11 / 93
第1章
11 新たなブルーリングス王国
しおりを挟む
翌日、レイン辺境伯は国の一部を見せてくれると言って、朝から出かける事になった。
アニーがせっかく来てくれたけれど、ゆっくりお話をする時間もなく、出かける事になった。
馬車に乗って、私の隣にレイン辺境伯が座り、私の手を握っている。
手を握られる事に慣れていない私は、緊張して、手汗が出てきてしまう。それでも、構わず、レイン辺境伯は、私の手を握っている。
その表情は楽しげで、手を振り払うことはできない。
宮殿から少し離れた所に民家があり、その近くに畑が見える。
「この畑には、我々が食べる食料も植わっているが、薬草も植わっている。この地は、農民が多くいた。その農民に、土壌改良を頼んで、薬草を育ててもらっている」
「どこもかしこも畑ですわね」
「ああ、できれば、いろんな薬草を育てて、付加価値を付けて、売り出そうかと考えている」
「では、ブルーリングス王国の産業は、農地ですの?」
「農地も勿論、重要な産業であるが、この土地には、昔から鉱山がある。金山と宝玉の取れる鉱山がある。その金や宝玉を使って、宝飾品を作っている職人もいる。その者には、そのまま宝飾品を作ってもらっている。戦争も落ち着いたので、鉱山の採掘も再開した」
「まあ、凄いわ」
「病院があるから、薬草の研究所も作り、病人の受け入れもしていこうかと考えている」
「中央都市の看護師募集は、戦争の怪我人の処置ではなく、病人の看護でしたのね」
「ああ、まだ、人数が足りないから、病院としての機能は果たしてはいないが。近い将来、研究所と病院を開院させる予定でいる。ここは、空気もいい。療養にも丁度いい。医師は中央都市の病院で研修を行っている。腕のいい医師が来てくれるだろう」
レイン辺境伯は、これからのブルーリングス王国について話してくれる。
この辺境区は、村が20個くらいしかないが、とにかく農地になる土地が広い。山もあるから、湧き水に恵まれ、田畑に水が行き渡る。
足りないとしたら、華やかな物くらいだ。
けれど、田舎には田舎にしかないものがある。
綺麗な空気に、長閑な環境、静かな夜。
病気を治しに療養するとしたら、これ以上の環境はいらない。
後は、美味しい食事くらいだろう。
宮殿の料理は、中央都市の邸の食事より美味しいし、高級レストランと同等かそれ以上の味がした。
私は決して贅沢はしてきてはいないが、それでも貴族の娘なので、パーティーもお茶会も出ていたし、邸のシェフは一流と言われていた店から引き抜いてきた者だった。
寮生活で、私の生活水準は、ぐっと底辺まで下がったけれど、それでも、今まで食べてきた味を忘れることはないと思う。
きっと宮殿でも、シェフの育成などをしているのではないかと思うの。
「宮殿の食事も美味しいわね?」
「ああ、療養所を作るなら、美味しい物を食べさせなければならない。宮殿には、大勢の料理人がいる。一流のシェフを集めている」
やっぱり、思った通りだったわ。
私はにっこり笑う。
レイン辺境伯は、お顔を赤くしている。
お心は純情な方のようだ。
「ニナ、触れることを許せ」
私が返事を返す前に、私はすっぽりと抱きしめられていた。
微かに香るトワレの香りは、昨日はしていなかった。
今日のために、お洒落をしてきてくれたのだろう。
爽やかな香りを吸って、私は初めて、レイン辺境伯の背中に腕を回した。
「ニナ、愛してる」
目元に、初めてのキスが落ちた。
触れるだけの、優しいキスだ。
顔を上げると、レイン辺境伯は、私を真っ直ぐに見つめている。
私もその視線から、目を離せない。
それほど熱い眼差しだった。
「ニナ」
彼は、私の名を呼びながら、私に口づけをした。
触れて、離れていく。
私が嫌がらないように、気を遣っているのがよく分かる。
でも、私はこんなに優しいキスをされたことはなかった。
比較は良くないと思う。けれど、元夫も私にこんな口づけをくれた事はなかった。
私は心のままにレイン辺境伯に抱きついていった。
「本当に私だけを想ってくれるのね?」
「ああ、そのつもりだ。ニナしか考えられない」
「好きです」
「その言葉、嘘だとは言うな?本気にするぞ?」
「はい、こんな優しいキスをされた事もありません」
「ずっと優しいだけではないぞ?」
レイン辺境伯は、私を抱き寄せると、先ほどとは違う口づけをした。
舌が絡まり、唾液が行き交う。
まるで、今から抱かれてしまうのかしら?と思えるほどの激しい口づけをしてきた。
けれど、嫌ではなかった。
愛おしい。
と、感じられる。
抱いて欲しい。
このまま一つになってしまいたいと思えるほど、私はレイン辺境伯の事が好きになっていた。
唇が離れていく。
私はレイン辺境伯に抱きついた。
「それほど、抱きついていたら、自制が効かなくなるよ?抱いてしまってもいいの?」
「レイン辺境伯、レインフィールド様、私を妻にしてください。私、貴方をどうしようもなく好きになってしまったのです。貴方に抱かれたい」
「ニナ、それは本心だな?抱いてもいいのか?」
「はい」
「ならば、今夜、閨を供にしよう」
「はい」
私から誘ってしまった。
恥じらいがなかったかしら?
今更、恥ずかしくなる。
私が生娘ではないと分かっていても、私はもうずいぶん、男性と抱き合ってなどいない。
「やっぱり、恥ずかしいわ」
「今更、聞かぬ」
馬車が止まって、扉がノックされる。
「開けてくれ」
「はい」
馬車を走らせていたのは、私を迎えに来た頬に傷のあるアルク・ブクリエ侯爵です。
彼は、レイン辺境伯の直属の護衛。
ニクス王国の国王陛下からの指示で、レイン辺境伯の護衛を命じられた人だ。
「さあ、おいで」
「はい」
レイン辺境伯は、私の手を引き、馬車を降りる。
ここは何処かしら?
大きな建物が建っている。
「ここは、先ほど話した装飾品の卸問屋だ。どんな宝玉が取れるか見ておく必要があるであろう?」
「ええ、そうね。私、この土地の事をよく学ぶわ。一緒に国を作れるように、努力します」
「そうか」
レイン辺境伯は、綺麗な笑みを浮かべた。
「では、参ろう」
しっかり手を繋がれ、建物の中に入って行く。
「レイン辺境伯、よくおいでくださいました」
「良い品が揃っております。ゆっくりご覧ください」
一階には、職人がいた。机に向かって、装飾品を作っている。
「皆の者、しっかり美しい物を頼む」
「はい」
職人達が返事をした。
職人達の数は、50名ほどいるような気がする。
細かい作業をルーペをかけてしている。
手元には、細かな作業をするための器具が並べられていて、それを使いながら、手作業で美しい装飾品を作っている。
金は指輪の形やネックレスのチェーンになっている。
宝石は、ブルーからグリーンの物が多くあった。
私は、宝石を持ってはいない。
結婚も早かった上に、元夫はプレゼントをくれなかった。
どちらにしろ、もらった物は返してきたのだから。
どうして、あんな男と結婚などしていたのだろう。
溜息が漏れてしまいそうになる。
この土地に、これほどの宝石が取れる鉱山があるのは、まさに宝の山だ。
レイン辺境伯は、皆を労いながら、二階へと上がっていく。
二階には、宝石を管理している男達が、10人ほどいた。
「レイン辺境伯、いらっしゃいませ。ご用件の物は、こちらに用意してあります」
「ああ、ありがとう」
男が一人、案内に立った。
奥の個室に案内された。
机の上に、いろんな宝石が並んでいる。
「結婚指輪は、どれにするか?髪留めも幾つか選んでもいい。ネックレスも、何でも選んでくれていい」
「それなら、結婚指輪はいただきますわ。できたら、レイン辺境伯と同じ物がいいかと思うのですが」
「そうであるか?」
レイン辺境伯は、机の上に並べられた宝石を手に取ると、案内の男に手渡していく。
男の手には、ベルベッドの布が張られた宝石箱が持たれている。
「ニナ、気に入ったら、手に取りなさい」
「ええ」
返事はしたけれど、何がいいのか、迷う。
初めて見る大量な宝石に、腰が引けてしまう。
先ほどは、ブルーとグリーンの宝石が目に付いたが、並んでいる宝石は、赤や紫、様々な色の物や、透明な物もある。
純粋に美しい。
そういえば、リリーは宝石をたくさん持っていたなと思い出す。
リリーは男性に、よくプレゼントをもらっていた。
やはりモテる何かがあるのだろうか?
髪の長さであろうか?
奇抜に短くしていたのは、リリーだけだった。
私の髪は美しいだろうか?
白銀の髪は、雪のように、色を吸収してしまう。
私の髪留めは、金の金具でできている。
シンプルで、どんな洋服にも合うから、学校に入学したときにお父様に買って戴いた。
これほどの色の宝石は初めて見た。
私はレイン辺境伯の後を歩いて行く。
今日は珍しい物を見せてもらえてよかった。
「ニナ、選んだか?」
「美しい物を見せて戴きました」
立ち止まったレイン辺境伯に、笑顔でお礼を言う。
「結婚指輪だが、我が国の物がいいと思う。気に入った物はあるか?」
「頂けるのなら、私は瞳と同じ色の物が欲しいです」
「瞳と同じならお揃いにできる」
レイン辺境伯に付き添っていた男が、机に宝石箱を置いた。
そこから、レイン辺境伯は、私の言った通りの指輪を幾つか取り出した。
「手を」
「はい」
レイン辺境伯は、幾つか選んだ指輪を一つずつ指にはめていく。
「気に入ったのはあったかな?」
指を見ていた私は、レイン辺境伯を見た。
「俺は、これが気に入ったのだが、どうだ?」
「私もそれが気に入りました」
それは、本当に瞳の色とよく似た石の付いた指輪だった。
「俺の指は、これかな?」
私に選んだ指輪より、一回り大きな指輪をはめて、私に見せてくる」
「どうだ?」
「とても似合っています」
「そうであろう」
その二個は、別の宝石箱に入れられた。
その後に、レイン辺境伯はレイン辺境伯が目にとまった物を私に着けていく。
私は硬直していた。
だって、宝玉が大きいのよ?
ネックレスも何種類も、指輪も追加で、髪留めは、いろんな宝石が着いた物をたくさん選んでくださいました。
「今日はこれくらいで、どうだ?」
「こんなにたくさん、いいのですか?」
「まだ値段も付けていない物だ。これは山からのプレゼントだな」
「レイン辺境伯、ありがとうございます。私、宝石は持ってなかったの」
レイン辺境伯は、微笑んだ。
「まずは、これを」
レイン辺境伯は、最初に決めた結婚指輪を私にはめた。
「結婚してくれ」
「はい」
指輪を渡してから、結婚を申し込むのは逆だけれど、もう何度も求婚されているから、そんな些細なことはどうでもよかった。
「宝石で、気に入った物は、なかったのか?」
「この指輪が気に入ったの」
「他は?宝石は幾らでもある。欲しければ、ここに来て、持って行っていい」
私は首を左右に振った。
それでは意味がない。
勝手に持って行ったら、泥棒と変わらない。
「プレゼントは、レイン辺境伯から頂きたいの」
「それなら、そうしよう」
「レイン辺境伯、ありがとうございます」
「こんな時くらい、名前を呼べ。それか、ニナもレインと呼ぶか?」
「呼んでもいいの?」
「これからレインと呼ぶこと」
「はい」
私が返事をするとレインは嬉しそうに微笑んだ。
「早速、呼んでみてくれ」
「レイン、私を試すような事はなさらないで?」
「試してはいないぞ。うん、愛称でもまあいいだろう。名前も長ったらしい」
「大切なお名前ですわ。レインフィールド様、レインと呼ばせて戴きますけれど、そのお名前も私は好きになりましたわ」
「ああ、ニナが可愛すぎる。この場で押し倒して、俺の物にしたい」
「レイン、そんな事を仰ったら、恥ずかしいわ」
「ニナ、ニナ、直ぐに帰ろう。今夜の夕食は早めに済ませよう」
私は恥ずかしくて、顔に熱が溜まっていく。
夕食が終わったら、レインに抱かれるの?
男性に抱かれることは初めてではないけれど、私の元夫は、私をあまり抱かなかった。
性欲がない殿方もいるのかと思っていたが、リリーと抱き合うために制御していたのなら、私を抱くことは、きっと義務だったのだろう。
月に一度、あるかどうか?
新婚にしては少ないとは思っていたが、リリーと抱き合っていたなら、性欲もそちらで満たされますわね。
全く、思い出しただけで、屈辱的ですわ。
「ニナ、嫌か?」
私は首を左右に振った。
昔のことは、早めに忘れた方がいい。
レインに抱かれたら、昔のことなど忘れてしまうに違いない。
アニーがせっかく来てくれたけれど、ゆっくりお話をする時間もなく、出かける事になった。
馬車に乗って、私の隣にレイン辺境伯が座り、私の手を握っている。
手を握られる事に慣れていない私は、緊張して、手汗が出てきてしまう。それでも、構わず、レイン辺境伯は、私の手を握っている。
その表情は楽しげで、手を振り払うことはできない。
宮殿から少し離れた所に民家があり、その近くに畑が見える。
「この畑には、我々が食べる食料も植わっているが、薬草も植わっている。この地は、農民が多くいた。その農民に、土壌改良を頼んで、薬草を育ててもらっている」
「どこもかしこも畑ですわね」
「ああ、できれば、いろんな薬草を育てて、付加価値を付けて、売り出そうかと考えている」
「では、ブルーリングス王国の産業は、農地ですの?」
「農地も勿論、重要な産業であるが、この土地には、昔から鉱山がある。金山と宝玉の取れる鉱山がある。その金や宝玉を使って、宝飾品を作っている職人もいる。その者には、そのまま宝飾品を作ってもらっている。戦争も落ち着いたので、鉱山の採掘も再開した」
「まあ、凄いわ」
「病院があるから、薬草の研究所も作り、病人の受け入れもしていこうかと考えている」
「中央都市の看護師募集は、戦争の怪我人の処置ではなく、病人の看護でしたのね」
「ああ、まだ、人数が足りないから、病院としての機能は果たしてはいないが。近い将来、研究所と病院を開院させる予定でいる。ここは、空気もいい。療養にも丁度いい。医師は中央都市の病院で研修を行っている。腕のいい医師が来てくれるだろう」
レイン辺境伯は、これからのブルーリングス王国について話してくれる。
この辺境区は、村が20個くらいしかないが、とにかく農地になる土地が広い。山もあるから、湧き水に恵まれ、田畑に水が行き渡る。
足りないとしたら、華やかな物くらいだ。
けれど、田舎には田舎にしかないものがある。
綺麗な空気に、長閑な環境、静かな夜。
病気を治しに療養するとしたら、これ以上の環境はいらない。
後は、美味しい食事くらいだろう。
宮殿の料理は、中央都市の邸の食事より美味しいし、高級レストランと同等かそれ以上の味がした。
私は決して贅沢はしてきてはいないが、それでも貴族の娘なので、パーティーもお茶会も出ていたし、邸のシェフは一流と言われていた店から引き抜いてきた者だった。
寮生活で、私の生活水準は、ぐっと底辺まで下がったけれど、それでも、今まで食べてきた味を忘れることはないと思う。
きっと宮殿でも、シェフの育成などをしているのではないかと思うの。
「宮殿の食事も美味しいわね?」
「ああ、療養所を作るなら、美味しい物を食べさせなければならない。宮殿には、大勢の料理人がいる。一流のシェフを集めている」
やっぱり、思った通りだったわ。
私はにっこり笑う。
レイン辺境伯は、お顔を赤くしている。
お心は純情な方のようだ。
「ニナ、触れることを許せ」
私が返事を返す前に、私はすっぽりと抱きしめられていた。
微かに香るトワレの香りは、昨日はしていなかった。
今日のために、お洒落をしてきてくれたのだろう。
爽やかな香りを吸って、私は初めて、レイン辺境伯の背中に腕を回した。
「ニナ、愛してる」
目元に、初めてのキスが落ちた。
触れるだけの、優しいキスだ。
顔を上げると、レイン辺境伯は、私を真っ直ぐに見つめている。
私もその視線から、目を離せない。
それほど熱い眼差しだった。
「ニナ」
彼は、私の名を呼びながら、私に口づけをした。
触れて、離れていく。
私が嫌がらないように、気を遣っているのがよく分かる。
でも、私はこんなに優しいキスをされたことはなかった。
比較は良くないと思う。けれど、元夫も私にこんな口づけをくれた事はなかった。
私は心のままにレイン辺境伯に抱きついていった。
「本当に私だけを想ってくれるのね?」
「ああ、そのつもりだ。ニナしか考えられない」
「好きです」
「その言葉、嘘だとは言うな?本気にするぞ?」
「はい、こんな優しいキスをされた事もありません」
「ずっと優しいだけではないぞ?」
レイン辺境伯は、私を抱き寄せると、先ほどとは違う口づけをした。
舌が絡まり、唾液が行き交う。
まるで、今から抱かれてしまうのかしら?と思えるほどの激しい口づけをしてきた。
けれど、嫌ではなかった。
愛おしい。
と、感じられる。
抱いて欲しい。
このまま一つになってしまいたいと思えるほど、私はレイン辺境伯の事が好きになっていた。
唇が離れていく。
私はレイン辺境伯に抱きついた。
「それほど、抱きついていたら、自制が効かなくなるよ?抱いてしまってもいいの?」
「レイン辺境伯、レインフィールド様、私を妻にしてください。私、貴方をどうしようもなく好きになってしまったのです。貴方に抱かれたい」
「ニナ、それは本心だな?抱いてもいいのか?」
「はい」
「ならば、今夜、閨を供にしよう」
「はい」
私から誘ってしまった。
恥じらいがなかったかしら?
