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帝都その2
6話 水龍に会いに行く前にねっ
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霊帝の依頼内容の細部を聞いた翌朝、俺たちはギンガとスバルの見送りと称して庭でBBQをすることにした。
2人は俺たちが帝都を出発した2日後から霊帝の傍で変態2人から霊帝を守っていたそうだ。2人が居なければ汚されていたとは霊帝の談。
しかし、1つだけ気になることがあった。
「ギンガもスバルも学校は特例で逃げおおせたのか?」
スバルは18歳だと言ってたから帝都の学校に行く年齢だしギンガは3歳でも見た目は16歳だ。普通なら学校に通わされるんじゃないのか?
「簡単なことだよ。校舎が破壊されていて教室が確保できなくてね、元から居た生徒ですら週に3日登校させるしかないのに新しい生徒なんて増やせないだろう?」
なるほど、霊帝が原因か。
だがグッジョブ! 俺たちも学校に通わなくて済むということだ! あの学校は本当に勘弁してくれ!
「学校……ギンガは通いたい?」
「母さんと一緒ならどこでも良い」
「ギンガ可愛いー!」
ああ、甘ったるい空間が広がっていくなぁ。空が綺麗だなぁ。
「あ、火力調整するからちょっと離れてねっ」
BBQセットの前でボンヤリ空を眺めてたら焔が手を火の付いた炭に近付けた。
普通の人間なら火傷するし熱くて近づけもしないはずだが炎狼の焔にとっては温い温泉程度の熱しか感じないだろう。炎狼って火山地帯で進化した大型狼だって言われてるしこの程度の火力じゃ怪我もしない。
「凍~、どれくらいが良い?」
残りの肉を見ると火力が強くないと火が通らないものばかりだった。
「少し強めにしてくれ」
「うんっ」
さて、俺が焔を好きな理由の1つに炎がある。
……サラッと凄いことを言った気がするが無視無視。口に出したら全てが終わるようなこと言ってしまった。焔に聞かせたら……朝日を拝めるか怪しいな。
……ええ、そうですよ焔が好きですよ雷が好きですよ花子が好きですよハーレム万歳ですよ! 文句あるか!? 雷も胸とか顔からダイブしてえよ! 花子の髪とか超スリスリしてえよ!
脱線してる脱線してる。
焔の炎について話すと、優秀な炎狼の炎で炙られた食い物は美味いのだ。まあ炎狼が番を手に入れるためのアピールポイントが炎だったんだろうな。焔は同年代では優秀な炎狼だから焔の炎で焼かれた肉や野菜は普通の炎で炒めたのと比べると有り得ないくらい綺麗に火が通る。ついでに薫製なんかを焔の炎で作ろうとするととても芳醇な香りがする。
お、そんな解説を挟んでいたら牛タンが良い感じに焼けてきたな。隣では沼カタツムリがアワビみたいにグツグツいっている。昔から俺の獲物をコンガリ焼いてくれた焔は火加減が上手い。英才教育の賜物だな。
沼カタツムリは泥臭いので人間社会では好き嫌いがハッキリと別れる食材だ。納豆みたいな扱いだと思ってくれ。見た目はエスカルゴだけどな。
「ギンガ、お肉が焼けたわよ」
「ん、美味しい」
「良かったわね」
「うんっ」
3歳児とお母さんと考えたら微笑ましいはずの親子の食べさせ合いっこはギンガとスバルがやるとバカップルにしか見えないな。
あ、霊帝が胸焼け起こしてる。
「凍、何で僕はスバルとギンガを見送るのにBBQなんて提案してしまったんだろうか?」
知らん。
俺たちは2人との接点なんてほとんど無いから上手く話せないからな?
「凍、何でこんなに美味しいの?」
とか思ってたらギンガが声を掛けてきた。後ろではスバルが凄い形相で睨んでいる。
俺にはちゃんと将来を拘束された相手が居るから心配するな。
「焔は炎狼だからな。火加減が上手いし炎狼の炎は綺麗に火が通るから普通より美味いんだよ」
「そうなんだ……どこかで炎狼を喰らえば俺もできるようになるのかな?」
ああ、そう言えば鬼は生き物の脳を喰らうと相手の能力を使えるようになることがあるんだったな。
「焔を喰らおうとしたら俺がお前を殺すからな」
「大丈夫、母さんの友達とは戦わない」
焔とスバルって、友達か?
ギンガの見方にかなりの違和感を感じたが集団生活が本能に刻まれている生き物がたった2人で森の中で暮らしているのだから少し壊れてても当たり前だと納得。しかしギンガは3歳児ということもあって素直だ。
「凍たちは霊帝をどうするの?」
ギンガにとっても霊帝の今後は気になるらしい。気付いてるかは微妙だけど友達なのか?
「帝都の東に広がってる森に水龍が居るからな、霊帝の番にならないか聞いてみる」
「ああ、スイ様の所に行くんだ」
「……スイ様?」
「スイ様」
待て、会話が噛み合ってない。
何だ? ギンガはあの水龍を知っているのか? もしくは違う水龍が居るのか?
待て待て待て、あんな怪獣が2匹も居たら帝都は終わってる。人間の子供でも1時間もしないで歩ける距離にドラゴンが2匹とかそれなんてグラウンドゼロ? いや霊帝を含めたら3匹? 馬鹿なの? 死ぬの? メッチャ怖いのおおおおおおお!!
「スイ様は森の生き物が水辺を独占しないように監視しててくれるんだ」
あの水龍ってそんなことしてたのかよ。森の湖は生き物には生命線、それを普通の魔獣が独占したら森は一瞬で人間たちに蹂躙される。水龍みたいな圧倒的な存在が森の主要施設を管理するのは魔獣の住処の防衛としては大正解だ。
「これで水龍とは平和的に話し合えるかもしれないわね」
雷さん聞いてたんですね。
「後は水龍がレイちゃんを番として認めてくれるか、ですね」
花子も居たんかい。
そして焔はスバルと壮絶な肉の奪い合いをしている。箸が乱舞し『凍にあげるのっ!』やら『ギンガのお肉よっ!』などなど変に気合の入った声が聞こえる。
あの箸捌きを武器に見立てたら指南役としてスカウトが絶えないだろうなぁ。
「凍、現実逃避しては駄目よ」
そう言って俺の唇を雷がツンと押した。お前も昨日してただろうが。
「私は現実逃避はしませんよ?」
花子さんは世の無常を嘆いてましたからねえ。
あ、焔とスバルの争いが終わった。霊帝が横から取って行ったな。凄い形相で追いかける焔とスバルからガチ逃げしてる。あれは怖いな。
「用意したのは僕なんだから何を食べようと僕の勝手だろう!?」
「凍のために焼いたのにぃぃぃぃぃ~」
「ギンガの笑顔見たかったのにぃぃぃぃぃ~」
理由は凄くヘボいな。
よし、ギンガとスバルに少しサービスしてやるか。
「ギンガ、スバルのために肉焼いてやったらど」
「焼く!」
ああ、はい。じゃあ焼こうか?
ついでに3匹分の肉も焼く。
「あら、凍が気を効かせてくれているわ」
「楽しみです!」
雷さん茶々入れないで。花子は素直でお兄さん嬉しいよ。俺の方が年下だけど……俺の合計年齢って29だしお兄さんでも問題無いのか?
面倒だから花子がお姉さんで良いや。
「焔、肉焼けたぞ」
「母さん、一緒に食べよ?」
「食べさせて!」
「食べましょう!」
反応速いな。
2人は俺たちが帝都を出発した2日後から霊帝の傍で変態2人から霊帝を守っていたそうだ。2人が居なければ汚されていたとは霊帝の談。
しかし、1つだけ気になることがあった。
「ギンガもスバルも学校は特例で逃げおおせたのか?」
スバルは18歳だと言ってたから帝都の学校に行く年齢だしギンガは3歳でも見た目は16歳だ。普通なら学校に通わされるんじゃないのか?
「簡単なことだよ。校舎が破壊されていて教室が確保できなくてね、元から居た生徒ですら週に3日登校させるしかないのに新しい生徒なんて増やせないだろう?」
なるほど、霊帝が原因か。
だがグッジョブ! 俺たちも学校に通わなくて済むということだ! あの学校は本当に勘弁してくれ!
「学校……ギンガは通いたい?」
「母さんと一緒ならどこでも良い」
「ギンガ可愛いー!」
ああ、甘ったるい空間が広がっていくなぁ。空が綺麗だなぁ。
「あ、火力調整するからちょっと離れてねっ」
BBQセットの前でボンヤリ空を眺めてたら焔が手を火の付いた炭に近付けた。
普通の人間なら火傷するし熱くて近づけもしないはずだが炎狼の焔にとっては温い温泉程度の熱しか感じないだろう。炎狼って火山地帯で進化した大型狼だって言われてるしこの程度の火力じゃ怪我もしない。
「凍~、どれくらいが良い?」
残りの肉を見ると火力が強くないと火が通らないものばかりだった。
「少し強めにしてくれ」
「うんっ」
さて、俺が焔を好きな理由の1つに炎がある。
……サラッと凄いことを言った気がするが無視無視。口に出したら全てが終わるようなこと言ってしまった。焔に聞かせたら……朝日を拝めるか怪しいな。
……ええ、そうですよ焔が好きですよ雷が好きですよ花子が好きですよハーレム万歳ですよ! 文句あるか!? 雷も胸とか顔からダイブしてえよ! 花子の髪とか超スリスリしてえよ!
脱線してる脱線してる。
焔の炎について話すと、優秀な炎狼の炎で炙られた食い物は美味いのだ。まあ炎狼が番を手に入れるためのアピールポイントが炎だったんだろうな。焔は同年代では優秀な炎狼だから焔の炎で焼かれた肉や野菜は普通の炎で炒めたのと比べると有り得ないくらい綺麗に火が通る。ついでに薫製なんかを焔の炎で作ろうとするととても芳醇な香りがする。
お、そんな解説を挟んでいたら牛タンが良い感じに焼けてきたな。隣では沼カタツムリがアワビみたいにグツグツいっている。昔から俺の獲物をコンガリ焼いてくれた焔は火加減が上手い。英才教育の賜物だな。
沼カタツムリは泥臭いので人間社会では好き嫌いがハッキリと別れる食材だ。納豆みたいな扱いだと思ってくれ。見た目はエスカルゴだけどな。
「ギンガ、お肉が焼けたわよ」
「ん、美味しい」
「良かったわね」
「うんっ」
3歳児とお母さんと考えたら微笑ましいはずの親子の食べさせ合いっこはギンガとスバルがやるとバカップルにしか見えないな。
あ、霊帝が胸焼け起こしてる。
「凍、何で僕はスバルとギンガを見送るのにBBQなんて提案してしまったんだろうか?」
知らん。
俺たちは2人との接点なんてほとんど無いから上手く話せないからな?
「凍、何でこんなに美味しいの?」
とか思ってたらギンガが声を掛けてきた。後ろではスバルが凄い形相で睨んでいる。
俺にはちゃんと将来を拘束された相手が居るから心配するな。
「焔は炎狼だからな。火加減が上手いし炎狼の炎は綺麗に火が通るから普通より美味いんだよ」
「そうなんだ……どこかで炎狼を喰らえば俺もできるようになるのかな?」
ああ、そう言えば鬼は生き物の脳を喰らうと相手の能力を使えるようになることがあるんだったな。
「焔を喰らおうとしたら俺がお前を殺すからな」
「大丈夫、母さんの友達とは戦わない」
焔とスバルって、友達か?
ギンガの見方にかなりの違和感を感じたが集団生活が本能に刻まれている生き物がたった2人で森の中で暮らしているのだから少し壊れてても当たり前だと納得。しかしギンガは3歳児ということもあって素直だ。
「凍たちは霊帝をどうするの?」
ギンガにとっても霊帝の今後は気になるらしい。気付いてるかは微妙だけど友達なのか?
「帝都の東に広がってる森に水龍が居るからな、霊帝の番にならないか聞いてみる」
「ああ、スイ様の所に行くんだ」
「……スイ様?」
「スイ様」
待て、会話が噛み合ってない。
何だ? ギンガはあの水龍を知っているのか? もしくは違う水龍が居るのか?
待て待て待て、あんな怪獣が2匹も居たら帝都は終わってる。人間の子供でも1時間もしないで歩ける距離にドラゴンが2匹とかそれなんてグラウンドゼロ? いや霊帝を含めたら3匹? 馬鹿なの? 死ぬの? メッチャ怖いのおおおおおおお!!
「スイ様は森の生き物が水辺を独占しないように監視しててくれるんだ」
あの水龍ってそんなことしてたのかよ。森の湖は生き物には生命線、それを普通の魔獣が独占したら森は一瞬で人間たちに蹂躙される。水龍みたいな圧倒的な存在が森の主要施設を管理するのは魔獣の住処の防衛としては大正解だ。
「これで水龍とは平和的に話し合えるかもしれないわね」
雷さん聞いてたんですね。
「後は水龍がレイちゃんを番として認めてくれるか、ですね」
花子も居たんかい。
そして焔はスバルと壮絶な肉の奪い合いをしている。箸が乱舞し『凍にあげるのっ!』やら『ギンガのお肉よっ!』などなど変に気合の入った声が聞こえる。
あの箸捌きを武器に見立てたら指南役としてスカウトが絶えないだろうなぁ。
「凍、現実逃避しては駄目よ」
そう言って俺の唇を雷がツンと押した。お前も昨日してただろうが。
「私は現実逃避はしませんよ?」
花子さんは世の無常を嘆いてましたからねえ。
あ、焔とスバルの争いが終わった。霊帝が横から取って行ったな。凄い形相で追いかける焔とスバルからガチ逃げしてる。あれは怖いな。
「用意したのは僕なんだから何を食べようと僕の勝手だろう!?」
「凍のために焼いたのにぃぃぃぃぃ~」
「ギンガの笑顔見たかったのにぃぃぃぃぃ~」
理由は凄くヘボいな。
よし、ギンガとスバルに少しサービスしてやるか。
「ギンガ、スバルのために肉焼いてやったらど」
「焼く!」
ああ、はい。じゃあ焼こうか?
ついでに3匹分の肉も焼く。
「あら、凍が気を効かせてくれているわ」
「楽しみです!」
雷さん茶々入れないで。花子は素直でお兄さん嬉しいよ。俺の方が年下だけど……俺の合計年齢って29だしお兄さんでも問題無いのか?
面倒だから花子がお姉さんで良いや。
「焔、肉焼けたぞ」
「母さん、一緒に食べよ?」
「食べさせて!」
「食べましょう!」
反応速いな。
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