【完結】もう我慢できません、貴方とは離縁いたします。その夫は、貴方に差し上げます。その代わり二度と私に関わらないでちょうだい。

綾月百花   

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第2章

58 お触れ

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 ニクス王国に第三王子が生まれて、お名前が発表された。

『ゴードン・ニクス王子、3900gの元気な王子で、白銀の髪に、ブルーアイである』

 配られた新聞に、写真とご様子が書かれていた。

 私はレインに、微笑んだ。


 王家で、この色を持ち生まれてきた王子に、ブルーリングス王国が救われた。

 国王陛下は、新聞記事に、かつて滅亡したブルーリングス王国の話を載せた。白銀で、宝石のように美しい青色の瞳を持つ。ニクス王国の友好国で、互いに姫を嫁がせた時代もあった。

 ブルーリングス王国は、夜襲に遭い、逃亡できた者はニクス王国に逃げ込み、ニクス王国は、ブルーリングス王国と血を分かち合い、ニクス王国の民も、ブルーリングス王国の血筋を持ち、白銀の髪にブルーアイの子が生まれる。

 ブルーリングス王国は辺境区に国を復興させた。

 ニクス王国が王家の血筋を守り、ブルーリングス王国の血筋を現す王子と王妃が誕生した。

 ブルーリングス王国は、ニクス王国と友好国であり、戦場であった土地を、隣国ブリッサ王国と友好国になり平和条約を結び、自然豊かな土地に総合病院と療養所を作った。友であるニクス王国の民の療養。移住を歓迎している。

 国王陛下は、ブルーリングス王国の存在と復活したブルーリングス王国が療養所を開いていること。

 ニクス王国とブルーリングス王国は、かつて姫を嫁に出して、王家でもそれぞれの色を現すことを発表した。

 ゴードン王子が、その存在を教えた。

 両国の遺伝子が混ざっている事を現した。

 色が違うと避難するのは、差別であり社会問題である。

 ニクス王国は差別を与えた者に罰を与える。

 今でも、両国は友好国であり、美しい色を分け合った。

 と、国王陛下の談話が発表された。

 ○月○日、ニクス王国第一王子エイドリックとエミリア・ビッフェル公爵令嬢
 ブルーリングス王国、レイン辺境伯とニナ・アイドリース伯爵令嬢
 両国の繁栄を祝し、合同結婚。調印式を行う。
 ニクス王国の国王陛下退位、エイドリック・ニクス即位式
 エミリア・ビッフェル公爵令嬢王妃即位
 レイン辺境伯即位、ニナ・アイドリース伯爵令嬢即位
 王宮にて即位式を行う。



 新聞の号外の末に、即位式の予定が書かれていた。

 どうやら、ニクス王国の国王陛下は、この際、退位をし、エイドリック王子を即位させるつもりのようだ。

 仕事もエイドリック王子が殆どしているので、国王陛下はゴードン王子と遊んで過ごしたいと言っているそうです。

 他にも子供がいますので、子供も健やかに育ちます。

 エイドリック王子は、王宮にエミリア様を招待した。

 妹達は、「いらっしゃいませ」とお辞儀をして去って行きます。

 あら?もしかしたらエミリア様を苦手に思っているのかしら?

