フェンリルさん頑張る

上佐 響也

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遊園地

3話 少しでもオスとして頑張った結果がこれだよ

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とりあえず焔、雷、花子の順番で日焼け止めを塗ることになった。
3匹とも俺に塗らせたいらしい。俺、もうゴールしちゃ駄目か?

「凍、早く~」

はいはい。
日焼け止めは完全に液体で映画とかアニメとかで見たオイルに似てる。
手に取って焔の背中に塗る。

「ひゃうっ」

なんか、凄く体の下の方が反応する声があがった。
冷たかったみたいで焔がエビ反りの姿勢をしそうになったけどそれだと胸が隠れない。もし正面から見てる奴が居たらムカつくのでちょっと無理矢理抑える。

「うぅ~、痛いよ~、冷たいよ~」
「悪い。でもそのまま体上げたら見えるぞ?」
「……凍以外に見られたら滅ぼす」

ナイス俺の判断力。ビーチを血の海に変えなくて良かった。
日焼け止め塗り続行。焔の綺麗な肌に触れる。
さっきの反省を生かして掌で日焼け止めをちょっと温めて塗り始める。
正直、異常に滑らかな焔の肌に触っているとそれだけで頭がおかしくなりそうだが何とか耐える。
焔の気持ち良さそうな鼻歌が耳を刺激するが無視。少しでも力を入れたら折れそうな細い体だけど適度にフニッとした肉が付いていて不健康じゃないことが分かる。
ちょっとでも下の方に視線をやったら俺まで発情期で暴走しそうだったからなるべく焔の髪を見ることで耐えきった。

「むぅ~。『手が滑ったっ』とかって胸触っても良かったのにぃ~」
「やなこった。さっさと水着を直せ」
「は~い」

「じゃあ、次は私ね」

来ました。第2戦目にしてラスボスと名高いアネゴの登場です。皆さんそのワガママボディに拍手を!
俺は始める前から心が折れそうですが。

「じゃあ、外してもらえるかしら?」

まるで娼婦が男を誘うような仕草で俺に水着の結び目を外せと言う。
雷の体とレジャーシートに潰された胸が存在を主張しているが見ない、ってデカいからどうやったって視界に入っちまうよ!!
勇気を振り絞って結び目に手を伸ばし蝶結びになっている紐を外す。
タユンという擬音が付きそうな動きで胸が解放され、レジャーシートの上で踊る。
もう見てられねえよ!!

「ふふっ、私も冷たい日焼け止めで胸を晒すことになるのかしら?」

周囲の男共からしたら天国だろうが絶対にさせねえよ。てか見た奴は殺す。
日焼け止めを掌で温めてから雷の背中に塗り始める。焔の時のように全体に馴染ませるように丹念に塗ろうと擦ったところで気付いた。
ちょっと掌を上下させるだけで、雷の胸が揺れるのだ。

……ゴク

はっ! 生唾飲み込むって俺は何考えてんだ!?

「あら、どうしたの?」

こいつ、絶対分かってやがる。塗ろうと手を動かす度に合わせるように体を揺すって胸が大きく動くようにしやがった。
ちょっと背中を上下させるだけでグニグニと形を変える雷の胸を意識から除外しようにも俺のオスの性さがが反応してしまう。
うわぁ、かなり自由に形変えるな。上下左右全部思い通りだ。こうか? それともこう?

「んんっ、ちょっと、擦れるわね」

ぎゃああああああああああああああああああああああ!!
俺はっ! 俺は何してた!? 雷の背中に日焼け止め塗りながら何してたっ!?
駄目だ、雷に塗るのは危険すぎる! 丹念にとか気にしないでさらっと全体に塗って終わろう!!
ちょっと雑になってしまったが紐を結んで雷に塗るのを終えた。結ぶために水着を持ち上げた時に胸が異常に動いて俺が立てなくなった。立ったから立てなくなったんです!

