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きなこさん、あんたスゲェよ
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生きづらい猫カフェが、ここには、ある。
猫カフェってあったかい雰囲気しかないと思っていたけど、そうでもないらしい。
その日、わたしが「あんこ」という名でほうりこまれた猫カフェはいつもより混雑していた。
なんでだろ?と思ったら、こっちの世界は三連休だとか(そんなのあるんだ笑。てゆーかここはどんな世界なんだ?日本なのか?そもそも地球なのか?…謎)
家族連れやカップルの姿が目立ち、いつも一人で来ているような常連客は少なく、観光客なども含めて初めてのお客さんで店内は埋め尽くされていた。
意外と人気店なんだな、この猫カフェ。
店の人気に反比例してわたしの心は沈みかかっているのに。
周りが明るくなればなるほど、わたしの心の影が大きくなる。まわりが盛り上がるのがイヤだ。わたしとの差がどんどんひらいていくのがイヤだ。
そんなことを思いながら、わたしはいつもの場所に陣取った。
目に入ってくる光景がいつもと違う。
何本もの足が目の前を動き回り、草木がうじゃうじゃと生えているジャングルに足を踏み入れたよう。
ただ、本物の猫たちにとってはこんな障害物などあってないようなもの。動き回るお客さんの足を天才的な運動神経でかわし、冷静な表情とくねくねとしたセクシーな腰つきですり抜けて行く。
「わたしは無理だな、運動神経ないし。あ、ちがう、運動神経“も”ないし…だ」
わたしと同じ「人間の猫」としてここにほうりこまれた皆んなは、しかし、いつもより張り切っているように見えた。
お客さんが多くてテンションが上がっているのか、普段おとなしくて控えめな性格の佐藤さんもぴょんぴょん跳ねるように店内を動き回っている。
白と黒のハチワレの模様と小さな顔が、いつも以上にキュートに見える。
クールでおとなしい齋藤さんもどこか心躍っているようだった。
そして想像通り、元気キャラのレイちゃんはとんでもないことになっていた。
みんな、ここにきて少しだけ積極的になっている。それにくらべてわたしは、まだ自分のカラを破れない。破らなきゃならないって分かってるけど、それができない。たとえみんなに愛される猫になったとしても。
「わー、超かわいーーー!!!このコ、ヤバーーい!」
声の方を見ると、そこだけたくさんの人が集まっていた。街中に芸能人が現れて、人だかりができているみたいに。
お客さんの視線をひとりじめして、周りを笑顔で埋め尽くしていたのは、きなこさんだった。
お客さんのひざをめがけて軽く後ろ足で立ち上がり、顔をすり付け、ンニャアと甘えて、アピールする。
お客さんがきなこさんに気付くと、1秒間だけ見つめ合って、すぐにぷいっと顔をそむけてどこかへ行ってしまう。
しばらくすると、早足でお客さんのもとに駆け寄ってきて、スネのあたりにガンガンと頭突きをしてスリスリすると、足元でコロンと転がって上目遣いをする。
きなこさんの必殺技「ツンデレスペシャル全部盛り合わせ」だ。
きなこさんはこの技で何人ものお客さんの心をうばい、ナンバーワンにのしあがってきたらしい。
この日も、きなこさんはここぞとばかりに必殺技を見せつけ、お客さんを魅了していた。
きなこさんの向上心はハンパない。猫界接客のプロフェッショナルだ。きなこさんに勝てる猫なんて、他にいないだろう。
みんな猫らしく、自分の世界で自由に生きながら、カワイイと言ってもらえるのを待っている猫がほとんど。それが普通。というより、カワイイなんて言われなくてもご飯さえもらえればいいと思っている。いわば受け身の人生。
「やさしくしてくれたらなつくけど、なんのメリットもない人にわざわざこっちから甘えようなんて気はさらさらないわ」
たいていの猫の気持ちなんてこんなものだ。きなこさんだって最初はそうだったはず。
しかし、きなこさんだけは違った。
不満やグチやワガママを言う前に、自らの行動で何かを掴もうとしている、そんな風に見えた。