 私も緊張してきた。

 エミリア様は黄金のような黄色いドレスを身につけておりました。

 髪の色はリリーと同じ色です。

 高く結い上げた髪には、ドレスと同色の大きな宝石で飾られております。

 結い上げても長い髪は、もしかしたら、髪を下ろしたら、床を擦ってしまうかもしれません。

 エミリア様は、私より少し身長が低いのよ。

 もしかしたら、髪の長さを競い合っているのかしら。


「エイドリック」と言って、エイドリック王子に抱きつきました。


 まあ、ご立派なドレスです。

 黄金に見えるドレスには、黄色の布に金糸で刺繍もされています。

 キラキラですね。

 対する私はいつもの水色のドレスに、髪色の髪留めをしております。

 今日は特にパーティーがあるわけではありません。

 ちょっとお茶会でもしようと思っただけです。

 レインは眩しそうにしておいでです。


「エミリア、なんだか今日は眩しいドレスを身につけているんだね」

「だって、久しぶりにエイドリックに会えるんですもの。嬉しくて、気合いも入ってしまいますわ」

「今まで通りでいいのだよ?」

「だって、私は王妃になるのでしょう?お父様もお母様も栄誉なことだと言って、ドレスも持ち物もピカピカにしているわ」

「ピカピカは止めた方がいい。民衆の心象を考えるならば、ニナ妃のような控え目なドレスがいいと思うよ」


 エミリア様が私を見たので、ご挨拶をしようと思いました。


「ご」

「地味よ!」


 私はレインのお顔を見ました。

 今日はレインとシャツの色がお揃いなのです。

 見えるのは襟の少しだけですが、それがお洒落だと思っておりますの。

 初対面なので、ご挨拶したいのですが、無視されています。

 レインが私の手を握って、サロンに向かいます。


「私、仲良くできるかしら?」

「できるだろう?俺は苦手だが」


 私は笑ってしまった。自分は苦手なのに、私には友達になれとは?


「根拠は何処にありますの?」

「さて、部屋に付いた。今日は俺が茶を淹れてみるか?」


 するっとはぐらかされたようです。

 言いたくないのなら、言いたくなるまで待てばいいですわ。

 私も暢気になったようです。


「レインのお茶は美味しいですから、大好きです」

「俺の事も大好きだな?」

「当然です」

 茶葉を蒸らしている間に、キスを交わす。

 扉がノックされたので、キスの時間は終わりです。

 入って来たエイドリック王子は、キラキラなエミリア様をエスコートしておりませんでした。

 二人はドレスの色のことで言い合っておりました。

 お話を聞いてみると、私の髪が白銀で瞳も宝石を纏った姿なので、宝石を纏っていないエミリア様は、せめてドレスを派手にしようと思ったそうです。


 困りましたね。


 私の髪色も瞳の色も生まれつきなのですわ。

 髪の長さが私の方が長いとおっしゃっても、私の髪の長さは、貴族の一般的な長さなので、これ以上、短くするとみっともなくなりますのよ。


「私は、あの方の引き立て役ですの?」

「あの方ではなく、レインの隣にいるのは、レインと結婚しているニナ妃だよ。もう結婚をしているけれど、民衆にお披露目をするために、一緒に結婚式をするんだ。俺はレインと、ずっと昔に、一緒に結婚式を挙げると約束していたからな。それは、エミリアにも話しているだろう」

「ウエディングドレスは、どんなドレスですの?私、あの子より地味だったら結婚式を挙げないわ」

「あの子ではなく、ニナ妃だと言っているだろう」


 レインがお茶を分けてくれた。

 きっちり四人分だ。

 危ないので、エイドリック王子とエミリア様から少し離して置いてあるところは、さすがいつも一緒にいるだけある。


「レイン、どんなウエディングドレスだ?」

「普通のウエディングドレスだよ。でも、とてもニナに似合っていたけどね」

 私はレインが淹れてくれた紅茶を飲んでいる。

 この王宮も高級な茶葉を使っているのね。

 香りよくお味も美味しいわ。ちょっと熱いけれど、レインのお茶は特別なの。

 それにしても、こんなに聞き分けのない子供みたいなエミリア様を愛しているのね。

 私は疲れてしまいそうよ。

 エミリア様のドレスを見ていたら、目がチカチカしてきた。


「ドレスを見せて」

 私は聞き流すことに決めた。


「ドレスを見せて!」

 エミリア様が紅茶を飲んでいる私の肩を揺さぶった。



「熱い!」

 紅茶がドレスの上に零れて、熱いお茶が太股を濡らした。



「ニナ!」

 レインが、私の前にいるエミリア様を、エイドリック王子の方に押すと、私の手からカップを取り、テーブルに置いた。直ぐに私を抱き上げて走って行く。


「全く、エイドリックは趣味が悪い。行儀もなっていない。あれが王妃になるのか?」

「ちょっと心配ね」

「ああ、心配だ、火傷してないか?」

「もう大丈夫よ。レインの愛情のこもったお茶ですもの」

 私は、ちょっと心配だった。

 今日のお茶は、いつもよりも熱かった。

 太股がヒリヒリする。

 火傷しちゃったかしら?

