フェンリルさん頑張る

上佐 響也

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ジャングル

7話 その程度の理想しか抱けないのならば、抱いたまま溺死しろっ!

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ちょっと怖いメス3匹を連れて王様の居る森に戻ると早速合流できた。
ちなみに焔と花子はまだ視線でバチバチやってる。港町で何を話したのかは怖くて聞けない。

【戻ったか。特に問題は起こらなかったようだな】

御宅の娘さんと俺の幼馴染が臨戦態勢ですが。
さっさとジャングルに戻ろう。

で、戻った。
焔と雷にはジャングル防衛の話はしてある。王子は村長にジャングルに必要以上に近付かないよう交渉してくれると言っていたが期待はしていない。専守防衛で徹底的に殺しまくれば良いかなと思っている。

「おかえりなさい。そしていらっしゃい。娘がお騒がせしてごめんなさい」

王妃様の丁寧な対応に焔も雷も毒気を抜かれたようで何も言わなかった。基本コイツらはオスにしか厳しくない。

「明日、人間たちが動くかもしれないわ」

武器は大体壊したと思ったんだが?

「帝都から補充したようね。あの村はジャングル攻略のための中継地点といったところかしら」

頑張るな。こうなったら目撃者無しにしないとな!

「凍は、本当に協力するの?」
「明らかに私たちがする必要のないことよ?」

ですよね。でも1度関わったならやるしかないんだよ。途中で投げ出せるほど器用じゃないんだ。ただの自己満足とも言う。

「凍っ、今日一緒に寝てくれたら手伝うよ?」
「面白そうね。私もそうするわ」

は?

「私も一緒に寝ますっ!」

花子さん!? あなたまで何を言い出してるんですか!? てか人間4人分の睡眠スペースなんてあるのかよっ? 王様のサムズアップ……あるのかよっ!



で、夜。
ちょっと大きな部屋に案内されたと思ったら確かに人間5人くらいが入れる寝室だった。マジで大丈夫か俺の理性? え、駄目? そこを何とか!

「凍、もうちょっと詰めよう? ……花子ちゃんの位置、良いな」
「寒いわね。もう少しくっつきましょう……ちょっと攻め方を変えた方が良いかしら」
「凍君、寒くないですか? ……焔さんも雷さんも大胆です」

右腕に焔、左を雷、背中は花子でお送りしております。
天蓋付きの特大ベットなんてどこから用意しやがった!? 花子は首に胸押し付けないで! 理性が飛ぶからっ! 焔は俺の手どこにやってんだよっ! 何か湿ってんぞっ!? 雷は普通で助かる! でも耳甘噛みしないで! 開発する気か!?

「あっ、凍の指、思ったよりも太くて堅い。もうっ、暴れん坊さんっ」

何の話!? てか『めっ』て感じで言ってるけど『めっ』って言う側は俺だからなっ!

「あなたの耳、思ったよりも美味しいのね。癖になりそうだわ」

食うなっ! 俺に耳はお前の食料じゃねえ!

「凍君、背中広いですね。それに、あったかい」

いやーっ! 優しく抱き締めないで! 今までの変態たちと違う魅力におかしくなるっ!



死線を綱渡りした翌朝、俺は晴れやかな気持ちでベット(地獄)を抜け出した。
朝日って、こんなにも綺麗で爽やかなものだったんだな。

「む、凍君か」
「王様、おはようございます」
「ああ、おはよう」

朝から筋肉隆々のブーメランパンツオッサンとか、これなら理性崩壊と戦ってた方が健康的だったか?

「しかし、昨夜は楽しめたかね?」
「ブフウ!!」

このオッサンは自分の娘について他に言うことはないのか!? あんたの娘は放浪中のオス幻狼とベットを共にしてたんだぞっ!

「その様子では何もなかったようだな。若いのに関心関心と言うべきか、不能を疑うべきか」

判断はお任せしますよ糞ジジイ!

