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はじめまして…じゃない?
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ママだ。
ぼくの目の前にいるのは、
ぼくの目に映っているのはママだ。
少し太ったかな。
久々の再会にぼくは失礼なことを思ってしまった。
「あの…」
ちょっと高い、
でも優しい人柄が溢れる声も
あの時のままだ。
「こんにちは」
ママはまだ警戒していた。
無理もない。
マンションの前で初対面で言葉も交わすことなく、ただただ見つめ合っている。
相手は子供だ。
声をかけるだけ勇気があると思った。
「あの、もしかし……」
「あ、はじめまして」
ぼくも勇気を振り絞って声を出す。
優しい声と被ってしまい、ぽっと顔が熱くなった。
するとママは言った。
「はじめまして…じゃない、ですよね?」
え?
いや、その、ぼく…
ママはぼくのこと
分かってくれてるんだろうか?
それとも、どこかでもぼくみたいな子供を見かけたから、
その子だと思ってるのかも。
ママは優しくて、子供好きだから、どんな子供にも笑顔で接してくれるはず。
分からない。
どうすればいいのかも分からない。
あ、いや、ごめんなさい。
間違えました。
そう言って、ぼくはくるっと振り向くと、その場を足早に立ち去った。
なるべく早く、
でもヘンに思われないように
スタスタと離れていった。
振り返りたいけど振り返れない。
ママはどんな顔をしてるんだろう?
悲しい顔をしていたら嫌だ。
だから、絶対後ろを見ないように
ぼくは前だけを見て、去っていった。
角を曲がると
ダッシュでとにかく遠くへ走った。
ママの家からなるべく遠くへ。
優しさを振り切るように走った。
ズタッ!
「あらあら、大丈夫かい、ぼく」
はい。すいません。
転倒したぼくに
おばあちゃんが声をかけてくれた。
その優しさが邪魔だった。
かまわないで欲しい。今は。
いろいろゴチャゴチャになった頭の中をきれいにしたい。何から手をつけていいのか分からないほど散らかった気持ちをひとりでゆっくりと誰にも邪魔されない場所で整理したかった。
・
・
「はじめまして…じゃない、ですよね?」
また、あの公園にやってきたぼくは
ママの言葉がずっと心に引っかかっていた。
はじめましてじゃない。
その通りだ。
でも、昔とは違う。
ぼくはもう猫じゃない。
小学生の男の子だ。
どこにでもいる子供だ。
この姿では、はじめましてのはず。
なのに、会ったことがあるようにママは言った。
どういう意味だったんだろう。
ぼくはとても聞いてみたかった。
・
・
数時間後、陽も落ち、カラスが鳴きはじめた頃、ぼくはもう一度、あのマンションの前にいた。
ぼくの目の前にいるのは、
ぼくの目に映っているのはママだ。
少し太ったかな。
久々の再会にぼくは失礼なことを思ってしまった。
「あの…」
ちょっと高い、
でも優しい人柄が溢れる声も
あの時のままだ。
「こんにちは」
ママはまだ警戒していた。
無理もない。
マンションの前で初対面で言葉も交わすことなく、ただただ見つめ合っている。
相手は子供だ。
声をかけるだけ勇気があると思った。
「あの、もしかし……」
「あ、はじめまして」
ぼくも勇気を振り絞って声を出す。
優しい声と被ってしまい、ぽっと顔が熱くなった。
するとママは言った。
「はじめまして…じゃない、ですよね?」
え?
いや、その、ぼく…
ママはぼくのこと
分かってくれてるんだろうか?
それとも、どこかでもぼくみたいな子供を見かけたから、
その子だと思ってるのかも。
ママは優しくて、子供好きだから、どんな子供にも笑顔で接してくれるはず。
分からない。
どうすればいいのかも分からない。
あ、いや、ごめんなさい。
間違えました。
そう言って、ぼくはくるっと振り向くと、その場を足早に立ち去った。
なるべく早く、
でもヘンに思われないように
スタスタと離れていった。
振り返りたいけど振り返れない。
ママはどんな顔をしてるんだろう?
悲しい顔をしていたら嫌だ。
だから、絶対後ろを見ないように
ぼくは前だけを見て、去っていった。
角を曲がると
ダッシュでとにかく遠くへ走った。
ママの家からなるべく遠くへ。
優しさを振り切るように走った。
ズタッ!
「あらあら、大丈夫かい、ぼく」
はい。すいません。
転倒したぼくに
おばあちゃんが声をかけてくれた。
その優しさが邪魔だった。
かまわないで欲しい。今は。
いろいろゴチャゴチャになった頭の中をきれいにしたい。何から手をつけていいのか分からないほど散らかった気持ちをひとりでゆっくりと誰にも邪魔されない場所で整理したかった。
・
・
「はじめまして…じゃない、ですよね?」
また、あの公園にやってきたぼくは
ママの言葉がずっと心に引っかかっていた。
はじめましてじゃない。
その通りだ。
でも、昔とは違う。
ぼくはもう猫じゃない。
小学生の男の子だ。
どこにでもいる子供だ。
この姿では、はじめましてのはず。
なのに、会ったことがあるようにママは言った。
どういう意味だったんだろう。
ぼくはとても聞いてみたかった。
・
・
数時間後、陽も落ち、カラスが鳴きはじめた頃、ぼくはもう一度、あのマンションの前にいた。
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