「イリスに見てもらうか?」

「今日はいたかしら?」


 イリスは病院と私の部屋を行き来している。

 新薬を作っていると言っていた。

 忙しいのだ。

 私の部屋に戻ってきても、レポートを書いている。

 私の侍女だけれど、私の刀傷の傷薬を作り、塗っているだけだ。

 マリアは、髪洗い専属のラソとお話をしています。

 ラソは、私をお風呂に入れるだけですから、仕事の分担がしっかりしています。

 お出かけの時はシュロが一緒に来てくれます。

 宮殿で私がレインと出かけているときは、護衛騎士だけになっています。

 二人きりでデートをする邪魔はしません。

 でも、今日は、一緒にいてくれたらよかったのにと思うのです。

 レインが焦っています。

 火傷は早く流水につけた方がいいのです。

 レインは私の部屋まで、私を抱き上げたまま走ると、ドレスを脱がせていきます。

 息を乱していないのが不思議です。

 いつも鍛えているからできる芸当かしら?

 私の侍女達が戸惑っています。

「どうなさいました?」といきなりドレスを脱がせているレインにマリアが尋ねた。

「火傷をした!直ぐに冷やせ」

 レインは、珍しく声を上げた。


「それは、大変です」


 お風呂場担当のラソが、風呂場に入っていきました。

 それから、シャワーで水を出し始めました。

 私は、産着で作られた下着を着ただけで、スカートもない恥ずかしい姿でシャワーを当てられています。


「どの辺りでしょうか?」

「えっと」


 わたしは、自分の太股を指で指す。

 白い太股も、赤くなっていた。

 水疱まではできてないので、少し薬を塗ればよくなってきそうね。

 でも、


「エイドリック、許さん!」とレインは怒っています。

「寒いわ」


 下半身を水で冷やされ、体温が下がってくる。

 シュロがストールで、私の上半身をくるんでくれた。

 レインは、私の太股を見ている。


「医師を呼べ」

「はい」とマリアが部屋から出て行きました。


 エイドリック王子と喧嘩はして欲しくはないのよ。

 国の大事な行事があるというのに、困ったわね。

 痛くないと嘘をついても、太股は赤くなっているし、火傷だと分かってしまうわね。

 治療をしないと肌にシミができてしまう。

 太股なので、人に見せる場所でなかったことは救われましたわ。

 30分ほど水浴びをしたら、すっかり冷えてしまったわ。

 医師も来たようですので、マリアが慎重に肌を拭いてくれました。

 乾いた下穿きと交換して、上着の下着も交換されました。

 シュロがストールを何枚も持ってきて、上半身も上手く洋服のように作ってくださいます。

 最後に、ウエストにストールを巻き、私の手を引いてくださいます。

 レインは部屋にいるようです。


「痛みますか?」

「ええ、少し」


 私は医師の前に座って、火傷をした太股をストールの間から出した。

 イリスも病院から戻ってきました。

 医師とイリスの視線とレインの視線が、私の頼りない太股を見ている。

 医師とイリスが相談している。


「薬を調合して参ります」と、イリスは病院に戻っていきました。

「火傷である」と医師は、言わなくても分かることを宣言した。

「薬を朝と夜に塗ってください。それから風呂の湯は、いつもよりも冷たくしてください」

「承知しました」とラソが答えた。

「どれくらいで治る?」

「水ぶくれまではなっておりませんので、火傷のレベルは1度、軽傷でございます。通常、数日の間に、治ると思います。傷跡も一般的に残りません」と、医師が簡潔に答えた。


 今日の医師は、若い医師でした。

 宮殿の近くに、宮殿と同じ規模の総合病院があり、王宮担当医が待機しているそうだ。

 シュロはストールで、足を隠してくださいました。


「よかったわ」

 大事にならなくて。


「摩擦はよくありませんので、薬の上から包帯を巻きます」

「分かりましたわ」

「一応、完治するまで、毎日、回診を致します」

「あら、もう治ったも同然でしたのに」

「ニナ、まだ薬も塗ってはおらん。医師の言うことは聞くように。その美しい御足に傷でも残ったら、許さん」


 もう、困ったわね。

 医師の肩が、ビクンと跳ねた。

 許さないのは、医師ではないわよ。

 きっとエイドリック王子の方でしょう。

 私は、台風の前触れのような溜息をついた。
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