何があったんだろ。
ふと、きなこさんの過去が気になった。
猫カフェってあったかい雰囲気しかないと思っていたけど、そうでもないらしい。
その日、わたしが「あんこ」という名でほうりこまれた猫カフェはいつもより混雑していた。
なんでだろ?と思ったら、こっちの世界は三連休だとか(そんなのあるんだ笑。てゆーかここはどんな世界なんだ?日本なのか?そもそも地球なのか?…謎)
家族連れやカップルの姿が目立ち、いつも一人で来ているような常連客は少なく、観光客なども含めて初めてのお客さんで店内は埋め尽くされていた。
意外と人気店なんだな、この猫カフェ。
店の人気に反比例してわたしの心は沈みかかっているのに。
周りが明るくなればなるほど、わたしの心の影が大きくなる。まわりが盛り上がるのがイヤだ。わたしとの差がどんどんひらいていくのがイヤだ。
そんなことを思いながら、わたしはいつもの場所に陣取った。
目に入ってくる光景がいつもと違う。
何本もの足が目の前を動き回り、草木がうじゃうじゃと生えているジャングルに足を踏み入れたよう。
ただ、本物の猫たちにとってはこんな障害物などあってないようなもの。動き回るお客さんの足を天才的な運動神経でかわし、冷静な表情とくねくねとしたセクシーな腰つきですり抜けて行く。
「わたしは無理だな、運動神経ないし。あ、ちがう、運動神経“も”ないし…だ」
わたしと同じ「人間の猫」としてここにほうりこまれた皆んなは、しかし、いつもより張り切っているように見えた。
お客さんが多くてテンションが上がっているのか、普段おとなしくて控えめな性格の佐藤さんもぴょんぴょん跳ねるように店内を動き回っている。
白と黒のハチワレの模様と小さな顔が、いつも以上にキュートに見える。
クールでおとなしい齋藤さんもどこか心躍っているようだった。
そして想像通り、元気キャラのレイちゃんはとんでもないことになっていた。
みんな、ここにきて少しだけ積極的になっている。それにくらべてわたしは、まだ自分のカラを破れない。破らなきゃならないって分かってるけど、それができない。たとえみんなに愛される猫になったとしても。
「わー、超かわいーーー!!!このコ、ヤバーーい!」
声の方を見ると、そこだけたくさんの人が集まっていた。街中に芸能人が現れて、人だかりができているみたいに。
お客さんの視線をひとりじめして、周りを笑顔で埋め尽くしていたのは、きなこさんだった。
お客さんのひざをめがけて軽く後ろ足で立ち上がり、顔をすり付け、ンニャアと甘えて、アピールする。
お客さんがきなこさんに気付くと、1秒間だけ見つめ合って、すぐにぷいっと顔をそむけてどこかへ行ってしまう。
しばらくすると、早足でお客さんのもとに駆け寄ってきて、スネのあたりにガンガンと頭突きをしてスリスリすると、足元でコロンと転がって上目遣いをする。
きなこさんの必殺技「ツンデレスペシャル全部盛り合わせ」だ。
きなこさんはこの技で何人ものお客さんの心をうばい、ナンバーワンにのしあがってきたらしい。
この日も、きなこさんはここぞとばかりに必殺技を見せつけ、お客さんを魅了していた。
きなこさんの向上心はハンパない。猫界接客のプロフェッショナルだ。きなこさんに勝てる猫なんて、他にいないだろう。
みんな猫らしく、自分の世界で自由に生きながら、カワイイと言ってもらえるのを待っている猫がほとんど。それが普通。というより、カワイイなんて言われなくてもご飯さえもらえればいいと思っている。いわば受け身の人生。
「やさしくしてくれたらなつくけど、なんのメリットもない人にわざわざこっちから甘えようなんて気はさらさらないわ」
たいていの猫の気持ちなんてこんなものだ。きなこさんだって最初はそうだったはず。
しかし、きなこさんだけは違った。
不満やグチやワガママを言う前に、自らの行動で何かを掴もうとしている、そんな風に見えた。
何があったんだろ。
ふと、きなこさんの過去が気になった。
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