今更、恥ずかしくなる。
私が生娘ではないと分かっていても、私はもうずいぶん、男性と抱き合ってなどいない。
「やっぱり、恥ずかしいわ」
「今更、聞かぬ」
馬車が止まって、扉がノックされる。
「開けてくれ」
「はい」
馬車を走らせていたのは、私を迎えに来た頬に傷のあるアルク・ブクリエ侯爵です。
彼は、レイン辺境伯の直属の護衛。
ニクス王国の国王陛下からの指示で、レイン辺境伯の護衛を命じられた人だ。
「さあ、おいで」
「はい」
レイン辺境伯は、私の手を引き、馬車を降りる。
ここは何処かしら?
大きな建物が建っている。
「ここは、先ほど話した装飾品の卸問屋だ。どんな宝玉が取れるか見ておく必要があるであろう?」
「ええ、そうね。私、この土地の事をよく学ぶわ。一緒に国を作れるように、努力します」
「そうか」
レイン辺境伯は、綺麗な笑みを浮かべた。
「では、参ろう」
しっかり手を繋がれ、建物の中に入って行く。
「レイン辺境伯、よくおいでくださいました」
「良い品が揃っております。ゆっくりご覧ください」
一階には、職人がいた。机に向かって、装飾品を作っている。
「皆の者、しっかり美しい物を頼む」
「はい」
職人達が返事をした。
職人達の数は、50名ほどいるような気がする。
細かい作業をルーペをかけてしている。
手元には、細かな作業をするための器具が並べられていて、それを使いながら、手作業で美しい装飾品を作っている。
金は指輪の形やネックレスのチェーンになっている。
宝石は、ブルーからグリーンの物が多くあった。
私は、宝石を持ってはいない。
結婚も早かった上に、元夫はプレゼントをくれなかった。
どちらにしろ、もらった物は返してきたのだから。
どうして、あんな男と結婚などしていたのだろう。
溜息が漏れてしまいそうになる。
この土地に、これほどの宝石が取れる鉱山があるのは、まさに宝の山だ。
レイン辺境伯は、皆を労いながら、二階へと上がっていく。
二階には、宝石を管理している男達が、10人ほどいた。
「レイン辺境伯、いらっしゃいませ。ご用件の物は、こちらに用意してあります」
「ああ、ありがとう」
男が一人、案内に立った。
奥の個室に案内された。
机の上に、いろんな宝石が並んでいる。
「結婚指輪は、どれにするか?髪留めも幾つか選んでもいい。ネックレスも、何でも選んでくれていい」
「それなら、結婚指輪はいただきますわ。できたら、レイン辺境伯と同じ物がいいかと思うのですが」
「そうであるか?」
レイン辺境伯は、机の上に並べられた宝石を手に取ると、案内の男に手渡していく。
男の手には、ベルベッドの布が張られた宝石箱が持たれている。
「ニナ、気に入ったら、手に取りなさい」
「ええ」
返事はしたけれど、何がいいのか、迷う。
初めて見る大量な宝石に、腰が引けてしまう。
先ほどは、ブルーとグリーンの宝石が目に付いたが、並んでいる宝石は、赤や紫、様々な色の物や、透明な物もある。
純粋に美しい。
そういえば、リリーは宝石をたくさん持っていたなと思い出す。
リリーは男性に、よくプレゼントをもらっていた。
やはりモテる何かがあるのだろうか?
髪の長さであろうか?
奇抜に短くしていたのは、リリーだけだった。
私の髪は美しいだろうか?
