どうやら転生したようで、今生では悪役令嬢辞めて自由に暮らしたいので婚約解消をしてください~空いた席にはカップを置いてはいけない~(ホラー編)

綾月百花   

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第四章

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 リリアンが斬首刑された3月が来た。



 巻き戻しの術が成就して、リリアンは生きている。



 お茶を並べている間に、紅茶の中にアウローラが現れてしまう。



 三人一緒に椅子に座って、お茶を並べないと、アウローラを排除することができない。



 その事からも、アウローラはまた転生してきていると思える。



 シェルが時々、辛そうに腕を回している。



 何かの呪いがかけられていないのか、心配だ。



 シェルとグラナードは、卒業を控えていて、このままアウローラの呪いが続くのかと不安に思っていた。



 そんな時だった、生徒会室の扉がノックされた。




「はい」




 緊張した兄が扉を開けると、そこには、長老が立っていた。




「アウローラが迷惑をかけている」




 長老は深く頭を下げた。




「長老は蘇ったのですか?」




 兄は聞いた。




「アウローラの呪いが解けなかった時は蘇ると魔術をかけていた。あのままくたばってもいいと思っていたが、孫の尻拭いはしてから死ななくては死んでも死にきれないので」



「部屋の中にどうぞ」



「お邪魔します」




 長老はシェルの前まで歩くと、深く頭を下げて、呪文を唱える。



 すると、シェルの横にアウローラの姿が立っていた。




「あら、シェル様。見つかっちゃったわ」




 アウローラは嬉しそうに微笑んだ。



 シェルは、顔を蒼白にして、固まった。



 リリアンは、身動きできなかった。



 正直、ここまで付き纏われると、気持ちが悪い。



 相手は、死者だ。



 アウローラは制服姿で、シェルに腕を絡めている。




「殿下、肩が重かったであろう?」



「ああ、どうして重かったのか、よく分かった」



「触れますが、宜しいか?」



「ああ、頼む」




 長老は、シェルの額に触れて呪文を唱えた。



 その瞬間、アウローラの姿は綺麗に消えた。




「肩が、やっと軽くなった」



「孫が迷惑をかけた」



「アウローラは、何か仕掛けを残したのですか?」



「ああ、燃えた家の床下に転生の魔方陣を残していた。完全に焼け落ちずに、復活しておる」



「すぐに、あの家に行こう」



「お兄様、お祖母様をお願いします」



「ああ」




 グラナードは、屈み込むと老婆を負ぶった。




「すまぬな」



「いいえ、行きましょう」



 シェルと老婆を負ぶったグラナード、リリアンはアウローラが住んでいた焼け残った家に向かった。




 +




 老婆は、焼け落ちて朽ちた家の前に立つと、その家に火をつけた。



 青白い炎があがる。




(やめて、燃やさないで)




 アウローラの思念が聞こえる。




(シェル様、お慕いしておりました)



「おまえなど、少しも好きではなかった。早くあの世に逝け」



(シェル様、シェル様、死にたくない……)




 家は灰の欠片もなくなって、アウローラの思念も聞こえなくなった。




「あの子は、もう復活しないでしょう。魔術の品は全て消えました」



「ありがとうございます」



「私もここで死ぬか。この老いぼれは、一人になってしまった」



「お婆様、それは駄目ですわ。せっかくの第二の人生ですもの。生きてください。生きて、残りの人生を謳歌してください」



「そうだ。この先、またアウローラが現れては困る。父上に住処を探していただこう」



「また我が家に来ていただいてもいいのですよ」



「そうですわ。お兄様の言うとおりですわ」




 リリアンは、老婆の背中を励ますようにさする。



 グラナードは、そっと屈んだ。




「さあ、馬車まで行きましょう」



「すまぬな」




 グラナードは、老婆を背負って馬車に戻った。



 馬車は王宮に戻り、陛下と謁見して、事の騒ぎが落ち着いたことを報告した。



 老婆は、老婆の家ができるまで、ツールハイト公爵家で預かる事になった。



 老婆はたいそう喜んで、この国と王家、国王、殿下、ツールハイト公爵家、グラナード、リリアンの健康と繁栄を願った。



 魔術を使える老婆は、王家の管轄下に置かれることになっている。王宮の敷地内に小さな離れを造って、そこで一生を遂げることになった。



 呪いが解けて、やっと紅茶を入れてもアウローラの顔や指が出てくることはなくなった。けれど、空いた席にお茶は置かなくなった。



 死者がお茶の前に座らないようにと、エパシオ王国での決まりになった。

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