「防人少女MDGF」

しろっコ

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第三話<困惑と保護>

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「私が何とかするから。絶対に」

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「防人少女MDGF」
 第三話<困惑と保護>
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「でも、どうする?」
ミサトは私に聞いてきた。

「夕虹ちゃんを、このまま部室に残しとくわけにはいかないよね」
「うん、それは分かる」
私は自分の頭に手をやって思案しながら言った。

「私か……ミサトの家で預かるしかないよね」

 ミサトもアゴに手をやって考え込む。
「そうだね……もし誰かが警察に連絡したらさぁ、GFって兵器だからゼッタイ捕まってサ、何されるか分からないよね」

 彼女の台詞にハッとした私。

「そう、夕虹ちゃんってGF……」
つまり兵器そのものだ。下手に警察なんか通報されたら、それこそ牢屋どころじゃない。いや下手したら自衛隊出動か? 

「いやいや、それはヤバイ」
私は思わず頭を振った。

目の前に展開していることは信じられない現象だが事実であり現実なのだ。

「GFって存在は珍しいに違いないよね」
「うん」
「だから人に知られたら最悪、何処かの研究所でバラバラに解体されて」
「それは夕虹ちゃんが可哀想」

……だからといって私の親に話すのも抵抗がある。もし話してもきっと反対される。だからせめて落ち着くまで何処かで預かって貰うことは出来ないか?

 私はミサトに聞いた。
「ねえミサトの家で預かれない? ミサトん家(ち)部屋も多いよね」

私の問い掛けに彼女は直ぐ否定した。
「ムリ無理ぃ! ほらウチってさ格式張ってるから、こーいう常識を超越したものは弱いんだよねぇ。姉も含めて……あはははは」
そういう彼女の目が笑っていない。

「はははは」
私も引きつった顔で苦笑した。お互いの事情は言う前から分かっているんだ。

この状況……彼女はウチより由緒ある家系だから無理か。

「なに? どーしたの」
二人の会話を聞いていた夕虹ちゃんも不安そうな顔をしている 

私は慌てて言った 
「あ、ごめん……ごめんねっ」

そうだ私たち以上に彼女は知らない場所に放り出されて不安なのだ。
「うん、大丈夫だよ夕虹ちゃん!」

「私が何とかするから。絶対に」
正直これといったアテはない。でも、なぜかそんな言葉が自然に私の口から出た。

しっかりしなきゃ。

「大丈夫! アケミはねぇ結構、義理堅い少女だから」
ミサトは私の腕を取って夕虹ちゃんに言う。

「義理堅いって……それ何の義理?」
「へへへ」
「よく分かんないけど」

でも、このまま夕虹ちゃんを放置出来ない。これって私が夕虹ちゃんを撃沈させたから? ……何とかしなきゃ。

私は手を伸ばして夕虹ちゃんに声を掛けた。
「あの……夕虹ちゃん立てる?」

彼女は私の方を見て少しニッコリした。
「うん……大丈夫っ」

夕虹ちゃんは、そう言いながら棚に手をかけて、ゆっくり立ち上がる。意外に大丈夫そうだった。

彼女は自分自身の身体を、あちこち押さえながら言った。
「私の装備が衝撃を吸収してくれたみたい」
「へえ、武具みたいだね」

私が感心しているとミサトが言う。
「その装備、どうする?」

夕虹ちゃんが背負っていた何かの装置。
「確かに大きくて、かさ張る」
「これ持って移動するのは大変そう」

「とりあえず防具の山に混ぜて積んでおけば何となくそれっぽくない?」
ミサトが言う。

確かによく見ると夕虹ちゃんの装備は包みたいな処の天辺(てっぺん)が剣道の面のような格子状になっている。大きさもちょうど顔くらいだ。
「そうだね。しばらくは、それで誤魔化せるかな」

「うん、そうしよう」
私たちは笑った。

夕虹ちゃんは私を見て言った
「そういえば……貴女の名前を聞いてないっ」
「え?」

私がちょっと驚いているとミサトが言った
「私はミサト。でさ、この子はアケミって言うんだよ。私と同じ剣道部なんだ」

「剣道……部?」
夕虹ちゃんは口を少し尖らせるような表情をした。ああ、この顔。いつもゲーム画面で見る夕虹ちゃんっぽい。

ミサトは言う。
「あーっ、そうか。夕虹ちゃんは軍人だから剣道は当たり前にやるんだよね?」

「ううん」
夕虹ちゃんは頭を振る。

「あんまり、やらないって言うか。最近、ちょっとサボってるんだ。だから大殿(おおとの)によく注意されてさ」
「殿?」

するとミサトが突っ込む。
「オオトノってアレでしょ? テートク補佐官ってか、眼鏡かけたインテリっぽい、ちょっと怖い人」

「あぁ」
何となく思い出した。最初の管理画面で出るキャラか。

「そうそうホントは『ダイデン』って言うんだけどさ、本人は『オオドノ』って呼ばせたくてさ。でも私たちは『おおとの』とか『デン公』って陰で呼ぶんだ」
「あー、それそれ。いっつも妙にカリカリしているんだよね?」
「そうだよ、アハハ。もう、笑っちゃう」
意外に元気な夕虹ちゃん、冗談も通じるようだ。私たちも笑った。

大殿というキャラクターはゲームの部隊で司令部を仕切っているちょっと怖いGFだ。
すごく真面目キャラだけど意外に抜けているところもある。そこが良いと言って、ちょっと人気のあるキャラだ。

そんな共通の話題があったからだろう。夕虹ちゃんはリラックスしたようで表情が明るくなった。

「取り敢えず、帰ろうか?」
時計を見ながらミサトが言った。

「うん」
私たちは部室を片付けて、帰宅する準備をした。

「じゃあ、夕虹ちゃんはアケミん家(ち)で決まりだよね?」
ミサトが指を立てて念を押すように言う。

「うん、大丈夫」……って応える私。
ホンとは心配だけど仕方がない。

 私たちは部室を出て廊下から玄関へ向かう。途中で先生に出会った。私は焦った。
でも薄暗かったので先生も夕虹ちゃんの顔までは分からなかったのだろう。

「早く帰れよ」
「はーい」
……というやり取りで済んだ。

 学校を出てしまえば、ひと安心だ。
装備を外した夕虹ちゃんは、その制服に似た戦闘服のデザインのお陰で普通の女学生にしか見えない。

しかも今気付いたのだがウチの学校の制服と夕虹ちゃんのコスチュームは雰囲気が似ている。だから、さっき先生に出会っても違和感がなかったのだ。

夕方の街は、薄暗いから彼女の燃るような茶髪も、さほど目立たない。
「茶髪?」

そこでハタと気づいた私は振り返る。
「あ……」

さっき先生が素通りしたもう一つの理由が分かった。

「帽子?」
私が言うと夕虹ちゃんは微笑んだ。

「私ね、装備を外すとスカスカした感じが嫌だから、帽子かぶるんだよ」
「へえ」
応えたのはミサト。

「それは設定に無いよね」
「設定?」
「……あ、いや、こっちのこと」
ミサトは直ぐに誤魔化した。裏設定みたいな夕虹ちゃんの行動も興味深いけど、お陰で助かったかも。
いくら先生でも染めたような茶髪の生徒が居たら気付くだろう。

怪我が心配だったけど夕虹ちゃんの体力は、かなり回復したようだ。GFは兵士だから基礎体力が違うんだ。

 交差点をいくつか過ぎてマンションが立ち並ぶ場所に来た。ミサトの家はこの先の一軒家。ウチはマンションだ。
「じゃあね」
「バイバイ」

ミサトと別れた私たちは、家へ向かった。

 私の家は一番奥のマンションで数分で到着する。マンション銀座と言われるこの区画では夕方は車は通るけど人通りは少なくなる。帽子をかぶっているとはいえ綺麗な茶髪の夕虹ちゃんが昼間に町を歩けば、かなり目立つだろう。でもこの道中は特に誰にも怪しまれることは無かった。私はホッとした。

