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プロローグ
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「私たち、別れましょう?」
「……えっ?」
ローズマリーの口から出た言葉が理解できなかったのか、テオドール・ノストワール伯爵は間の抜けた声を上げた。
「だから、私たちの婚約を解消しましょうと言っているのよ。……ああ、貴方に与えられた爵位も王宮内での地位も剥奪したりなんかしないわ。それはわたくしの名に誓って保証してあげるから、安心して」
「そんな話をしているんじゃないだろう、ローズ。そんな冗談、面白くもなんともない」
「冗談めかして言っているわけではないわ。わたくし、他に好きな人が出来たの」
「嘘だ……。だって君は、」
そう。嘘だった。テオドールと手っ取り早く別れるために考えた真っ赤な嘘。
これが普通の婚約ならば、こんなふざけた理由で破棄など許されはしないだろう。
けれどもこの婚約は、ローズマリーとテオドールの関係は対等ではない。
ローズマリーが望んだ、ただそれだけの理由で結ばれた婚約なのだから、ローズマリーの一存で解消も出来てしまう。
これはそういう代物だった。
「とにかく、そういうことだから。細かい婚約破棄の内容は書面で送らせるわね。さようなら、テオ」
信じられないという表情のテオドールを前に、ローズマリーは冷たく目を細めた。
テオドールの茫然と見開かれた澄んだ海色の瞳は涙をたたえ、哀れっぽく潤んでいる。
犬のような眼差しだと、ローズマリーは思った。
ローズマリーはそんなふうにテオドールに見つめられるのが、ずっとずっと大嫌いだった。
自分が言った別れの台詞に傷んだ胸を自覚しつつ、ローズマリーはこれでいいのだと自分に言い聞かせる。
不毛な物思いに振り回されるのは、きっともうこれが最後になるだろうと。
「……えっ?」
ローズマリーの口から出た言葉が理解できなかったのか、テオドール・ノストワール伯爵は間の抜けた声を上げた。
「だから、私たちの婚約を解消しましょうと言っているのよ。……ああ、貴方に与えられた爵位も王宮内での地位も剥奪したりなんかしないわ。それはわたくしの名に誓って保証してあげるから、安心して」
「そんな話をしているんじゃないだろう、ローズ。そんな冗談、面白くもなんともない」
「冗談めかして言っているわけではないわ。わたくし、他に好きな人が出来たの」
「嘘だ……。だって君は、」
そう。嘘だった。テオドールと手っ取り早く別れるために考えた真っ赤な嘘。
これが普通の婚約ならば、こんなふざけた理由で破棄など許されはしないだろう。
けれどもこの婚約は、ローズマリーとテオドールの関係は対等ではない。
ローズマリーが望んだ、ただそれだけの理由で結ばれた婚約なのだから、ローズマリーの一存で解消も出来てしまう。
これはそういう代物だった。
「とにかく、そういうことだから。細かい婚約破棄の内容は書面で送らせるわね。さようなら、テオ」
信じられないという表情のテオドールを前に、ローズマリーは冷たく目を細めた。
テオドールの茫然と見開かれた澄んだ海色の瞳は涙をたたえ、哀れっぽく潤んでいる。
犬のような眼差しだと、ローズマリーは思った。
ローズマリーはそんなふうにテオドールに見つめられるのが、ずっとずっと大嫌いだった。
自分が言った別れの台詞に傷んだ胸を自覚しつつ、ローズマリーはこれでいいのだと自分に言い聞かせる。
不毛な物思いに振り回されるのは、きっともうこれが最後になるだろうと。
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