「恐らく今日の夕方、人間側の準備が整い次第開戦となるはずだ。また壊されては堪らないだろうしな」

急に真面目な話か。
向こうの進軍のタイミングが絞られたのは嬉しい誤算だった。また武器を破壊されない内にジャングルを攻め落とすつもりらしい。
ただ、逆に言うと王子が説得する機会を奪ったとも言える。
まあ、全てを完璧になんてできるはずないのだからこれはこれで良しとする。

「協力してくれることには素直に感謝している。我らだけでは、恐らく人間共に蹂躙されて終わりだったであろうしな。だがそれと娘のこととは話が別だ。後でジックリとつき合ってもらうぞ」

オッサンとマンツーマンで話し合い……したくないな。

「覚えてたら、ですね」
「忘れさせんさ」

ニヒルに笑う王様は、ちょっとだけ大人の男で将来の目標にはなった。服を除いて。



で、夕方。王妃が観察した結果通り、人間はジャングルに対して陣を展開して魔獣を根絶やしにしようと動き始めた。王様の予想通り数は100くらい。

非戦闘員はなるべくジャングルの奥地に避難してもらい、肉食魔獣や力のある魔獣が迎撃に出ることにした。
ジャングル全体の危機ということで他種族も協力的だった。特に炎猿族は木の上からジャングルに迫る人間に堅い木の実を投げ付けたり、木のてっぺんから人間を地面に叩き付けたりと相当頑張ってる。
ちなみにジャングルの狼は俺たち幻狼と共闘できることに感激して武勇伝として語り継ぐとか言われた。語られても困るんだが? 水刺すのも悪いと思って言わないけど。

人間たちの2割くらいがジャングルに突撃してったな。

「さて、俺たちの出番だ。投石器や石弓みたいな対空能力の高い武器を潰すぞ」
「うんっ」
「分かったわ」

で、俺たち3匹は蝶対策の武器を壊す。バタフライキラーキラー? 言いづらいな。
狼の姿では近距離しかできなくて不便なので人化した状態で戦う。皆殺しにするんだし顔だけ隠してれば良い。ローブを羽織って出陣。
投石器は5つ、石弓は3つ。石弓はあれだ、狩りゲームのバリスタを車輪付けて動かせるようにしたやつだ。

「なっ! ジャングルから人!?」
「おいっ、あんたたち、ぎゃあああっ!」
「何すんだ俺たちは、がはっ!」
「コイツら魔獣の味方かっ!?」

雷を頂点に三角形の配置で人間たちに突撃する。焔と俺が中距離から牽制し、雷が豪腕で中央からぶち抜く戦法だ。単純だけどかなり戦いやすい。
時折俺に切りかかってくる人間は氷で伸ばした展開刃で手足を切り落とし、焔は法剣を巻き付けてから炎で火達磨に、雷は特に工夫もなく腕力でミンチにしている。
早速1つ目の投石器に到着。

「脆いわね」

雷の1撃で正面から両断され、ただの木の塊になったようだ。周囲の人間を右の銃で撃ち殺し次の投石器の方に走り出す。
今度は焔が戦闘になった。法剣を通常の剣に変え、炎を纏った剣でライトセーバーみたいに鉄すらバターみたいに切っている。あの剣は何製だ? オリハルコンだけであんな焔の炎に耐えれる物ができるのか?

「人間が、凍の邪魔するなっ!」

投石器が射程範囲に入った瞬間、焔が法剣を伸ばして投石器に火を付けた。ジャングルの中では絶対にやらないでください。

「凍、あなたの番よ」

次は俺が先頭。雷は斧槍から槍を伸ばした槍斧に変え、人間を数人串刺しにしている。焔はえげつない人間の丸焼きを作っている。
俺は2匹ほど酷い性格はしていないので普通に銃弾で頭を撃ち抜いたり展開刃で切り殺したりしかしていない。ちなみに左の銃は最初からステークモードだ。投石器用です。

「撃ち抜く!」

3つ目の投石器をステークで貫き、氷の展開刃で細切れにしてリサイクル不可にする。
人間が『何故俺たちの邪魔をする!』とか『お前たちも人間じゃないのか!?』とか言ってるが無視。先に仕掛けたのはお前らだ。
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