83 / 113
83
しおりを挟む「…どこからこれを?」
そこらで簡単に手に入る物ではないハズだが…と青年は疑問を口にする。
「どこかの遺跡で見つけた物らしい」
「…らしい?」
男が言った言葉に青年は怪訝そうにおうむ返しのように聞き返す。
「魔導協会に所属したら、特典として貰った」
「…特典で…?」
「新聞とかの勧誘をする時に洗剤とかティッシュとか付いてきます、と言うがあるだろう?それと似たようなものだ」
「ああ、なるほど」
男の返答を聞いて納得出来なかった青年もたとえを聞いて納得した。
「…はあ…はあ…あれ…?何か、あったん、ですか…?」
青年と男の話がちょうどひと段落したところで女の人が息を切らしながら戻ってくると不思議そうに聞く。
「いや、少し話をしていただけだ」
「そうでしたか、すみません…先にお風呂に入ってきます」
青年の返答を聞くと女の人は断りを入れてから先に家の中へ入る。
「…コレはあの子に渡した方が良いかもしれないな…」
青年は女の人の背を見送るとボソッと呟いた。
「…止めておいた方がいい、あの子はまだまだ修行中なのだろう?下手に力を強化すると技術を身に付けるのが遅くなるぞ」
その呟きを聞いた男が青年の考えに反対するように止める。
「…それもそうだ…今は切羽詰まった状況でも無い、目先の事よりも後先の事を優先しよう」
ありがとう、と青年は意見してくれた男にお礼を言う。
「ふっ…お前の悲願とやらはまだ何か分からんが、とりあえずお前への協力は惜しまないつもりだ」
お前が俺に協力してくれたようにな…と男はニヤリと笑いながら返して家の中に入って行く。
翌朝。
「…それでは行ってくる」
朝食後の片付けを済まして椅子に座ってる彼女に男が出かけの挨拶を告げた。
「ん?ああ」
彼女はどうでもよさそうに言うと手をヒラヒラと振る。
「…お、もう行くのか…頑張れよ」
「頑張って下さい!」
微妙な表情で外に出た男にストレッチ中の青年と女の人が気付いて声をかけた。
「ああ、彼女の事は任せたぞ…何かあれば連絡しろ、直ぐに駆けつける」
「分かっている」
男が有事の際に自分を頼るように言うと青年は笑いながら頷く。
「…召喚スキル『シュリオ』、『ライド』」
男は青年の返事を聞くと手を上げてスキルを使う。
「…あれ?あの人は…?」
男がスキルを使うのを見てなかった女の人は少ししてキョロキョロと辺りを見渡しながら首を傾げる。
「ああ、もう出かけた」
「…速いですね…魔物に乗って行った…?」
青年の返答に女の人は意外そうに呟いた。
「…それより、ランニングを始めよう」
青年はあえてなのか、女の人に説明もせずに話題を変える。
「そうですね」
女の人も特に気にせずにストレッチを終えた。
「では行くか」
「はい!」
青年が声をかけると女の人は元気よく返事して走り出す。
0
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる