミアにとっては美味しい餌だった。
完璧なタイミングで展開されたガードによって攻撃したキャラクターは弾かれ、即座に掴まれる。そのキャラクターを最後に残ったプレイヤーに向けて放り投げた。
『これは、決まったあああああああっ!!』
アンソンの絶叫と同時にレミアが最後の強攻撃を放ち、2体のキャラクターを纏めて吹き飛ばす。
ダメージが蓄積されていたキャラクターたちは抵抗する間も無く画面外に吹き飛び、決勝戦は決着した。
『完、全、決着っ! 文句無しの最強! そして誰もがコメントに困る展開! 子供の試合にプロとは正にこの事! 試合展開は最初から最後までレミアちゃんの掌の上!』
アンソンの試合終了宣言と共に決勝戦メンバーがコントローラを机に置く。
レミアに注目が集まる中、当の本人は周囲の視線など意に介さずに緊張から解放されたように大きな息を吐いている。
『え~、それでは勝者インタビューと参りましょう。優勝者のレミアちゃん、今大会の手応えはいかがでしたか?』
「新鮮で楽しかったですよ。一般的な大会だとキャラごとに研究された強い立ち回りの人が多くて対策も似たような事ばっかりに成っちゃうんです。でも今回みたいに何してくるか分からない参加者ばかりだと試合の中で研究する楽しさが有りましたね」
『これは余裕のコメントを頂きました。さてさて、まだ1つ目のゲームが終わっただけ! ここからは別ゲームに移りますが、優勝したレミアちゃんは俺の隣で実況をお願いしますっ』
この先にレミアは出ないと察して全員が安堵した。
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