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夜会①
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エリオットとは儀礼的に2曲ほど踊ったあと、すぐ別れるつもりだった。その予定が狂ったのは二人でいるところをエリオットの友人たちに捕まってしまったためだ。
「これが噂のエリオットの婚約者か…」
興味深げな複数の視線に居心地の悪さを感じる。何となく手を身体の正面で握りこんでへらりと笑う。
「か、かわいい…」
「これは堅物のエリオットも落ちるはずだ」
ヴィオラの反応などお構いなしに各々が納得したように頷くさまが、こそばゆくもあり、居た堪れなくもある。顔が熱を持っているから、もしかして真っ赤になっているんじゃないだろうか。
自身の容姿が人並外れて整っていることを、ヴィオラは十二分に理解している。人に注目されたり褒められることはしょっちゅうのことだったし、それがヴィオラの当たり前だった。
けれどこんな風にまじまじと、全くなんの含みもなく純粋に称賛されると、慣れているとは言いつつもどうにも照れてしまうらしい。そんな自分を発見して、ヴィオラは気恥ずかしい思いをした。
自然、救いを求めるようにヴィオラは傍らのエリオットを見上げる。すると、てっきり友人たちに注がれていると思っていたエリオットの視線とまともにかち合って驚いた。
「全く、もう満足しただろう?あまり邪魔をするな」
「えー、お前ばっかりずるいぞ」
エリオットはヴィオラから視線を外すと、呆れ混じりのぶっきらぼうな口調で友人たちを追い払ってくれた。そんなエリオットの様子はヴィオラの目には多少新鮮に映った。
「悪い連中ではないのですが、どうにも配慮が足りない。不快にさせてしまったなら申し訳ありません」
去っていく友人たちの後ろ姿を眺めながら、エリオットは肩をすくめてそう謝罪した。そんな言い回し1つとっても、彼らがエリオットにとってかなり打ち解けた友人であることが伝わってくる。
「いえ、不快だなんて。むしろ私のほうが邪魔をしてしまったのではないでしょうか。もっとお話ししたかったのでは?」
ヴィオラがそう言うと、エリオットは意外だとでもいうように目をまるくした後噴き出した。
「っまさか!貴女を差し置いてあいつらと?冗談じゃない!」
あまりの勢いに今度はこちらが固まってしまう。
「そ、そうなんですね…」
「そうですよ!」
そう言い切ったあと、ヴィオラの戸惑いに気がついてか、エリオットは手の甲で口元を覆ってかすかに頬を赤らめた。
「あぁ、失礼…。まあ確かに、それなりに親しくはしていますが…。たとえ誰が相手であっても、貴女との時間を削るほどではありませんよ」
さらりと告げられた言葉に何と返して良いか判らず、言葉に詰まる。まるで、何よりも大切だと言われているようではないか。そういう風に取れてしまう言い回しだ。
「少し散歩しませんか?夜会の熱気に当てられて、外の空気が吸いたくなってしまいました」
「…ええ」
そんなヴィオラの戸惑いを知ってか知らずか、エリオットは紳士的な顔で腕を差し出す。
少し過剰反応だったかもしれない。きっと婚約者に向ける、ただの社交辞令だったのだろう。エリオットに掴まりながら、ヴィオラは上手くあしらえなかった自身を少し恥ずかしく思った。
「これが噂のエリオットの婚約者か…」
興味深げな複数の視線に居心地の悪さを感じる。何となく手を身体の正面で握りこんでへらりと笑う。
「か、かわいい…」
「これは堅物のエリオットも落ちるはずだ」
ヴィオラの反応などお構いなしに各々が納得したように頷くさまが、こそばゆくもあり、居た堪れなくもある。顔が熱を持っているから、もしかして真っ赤になっているんじゃないだろうか。
自身の容姿が人並外れて整っていることを、ヴィオラは十二分に理解している。人に注目されたり褒められることはしょっちゅうのことだったし、それがヴィオラの当たり前だった。
けれどこんな風にまじまじと、全くなんの含みもなく純粋に称賛されると、慣れているとは言いつつもどうにも照れてしまうらしい。そんな自分を発見して、ヴィオラは気恥ずかしい思いをした。
自然、救いを求めるようにヴィオラは傍らのエリオットを見上げる。すると、てっきり友人たちに注がれていると思っていたエリオットの視線とまともにかち合って驚いた。
「全く、もう満足しただろう?あまり邪魔をするな」
「えー、お前ばっかりずるいぞ」
エリオットはヴィオラから視線を外すと、呆れ混じりのぶっきらぼうな口調で友人たちを追い払ってくれた。そんなエリオットの様子はヴィオラの目には多少新鮮に映った。
「悪い連中ではないのですが、どうにも配慮が足りない。不快にさせてしまったなら申し訳ありません」
去っていく友人たちの後ろ姿を眺めながら、エリオットは肩をすくめてそう謝罪した。そんな言い回し1つとっても、彼らがエリオットにとってかなり打ち解けた友人であることが伝わってくる。
「いえ、不快だなんて。むしろ私のほうが邪魔をしてしまったのではないでしょうか。もっとお話ししたかったのでは?」
ヴィオラがそう言うと、エリオットは意外だとでもいうように目をまるくした後噴き出した。
「っまさか!貴女を差し置いてあいつらと?冗談じゃない!」
あまりの勢いに今度はこちらが固まってしまう。
「そ、そうなんですね…」
「そうですよ!」
そう言い切ったあと、ヴィオラの戸惑いに気がついてか、エリオットは手の甲で口元を覆ってかすかに頬を赤らめた。
「あぁ、失礼…。まあ確かに、それなりに親しくはしていますが…。たとえ誰が相手であっても、貴女との時間を削るほどではありませんよ」
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「少し散歩しませんか?夜会の熱気に当てられて、外の空気が吸いたくなってしまいました」
「…ええ」
そんなヴィオラの戸惑いを知ってか知らずか、エリオットは紳士的な顔で腕を差し出す。
少し過剰反応だったかもしれない。きっと婚約者に向ける、ただの社交辞令だったのだろう。エリオットに掴まりながら、ヴィオラは上手くあしらえなかった自身を少し恥ずかしく思った。
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