夕虹ちゃんは立ち並ぶマンションを興味深そうに見上げる。
「これは格納庫?」

「ううん、私の家」
「家? ……これが?」
驚く彼女。私はちょっと慌てた。

「うそうそ、全部が私の家じゃなくて、ここの5階の一部が私の家」
「ふーん」
私の説明でちょっと納得したような彼女。

「私が居る隊員宿舎と同じだね」
「あ……そうだね」
私は苦笑した。併せて夕虹ちゃんのGFゲームの裏設定が見えるようで、ちょっと面白かった。

 エレベーターで5階へ。
「あ、この装置知ってる。ウチの格納庫にもあるよ」

「へえ」
自然に、こういう台詞が出る辺り、やっぱりこの子は本物だと思う。

もし私より熱心なゲーマーが彼女と一緒に散歩しながら会話したら喜ぶんだろうな……。

 そこでは私はふっと昨日の夜の自分のゲームを思い出した。
やはりあのとき私が夕立ちゃんを沈めたのだ。そう思うと急に鳥肌が立った。

もちろん今こうして目の前に彼女が居るということは本当に『死んだ』ワケじゃないと思う。理屈は良く分からないけど、多分そういうことだ。

それに、あのゲームでは一度、特定のキャラが『消えて』もプレイしていくうちに、また手に入ることが多い。確か夕虹ちゃんは人気はあるけどそんない手に入り難い『レア』なキャラでもないはずだ。

 だけど……

「5階でしょ? 着いたよ」
一瞬ボーっとしていた私に夕虹ちゃんが言う。彼女は私に手を取るとエレベーターを降りた。

「どうしたの?」
廊下のエレベーターホールで夕立ちゃんが私の顔を覗きこむ。一瞬、何かがグッと、こみ上げて来たが必死にガマンした。

「ううん何でもないから……」
こんな所で泣くものか。

「ココを真っ直ぐ行った突き当りがウチなんだよ」
「行こ、行こ」

ゲームキャラとはいえ、夕虹ちゃんには癒される思いだ。
当たり前だけどゲームキャラそのまんまのキラキラした彼女だ。不思議な感覚。屈託の無い笑顔を見せる彼女の姿に救われる思いだ。

 私たちは廊下を進んで私は玄関の鍵を開ける。
「ただいま」

「お帰り、今日は遅かったねえ」
母が奥から出てきて夕虹ちゃんを見た。

「誰? 友だち?」
「うん、トモダチっ……ぽいかな?」
夕虹ちゃんは明るく答える。

「……ぽい?」
母は一瞬、不思議そうな顔をした。私はちょっと焦った。

「何だ? こんな時間に」
ブツブツ言いながら父が出て来た。

だがステテコ姿の父は玄関に立つ長身の夕虹ちゃんを見て絶句した。
「なんで夕虹?」

夕虹ちゃんの前にステテコ親父を晒した私は恥ずかしさのあまり彼に負けじと素っ頓狂な声を上げた。
「あれぇ! 何でお父さんが夕虹ちゃんを知ってるの?」

「えっと」
父はなぜかドギマギしている。おいっ。

「……てことは、お父さんもテートクだったんだ?」
まあオタク兄貴の父親だから別に変でも無いだろう。

「そ、それよりだな、お前……何で?」
自分に矛先を向けさせまいとしているのか父は必死に夕虹ちゃんを指差す。ステテコ姿なんだからいい加減引っ込んでくれたら良いのに。

すると母。
「お父さんも何で、この子を知ってるの? ……綺麗な茶髪ね。学校で注意されないの?」

母の着眼点はそこか?