「もうちょっとあのままでも良かったのだけど」
「俺が無理だ」

「凍君、お願いしますっ」

中ボスにしてラスボスである雷を撃退したと思ったら花子が顔を真っ赤にして日焼け止めの瓶を俺に差し出してきた。俺はしゃがんでいたので花子を見上げる形になったのだが、花子さんの水着って胸と胸の間の紐すら透明みたいだ。
……考えるな! 考えるな俺! 花子が黒い布を胸に当てているだけなんて考えるな!

「お、お願いしますっ」

早速うつ伏せになった花子だが、紐が分からない。

「あ、紐が見えないんでしたね。じゃあ、探してみてください」

……もうやだ、泣きたい。
注文通り花子の背中に指を這わせて紐の位置を確認しようと花子に触れる。

「ひうっ」

……へ?

「だ、大丈夫ですっ。続けてくださいっ」

あ、はい。
花子の水着は背中と首の所の2つで止めているらしいので背中の結び目を外すために探す。
触れてるだけで花子がプルプルと耐えるように震えているが無視! 無視するんだ俺!
ようやく見つけた背中の結び目を解いて塗ろうと思ったんだが、こんなに敏感で大丈夫だろうか?

「塗ってくれないんですか?」

塗るよ塗りますよ! だから泣きそうな声出さないでくれ!
諦めて花子の背中を掌で撫でる。

「んっ、ひあっ、ひゃうぅぅ」

もう止めて! 俺もお前もライフはゼロなんだよ!! これ以上はお互いに傷つけあうだけだって! だからもう止めよう!!
だが花子はまだ続ける気のようで、ならばそんなに触れない方が良いかと思って接触面積を減らして指先だけで塗るようにしてみた。

「あぁぁぁっ、んんっ、凍君~」

何か反応が強くなってしまった。触れる感触が小さいと敏感に反応してしまうのか?
なら逆に掌全体で強く背中を撫でてみる。

「痛っ、もうちょっと、優しくっ、んんっ」

何やっても駄目なんじゃねえかよ!!
何だろう、花子がビクンと反応する度にちょっと優越感に似た感情が沸き起こる。
前に焔に暴走したときに似てるこれは、俺の征服欲か?

「はぁはぁ、凍君、止めちゃうんですか?」

止めてくれええええええええええ!!
そんな何かを待ってるかのような顔されたら壊れる! 俺の理性が壊れるから!
焔雷花子の3コンボなんて耐えられるオスが居るはず無いだろ!! もうマジで勘弁してください!!
ここまで耐えた俺を褒めてくれストップかけてくれさっさと普通に遊ばせてくれ!!

「塗り終わったし結び直すぞ」

強制終了!! これ以上は氷狼ストップ入ります!! 俺の精神衛生上の都合で!!

「ひゃうっ! 脇はっ、弱いんですっ」

分かったよ触らねえよだから速くこのお色気空間から抜け出させてくれよ!!

「あっ、やっと花子の番も終わったんだねっ」
「あら、随分顔が赤いわよ。大丈夫?」
「ちょっと、起き上がれそうにありません」

おいおい、そこまで酷いのか。
とりあえず触らないように細心の注意を払って花子の水着の紐を結ぶ。今回は本当に触れないように注意したから無反応だったぜ。

「じゃあ凍っ、うつ伏せになってっ」

…………は?

「あなたはまだ塗ってないでしょう?  塗ってあげるわ」

要らない! 自分でできるから要らない!!

「凍君、後で背中が痛くなったら大変です。速く塗りましょう?」

花子!? 起き上がれないんじゃなかったのか!?

「折角凍君に合法的に触れるんです。これくらいの芸当できて当然ですっ」
「そうだよねっ」
「常識ね」

聞いたこともねえ常識だなオイ!!

「じゃ、塗り塗りしよ~」
「逃げたら悲鳴をあげてあげるわ」
「凍君の背中、結構広いんですね」

……泣きたい。
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