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夢の国、現実の世界
しおりを挟む「そんな黒猫はいいからこっちに来なよ!
カワイイ子、いっぱいいるよー」
わたしはチラッとアヤちゃんの顔を見た。
お母さんの言葉が耳に入っていないように表情を一切変えなかった。
「アヤー!こっちに・・・・」
するとアヤちゃんはお母さんの声をさえぎるように話し始めた。
「ねえ、お友達になって」
(え?わたしに言ってる?)
“お友達になって”なんて言われたこと初めて。
わたしなんかと仲良くなっても何もいいことないのに。でもアヤちゃんははっきりとそう言った。
これだけはちゃんと聞こえた。
わたしは「もちろん!」「よろこんで!」と言いたかったけど、何を言おうとしても「ニャア」しか出なそうだったから、声を押し殺してだまっていた。
なんかゴメン。ちゃんと返事できなくて。
でもちゃんと嬉しいから、今、アヤちゃんの目をめちゃくちゃ見つめてるけど、、、わかる、かな?わたしの気持ち?嬉しいっていう気持ち?伝わってるかな?
わたしは、瞳の奥から必死に「伝ワレーーーー!!!」と念を込めて、めいっぱいこの想いを送り続けた。
アヤちゃんはそんなわたしの目をずっと目を見てくれている。
何を思っているのか、何を考えているのか、イマイチわからない。けど、イヤな感じはしない。
ツカツカツカ
「アヤっ!ったく、もうしょうがない子ね、ほら、もうあっち行くわよ」
フワフワのカーペットのはずなのに、苛立っている足音が聞こえてきそうだった。
アヤちゃんにもお母さんの足音が不快に聞こえていたのか、少しだけ眉間にシワを寄せた。
お母さんは、アヤちゃんをぐいっと引っぱって立たせると、そのまま手を引いて、わたしのもとから離れていった。
※ 作者の勝手な都合でここでまあまあの時間が経ちます。
※ 勝手なルールとして猫カフェでは数日、数週間経っていますが、現実の世界では時間がほとんど経過していない設定になっています。
※ たぶんその設定については以前説明した気がするので、ここまでちゃんと読んでいる方はご存知かもしれませんが改めて記載しておきます。
※ 以前説明していなかったらごめんなさい。私のミスです。反省はしません。
猫カフェに放り込まれてから、
あまり良い思い出はない。ほぼ無い。
そんな楽しくない時間が
ずっと続いている気がした。
もうどれくらいの時間が経っているんだろう。
この店で過ごし始めてから、
実は、何度も朝を迎えている。
もはやわたしは猫カフェの猫だ。
2週間?
いや、もうすぐ一ヶ月ぐらい経つのかな?
それぐらいわたしは猫カフェで猫をやっている。
もう、現実の世界、
人間だった世界をたまに忘れてしまうぐらい、
わたしは猫に馴染んでいた。
窓から差し込む光は
ずっと明るいままで
時間の感覚がまったくわからない。
学校の図書館にいたときは放課後だったから、
感覚的には
夕方5時を過ぎてるような気がするけど。。。
ふと、あたりを見回す。
初めてこの猫カフェの部屋を
全体的にじっくり見てみたけど、
この猫カフェにはどこにも時計がなかった。
時間が分からない。
少し不安になった。
いつもあるはずのモノが一つも無いと
心が落ち着かない。
時計ってそんなにわたしにとって
大事なものだったのか、意外な発見。
夢の国に迷い込んだら、こんな感じなのかな。
夢の国のキャラクターになったら、こんな感じなのかな。
いや、違うか。あれはお仕事か。いや、こっちも仕事かもしれないし。
夢の世界も現実の世界も、実は変わりない日常が待っているのかも。
あのネズミも電気代が高くなって困っているかもしれないし、
電車に揺られているサラリーマンも、家では子供の前でパレードをやっているかもしれないし。
なんだろ、世界って。
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