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猫が体験入店するってよ
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今から10日ほど前のこと。
稚拙な華やかさだけでウェイウェイ盛り上がったクリスマスも刹那に終わりを告げ、
あと数日で営業も終了するという年の瀬、
40過ぎの背脂ギタギタまみれのオーナーは
意気盛んに言い放った。
「明日から体入(体験入店のこと)の子が入ってきます」
はっ?体入?だからナニ?
店の女の子を全員を集めて
オーナー自らこんな風に宣言するのは初めてだった。普通ならその辺のボーイの男の子や
嬢同士の会話で知るような、
情報源が定かではない些細な挨拶みたいな体入情報。
それをわざわざ全員集めてオーナーが登場する。
ナニこの違和感。
「まぁ、女の子といっても女の子じゃないんだけど。あ、女の子だけどね。アハハ」
誰もツッコまない。
一応オーナーだから突っ込めない。
ボーイも愛想笑いと苦笑いのミックスでお茶を濁す。
「えー、ということで、何を言いたいかというと、
女の子の猫ちゃんを雇いたいと思ってます」
はっ?
その瞬間、私の顔は犬のウンコを踏んだような顔をしていたはず。眉間のシワが四十路のソレになる。
「ちなみに猫ちゃんは3歳の女の子です」
知らんがな。
眉間のシワが戻らないまま、
私は心で突っ込んだ。
周りの女の子たちは
「えー!?マジで?ヤバくない?」と
ギャル特有の反応をしながら、
頭の空っぽが透けて見えるようなリアクションに従事していた。
「実はこの前、猫カフェに行った時に思ったんです。これってキャバクラだなと。女の子も猫ちゃんもどちらも可愛い。そして、キャバクラも猫カフェもどちらも楽しい。だったら、キャバクラに猫がいてもいいんじゃないかなと思ったんです」
前々から思っていたが、
猫の話をするとオーナーの饒舌は止まらない。
胡散臭いニヤつき顔もご健在のようだ。
マジだ。これはマジだ。
私の店が、変わろうとしている。
「ということで、明日から真っ白なフワフワの猫ちゃんがみんなの仲間に入りますので、仲良くしてやってください。名前?うーん、考えてなかったなー」
オーナーのニヤニヤがネチャネチャという音がしそうなほど生々しい気持ちわるさに変わる。
「じゃあクリームちゃんで!
明日からクリームちゃんをよろしくお願いします」
我が子が入店するかのような勢いで
オーナーは頭を下げた。
190センチ近い巨塔が
頭を下げる姿を見たのも初めて。
頭頂部に少しだけオアシスがあった。
初めて見たオーナーの、か弱き部分。
私はなんとなくほっこりした。
「はじめまして。よろしくお願いします」
店に入ってきたオーナーの腕から
ピョンと軽やかに舞い、
真紅の絨毯の上に
フカッという上品な着地音とともに降り立った彼女が丁寧に挨拶をした。
カノジョから数メートルの距離を置き、
店にいた女の子全員で取り囲む。
当然女の子たちは一様に驚いた表情。
しかしそれも一瞬で消え去ると
スマホの群れが大挙して押し寄せ、
即席の撮影会が始まってしまった。
「マジ、かわいー」
「クリームちゃん、こっちこっち」
「なんか喋って」
女の子たちのインスタに
クリームちゃんのストーリーズが
次々とUPされていく。
ここまでは平和だった。
ここまでは。
稚拙な華やかさだけでウェイウェイ盛り上がったクリスマスも刹那に終わりを告げ、
あと数日で営業も終了するという年の瀬、
40過ぎの背脂ギタギタまみれのオーナーは
意気盛んに言い放った。
「明日から体入(体験入店のこと)の子が入ってきます」
はっ?体入?だからナニ?
店の女の子を全員を集めて
オーナー自らこんな風に宣言するのは初めてだった。普通ならその辺のボーイの男の子や
嬢同士の会話で知るような、
情報源が定かではない些細な挨拶みたいな体入情報。
それをわざわざ全員集めてオーナーが登場する。
ナニこの違和感。
「まぁ、女の子といっても女の子じゃないんだけど。あ、女の子だけどね。アハハ」
誰もツッコまない。
一応オーナーだから突っ込めない。
ボーイも愛想笑いと苦笑いのミックスでお茶を濁す。
「えー、ということで、何を言いたいかというと、
女の子の猫ちゃんを雇いたいと思ってます」
はっ?
その瞬間、私の顔は犬のウンコを踏んだような顔をしていたはず。眉間のシワが四十路のソレになる。
「ちなみに猫ちゃんは3歳の女の子です」
知らんがな。
眉間のシワが戻らないまま、
私は心で突っ込んだ。
周りの女の子たちは
「えー!?マジで?ヤバくない?」と
ギャル特有の反応をしながら、
頭の空っぽが透けて見えるようなリアクションに従事していた。
「実はこの前、猫カフェに行った時に思ったんです。これってキャバクラだなと。女の子も猫ちゃんもどちらも可愛い。そして、キャバクラも猫カフェもどちらも楽しい。だったら、キャバクラに猫がいてもいいんじゃないかなと思ったんです」
前々から思っていたが、
猫の話をするとオーナーの饒舌は止まらない。
胡散臭いニヤつき顔もご健在のようだ。
マジだ。これはマジだ。
私の店が、変わろうとしている。
「ということで、明日から真っ白なフワフワの猫ちゃんがみんなの仲間に入りますので、仲良くしてやってください。名前?うーん、考えてなかったなー」
オーナーのニヤニヤがネチャネチャという音がしそうなほど生々しい気持ちわるさに変わる。
「じゃあクリームちゃんで!
明日からクリームちゃんをよろしくお願いします」
我が子が入店するかのような勢いで
オーナーは頭を下げた。
190センチ近い巨塔が
頭を下げる姿を見たのも初めて。
頭頂部に少しだけオアシスがあった。
初めて見たオーナーの、か弱き部分。
私はなんとなくほっこりした。
「はじめまして。よろしくお願いします」
店に入ってきたオーナーの腕から
ピョンと軽やかに舞い、
真紅の絨毯の上に
フカッという上品な着地音とともに降り立った彼女が丁寧に挨拶をした。
カノジョから数メートルの距離を置き、
店にいた女の子全員で取り囲む。
当然女の子たちは一様に驚いた表情。
しかしそれも一瞬で消え去ると
スマホの群れが大挙して押し寄せ、
即席の撮影会が始まってしまった。
「マジ、かわいー」
「クリームちゃん、こっちこっち」
「なんか喋って」
女の子たちのインスタに
クリームちゃんのストーリーズが
次々とUPされていく。
ここまでは平和だった。
ここまでは。
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