白銀の髪は、雪のように、色を吸収してしまう。
私の髪留めは、金の金具でできている。
シンプルで、どんな洋服にも合うから、学校に入学したときにお父様に買って戴いた。
これほどの色の宝石は初めて見た。
私はレイン辺境伯の後を歩いて行く。
今日は珍しい物を見せてもらえてよかった。
「ニナ、選んだか?」
「美しい物を見せて戴きました」
立ち止まったレイン辺境伯に、笑顔でお礼を言う。
「結婚指輪だが、我が国の物がいいと思う。気に入った物はあるか?」
「頂けるのなら、私は瞳と同じ色の物が欲しいです」
「瞳と同じならお揃いにできる」
レイン辺境伯に付き添っていた男が、机に宝石箱を置いた。
そこから、レイン辺境伯は、私の言った通りの指輪を幾つか取り出した。
「手を」
「はい」
レイン辺境伯は、幾つか選んだ指輪を一つずつ指にはめていく。
「気に入ったのはあったかな?」
指を見ていた私は、レイン辺境伯を見た。
「俺は、これが気に入ったのだが、どうだ?」
「私もそれが気に入りました」
それは、本当に瞳の色とよく似た石の付いた指輪だった。
「俺の指は、これかな?」
私に選んだ指輪より、一回り大きな指輪をはめて、私に見せてくる」
「どうだ?」
「とても似合っています」
「そうであろう」
その二個は、別の宝石箱に入れられた。
その後に、レイン辺境伯はレイン辺境伯が目にとまった物を私に着けていく。
私は硬直していた。
だって、宝玉が大きいのよ?
ネックレスも何種類も、指輪も追加で、髪留めは、いろんな宝石が着いた物をたくさん選んでくださいました。
「今日はこれくらいで、どうだ?」
「こんなにたくさん、いいのですか?」
「まだ値段も付けていない物だ。これは山からのプレゼントだな」
「レイン辺境伯、ありがとうございます。私、宝石は持ってなかったの」
レイン辺境伯は、微笑んだ。
「まずは、これを」
レイン辺境伯は、最初に決めた結婚指輪を私にはめた。
「結婚してくれ」
「はい」
指輪を渡してから、結婚を申し込むのは逆だけれど、もう何度も求婚されているから、そんな些細なことはどうでもよかった。
「宝石で、気に入った物は、なかったのか?」
「この指輪が気に入ったの」
「他は?宝石は幾らでもある。欲しければ、ここに来て、持って行っていい」
私は首を左右に振った。
それでは意味がない。
勝手に持って行ったら、泥棒と変わらない。
「プレゼントは、レイン辺境伯から頂きたいの」
「それなら、そうしよう」
「レイン辺境伯、ありがとうございます」
「こんな時くらい、名前を呼べ。それか、ニナもレインと呼ぶか?」
「呼んでもいいの?」
「これからレインと呼ぶこと」
「はい」
私が返事をするとレインは嬉しそうに微笑んだ。
「早速、呼んでみてくれ」
「レイン、私を試すような事はなさらないで?」
「試してはいないぞ。うん、愛称でもまあいいだろう。名前も長ったらしい」
「大切なお名前ですわ。レインフィールド様、レインと呼ばせて戴きますけれど、そのお名前も私は好きになりましたわ」
「ああ、ニナが可愛すぎる。この場で押し倒して、俺の物にしたい」
「レイン、そんな事を仰ったら、恥ずかしいわ」
「ニナ、ニナ、直ぐに帰ろう。今夜の夕食は早めに済ませよう」
私は恥ずかしくて、顔に熱が溜まっていく。
夕食が終わったら、レインに抱かれるの?
男性に抱かれることは初めてではないけれど、私の元夫は、私をあまり抱かなかった。
性欲がない殿方もいるのかと思っていたが、リリーと抱き合うために制御していたのなら、私を抱くことは、きっと義務だったのだろう。
月に一度、あるかどうか?
新婚にしては少ないとは思っていたが、リリーと抱き合っていたなら、性欲もそちらで満たされますわね。
全く、思い出しただけで、屈辱的ですわ。
「ニナ、嫌か?」
私は首を左右に振った。
昔のことは、早めに忘れた方がいい。
レインに抱かれたら、昔のことなど忘れてしまうに違いない。
16
あなたにおすすめの小説
王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした
まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。
貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。
現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。
人々の関心を集めないはずがない。
裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。
「私には婚約者がいました…。
彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。
そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。
ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」
裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。
だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。
彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。
次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。
裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。
「王命って何ですか?」と。
✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。
藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。
「……旦那様、何をしているのですか?」
その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。
そして妹は、
「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と…
旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。
信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全8話で完結になります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱えて、離縁をつきつけ家を出た。
そこで待っていたのは、
最悪の出来事――
けれど同時に、人生の転機だった。
夫は、愛人と好きに生きればいい。
けれど、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
彼女が選び直す人生と、
辿り着く本当の幸せの行方とは。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる