フェンリルさん頑張る

上佐 響也

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帝都その2

18話 真・コスプレ祭りだよっ!

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帝宅に戻ってまずは家の中が険悪な空気になっていないかを確認。適当な侍に俺たちの家の方から喧嘩するような声が聞こえないかを聞いてみると意味深な表情で『またまた、天使様も恍けちゃって』とか言われた。何があった?

考えても始まらないので家に急ぐと中からメスたちの声が聞こえるんだが、別に険悪ではない。ただし、雷は戸惑うような、焔と花子は遊ぶような声だ。
行きたくね~

意を決して家に入って寝室の襖を開くと、女医の格好の雷がミニスカナースの焔と花子に襲われていた。誰か、説明求む。ドッキリのスタッフはどこかな?

「へあっ!?  凍!?」
「凍!  今直ぐ焔と花子を満足させてあげなさい!!」
「雷!?  無理です! 1対2なんて死んじゃいます!!」

なんというカオス。

焔は正統派のミニスカナースコスだ。薄く桃色に見えるそれはどう見たって本職では使われないだろう短さのスカートで、ガーターベルトとストッキングの絶対領域が細いくせにしっかりと肉のついた焔の美脚を引き立てている。尻を上に突き出すポーズは誘っているようでもある。

雷は白いブラウスに白衣に黒のミニスカート。しかしブラウスは胸元の面積が全く足りていないようで胸元がはち切れんばかりに押し上げられており谷間は開放されている。きっとボタンを止められなかったんだろう。ボタン外した時に躍動感溢れる動きをしそうだ。

花子は焔とほとんど同じだがガーターベルトもストッキングもつけていない。この辺は好みの分かれるところだろうが、何より問題なのは艶のある黒髪だろう。汗ばんだ髪が花子の顔に張り付いてかなり色気を出している。エロいお姉さんって感じだ。

「お前ら、何してんだ?」

というか花子の死んじゃう発言は気にした方が良いのか? もう少し加減するべきか?

「どうにも昨日のじゃ物足りないって」
「逆だよっ!!」
「2匹じゃ足りません!!」

質問に答えが返ってこねえ。あ、いつも通りか。

「その~、雷に色々酷いこと言っちゃったのを謝ろうと思ったの」
「考えてみると雷が1番私たち全員のために動いてくれてますし」
「その方法がコスプレでレズプレイって、まるで分からねえ」
「凍が帰って来た時に最初にやらせてあげようって思ったんだよ!」
「そんなの生贄じゃない!」

雷さん、僕の心がブロークンハートするからそれ。
生贄って何? そんなに酷かった?

「あなたは自分の無尽蔵さを自覚しなさい!!」
「今思い出しても怖いですぅ」
「凍と一緒に卒業……えへへっ」

最後の奴喜んでるぞ。
あ、焔は比較的何でも喜ぶM気質だったな。
そして布団の横にはスーツと白衣が。俺も混ざるべきだろうか?

「あっ、そういえばレイちゃんはどうしたんですか?」
「脱走した変態を捕まえに行ったんでしょっ?」

俺の視線から何かを察した焔と花子が焦って話題を変えてきた。とりあえず着替えながら答えてやろう。

「変態紳士は殺して森の魔獣たちにくれてやったよ。その後で変態淑女まで出てきたからな、そっちは霊帝が殺した」
「大変だったのね」
「精神的にな。そういやギンガはスバルの子供じゃないって変態紳士が暴露したせいでちょっと揉めたな」
「え? あの2人って揉めるの?」

焔の評価を聞いてみたいな。気持ちは分かるけどさ。

「言うほど揉めてねえな。10分もしないでバカップル始めたよ」
「胸焼けしそうですね」

花子さん正解。
俺も霊帝もお腹いっぱいだった。あれを毎日見せ付けられる水龍は泣いて良い。
さて着替えも終わったな。お医者さんごっこでも始めるか?  あ、でも帝都を出る準備もしないとだ。

「帝都を出るならシッカリと準備しようっ、そうしようっ」
「そんなに必要な物あるか?」
「察しが悪いわね。女の子には色々と必要なものがあるのよ」
「体力とかっ、体力とかっ、あと特に体力とかが必要なんです!」

あ、はい、すいませんでした。何も言いません。
しかし、そこまで辛かったのか。始めてだったから本当に歯止めが効かなかったんだな。正直、体が覚えてて頭は覚えてない状態だ。
う~む、惜しいな。



翌々日、俺たちは帝都を出て王都を目指すことにした。霊帝には変態コンビを殺した日の夜に言ってある。
焔と一緒に少し寂しそうな顔をしていたが次のお土産を期待していると言って焔が渡したネックレスをさり気なくアピールしてきた。結構嬉しかったらしい。

「凍の持ってきてくれた魔石による義手義足の製造は帝国を上げて研究させるよ。オリハルコンを使えば面白いことになるかもしれない」

ああ、オリハルコンって魔石と反応して形状を変えるって特性があったな。俺の銃に装備されてる展開刃もその技術の産物だし。

「…………」
「寂しいのかしら?」
「へあっ!?」
「焔って考えていることが直ぐ表情にでますよね」

霊帝に帝都を出ると告げた日から焔は少し寂しそうな表情で黙りこくっていることが多くなった。本当に妹みたいに思っているようで離れ難いみたいだ。

「いずれ帝都に戻ってくれば良いわ。私たちはどこへでも行けるんだから」
「そうですよ。だから寂しいのならば寂しいと言えば良いんです」
「……うん」

その晩、焔はいつもより強く俺にしがみ付いて布団に入った。その折に全員にこんなことを言っていた。

「何でだろう、レイちゃんが凄く面白いことになる予感がするんだ」

悩んでたのは面白そうなことが分からないかららしい。
…………最初からそう言えよ!!

で、出発当日の朝、焔の予感は当たった。

「キャー霊帝様―っ! 会いたかったです会いたかったです会いたかったですよーっ!」

何だか舌足らずな話し方の変態淑女の小さいのが帝宅の裏にある森から俺たちを見送ろうとしていた霊帝に抱き着いた。
あれ、俺は幻覚でも見ているんだろうか。身長165センチ程だった変態淑女が130センチくらいに縮んで霊帝にジャレついている。服のサイズはそのままだからダボダボだ。

「おい! 君は確かボクが頭を粉砕して殺したはずだよな!?」
「何を言っているんですか? 私はスライムナイトの先祖帰りなんですから核を破壊しない限り時間を掛ければ再生できますよ? それよりも霊帝様の匂いクンカクンカクンカアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

…………この世に悪の栄えた試し無し、されど正義が絶えたことも無し。しかし、真に恐ろしきは滅びぬ変態だと心せよ。
何言ってんだ俺。

その後、どっからか俺たちが帝都を出るって聞き付けたギンガとスバルが水龍の背中に乗って登場。帝都の住民を恐怖のどん底に落として別れの挨拶と雑談をして帰って行った。

「母さんと一緒なら親だとか違うとか何でも良いや」
「ギンガが一緒なら別に関係は何でも良いのよ」

似た者親子め。

「……凍、君が来るといつも碌なことが無い!! 2度とボクの生活圏内に足を踏み入れるな!!」
「はいはい。じゃ、またな」
「バイバイ!」
「さようなら」
「次に会うときは凍君の子供を作っておきますね」

花子さん、気が早い、訳でもないか。
さて、まずは帝都に戻って王子を苛めてみるかな。
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