「えっと……だな」
焦る父。

すると珍しく兄が奥からのっそりと出てきた。案の定、彼もまた夕虹ちゃんを見るなり直ぐに凍りついた。

「なんで夕虹?」
言い方が親子で一緒だ、笑える。

その反応を見て母は言う。
「何? ケンジまで……結局、皆が知ってる子なの?」

そもそも母は状況が全く分かっていない。当然だが……私だって理屈は分からない。既に混乱しまくりの我が家の玄関口。

でも私は、この混乱に乗じて母に訴えた。
「お母さん、ちょっと込み入った事情があってさ! ……お願いっ! 今夜、この子うちに泊めたいんだけど。良いかな?」

一瞬、考え込んだ母は、父を見た。

腕組みしていた父親は言った。
「そうだな、困っているなら仕方ないだろう」

その背後で兄も、しきりに頷いている。調子の良い奴。

そんな二人を見た母は、夕方ちゃんを見て言った。
「貴女、晩ごはん、まだでしょう?」

「うん」
アニメ声だ。可愛い……ってか、二人の男はクラクラしている。バカ親子供め。

「じゃあ、上がりなさい。一緒に、ご飯食べよう」
母の、この一言で決まった。二人の男子は妙にニヤけた顔になった。

私はホッとした。母親が受け入れれば我が家の『関所』はオッケーだ。細かい問題は後から考えよう。

私の表情に安心したのか夕虹ちゃんも帽子を取って微笑んでいる。燃るような茶髪を差し引いても至近距離で見るとやっぱり可愛いよ夕虹ちゃん。何しろゲームキャラだ。容姿端麗スタイル抜群、オマケにアニメ声。非の打ち所はない。

母は食事の準備があるのか、サッと引っ込んだ。二人の男子は、
「ホラ、上がって」と言いながら夕虹ちゃんを手招きする。

「失礼しますっ!」
夕虹ちゃんが敬礼する姿に二人の男子は感動している。

『おおお!』
そうか夕虹ちゃんは一応、軍隊だからな。意外と礼儀正しい。

それにここに居るのは正真正銘の生の夕虹ちゃんだ。私は良く分からないけど男二人にはMDGFをプレイをしているから彼女の似ている雰囲気がよく分かるのだろう。

私は夕虹ちゃんに手を貸す。
「大丈夫?」
「うん」

そのとき再び奥から戻ってきた母は着替えを手にしていた。
「ちょっとあんた、どこかで転んだ?」

確かに改めて玄関で見ると夕虹ちゃんは、あちこち擦り剥けているし学生服みたいな制服も所々破れたり汚れたりしている。
夕虹ちゃんは戦闘していたんだもんね。

「取りあえず上だけでも、これに着替えて」
「有り難う」
母に着替えを手渡されて軽く頭を下げる夕虹ちゃん。改めて見ると本当に金髪がキレイだな。

 その夜は久しぶりに明るい食卓になった。私はGFって何食べるんだろう? ……って思ったけど。見ていると普通に私たちと同じものを食べるようだ。なるほど……こうやって見ると夕虹ちゃんは普通の女の子って感じだ。

 ニコニコと笑っている彼女を見て母親がふと言った。
「何かね、あんた見てるとウチの一番上の女の子を思い出すんだよ」

 私は一番上の姉を知らない。

「そうだな。そういえばそんな感じだな」
父親も同意する。その言葉に兄も、しきりに頷いていた。やっぱり調子の良い奴。私が言わないと仏壇に手も合わせないくせに……本当に分かってるのかな?

「そうなんだ」
夕虹ちゃんは自然に上手に応対している。なんて良い子なんだろうか、兄よりも反応が良い。何だろう……やっぱり母が言うように本当の『お姉さん』って感じがしてくるから不思議だ。

「ご飯のあと、お風呂入る?」
『お風呂?』
夕虹ちゃんと二人の男子が合わせて応える。

『あ……』
二人の男子が顔を見合わせて同時に口を開いた。滑稽だなあ、男子って。

何を言うのかと思って私と母親が見ていると互いに目配せをしてから、まずは父親が言う。
「えっとね、ウチのお風呂は普通の風呂なんだ」

『は?』
私と母親は最初、父が何を言わんとしているのか、よく分からなかった。

それを察したのか兄が補足した。
「えっと多分夕虹さんは怪我してると思うんだけど」

(『さん』付けかよ! 私は内心、突っ込んだ)

「その怪我が自動的に治るとか、そういう修理機能があるような風呂じゃないから」
兄にしては珍しく饒舌だ。いつもその調子で話してくれれば良いのに。

そんな説明を母は不思議そうに聞いている。

「あ、何となくそれ、ワカルっ」
夕虹ちゃんは、ニコニコして二人の男子を指指(ゆびさ)した。

「銭湯みたいな所ね、私も行ったことアルんだ」
なるほど。GFも現実の『お風呂』の違いは分かっているようだ。

半分くらいは会話を理解したように母は私に言った。
「そうだ、せっかくだからあんた一緒に入ってあげな」

「え?」
いきなり振られた私は焦った。

……でも、直ぐに悟った。
「うん」

ここは拒否したら夕虹ちゃんが可哀相だ。

夕虹ちゃんにとって普通の人間のお風呂っていうのも、きっと経験ないよね。
「分かった」

「えっと、お風呂?」
「うん……そう」
私は夕虹ちゃんの反応に合わせてあげた。

「とっても美味しかったです、ご馳走様」
ご飯を食べ終わると夕虹ちゃんは、きちんと手を合わせた。それはゲームキャラとは思えない新鮮さがあった。

私は食事が終わった彼女を、早速お風呂に案内してあげた。何となく廊下をゾロゾロと付いてきたがっている感じの男どもだったが母親が、しっかり目を光らせていた。心強いぞ、お母さん。

脱衣所に入ると私は言った。
「ごめんね、きっとウチの風呂は狭いから」

「ううん、大丈夫っ」
ニコニコして軽く頭を振った夕虹ちゃん。私がカゴを出すと、そこで服を脱ぎ始める。
その慣れた動作に私は思わず聞いた。

「そっか……夕虹ちゃんは軍隊なんだよね」
「そうだよ? 何か変?」
「ううん、食事とか、お風呂とか、いろんな動作が自然に出来るから逆に不思議な感じがして……」

すると彼女は下着姿で微笑んで言った。
「私、今の状況、よく分かっていないんだけど……でも貴女が一緒だと大丈夫だなって気がする。それだけなんだよ」

それを聞いて思わず涙が出てきた。

「どうしたの? どこか悪いの?」
「ううん……嬉しくって」
「大丈夫、アケミはトモダチだから」
「そうだね」
私は涙を拭うと着替え始めた。

 至近距離で見ると、彼女はやっぱりかわいくて美人だ。良いなあ……男子じゃないけど目の保養って言うのかな? 
こうも美人だと私までクラクラしそうだ。お風呂で逆上(のぼ)せないように気をつけよう。

「痛っ!」
下着を脱いだ彼女が小さく叫んだ。もしかしてと思ったけど、やっぱり彼女の体はアザだらけだった。

「痛そう……無理しないで、手伝ってあげようか?」
私が言うと夕虹ちゃんは顔をこわばらせて言った。

「……ゴメンネ、ちょっと引っ張ってくれるっ?」
「うん」
私は彼女の下着を脱ぐのを手伝ってあげた。彼女の白い肌が顕わになるにつれて私は胸が痛くなって来た。
その透き通るような白い肌が赤や紫のアザ、擦り傷だらけなのだ。

やっぱり涙が溢れてきた。
「うっ」

「どうしたっ?」
私が泣き出したのを見て夕虹ちゃんが豊かな胸を晒しながら聞いてくる。

この光景は男子なら至福の時間なのだろうけど……その胸にまでアザがあるのを見て私は耐えられなくなった。
「ごめんなさい……私がバカだったから」

私は居たたまれなくなった。出来れば逃げ出したいけど夕虹ちゃんを脱衣所に置き去りにするわけにもいかない。

すると夕虹ちゃんが私の肩に手を置いた。
「心配しなくても良いよっ」
「……」

何も返事が出来ない私に彼女は覗き込むようにして言った。
「ううんアケミのこと全然、恨んでないっ……私はテートクのものだから」

夕虹ちゃんの優しさに私は涙が止まらなくなった。彼女は優しく言った。
「お風呂、入ろう? さめちゃうよ」
「うん」

多分、私よりは年上だと思う夕虹ちゃん。何だかお姉さんが出来たような不思議な感覚だった。
慣れたら……夕虹ちゃんを『お姉さん』って、呼びたいなと思った。


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※これはオリジナル作品です。
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最新情報はTwitter
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以下魔除け
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