【完結】もう我慢できません、貴方とは離縁いたします。その夫は、貴方に差し上げます。その代わり二度と私に関わらないでちょうだい。

綾月百花   

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第4章

88 出産

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 お腹が痛む。

 レインに会いたい。

 赤ちゃんは、お腹の下の方まで押されて出てきているので、陣痛が始まれば、出産までは早いでしょうと言われたのに、まだ赤ちゃんは産まれてこない。

 陣痛の合間に、うつらうつらと眠りがやってくるが、陣痛が始まると、眠気は飛んで腹を抱える。

 その時、病室の扉が開いた。

「ニナ、無事か?」とレインの声がした。

 レインがここにいるはずはない。

 幻聴が聞こえるほど、レインに会いたいのかしら?

 そう思ったら、レインの顔が、私を覗き込んでいた。


「レイン?本当に?」


 レインはマリアと位置を代わり、私の腰を撫でてくれる。


「間に合って良かった。ブリッサ王国の国王陛下がお産は命がけだから、会いに行けと言ってくれたのだ。薬草は俺の近衛が届ける役目を買って出てくれた」

「レイン、怖いの。お腹にアルフォード王子が乗っかって、急に痛くなってしまったの」

「国王陛下から話しは聞いた。大丈夫だ。ちゃんと産まれてくる」


 私は何度も頷いた。


「次の陣痛で力んで」と医師が言った。


 私はレインの手を握って、力んだ。

「ハアハアハアハア」と呼吸が苦しい。

「ニナ、頑張れ」とレインが、私の背中を撫でてくれる。


 陣痛が来て、また力む。レインの手を握って、医師が「長く力んで」と言う言葉に従った。


「ニナ、産まれた」とレインが言った。

「よく頑張った」と褒めてくれる。


 けれど、赤ちゃんは泣いていない。


「レイン、私の赤ちゃんは?どうして泣かないの?」

 死んでしまったの?

 アルフォード王子がお腹に乗ってから、赤ちゃんは動かなくなった。


「今、医師が治療をしている」


 私は何度も頷いた。


「生きて、生きて。死なないで」


 泣いている私をレインが抱きしめてくれる。

 マリアもシュロもラソも、みんな何も言わない。

 私の赤ちゃんが泣かない。

 死なないで、生きて。

 赤ちゃんの産声が聞こえた。

 最初は小さな声だったのに、だんだん大きな産声になった。

 マリアとシュロ、ラソが「おめでとうございます」と言った。


「生きている」

「ああ、生きているよ」

「見せて」と言うと、医師が赤ちゃんを見せてくれた。


 髪は白く、瞳はブルーアイを持った男の子だった。


「赤ちゃんに骨折はないようです。今、診察しましたが、現在は異常が見付かりません。子供に踏まれたので、後ほど、しっかり診察します」と医師が言った。

「お願いします」と私とレインの声が重なった。


 医師が赤ちゃんを抱かせてくれた。

 ゴードン王子よりも小さな赤ちゃんだけれど、きちんと生きている。

 その事が嬉しかった。


「レインにそっくりな男の子よ」

「ありがとう。ニナ。この子は、ブルーリングス王国の第一王子だ」

「そうね。名前を考えなくちゃ」


 医師が赤ちゃんを連れて行った。

 産湯につけに行ったのだろう。

 私のお産の始末も、きちんとされた。

 マリアが汗を拭ってくれる。

 レインは私の手を握ってくれている。


「ニナ王妃、おめでとうございます」とアルクが言った。

「アルク、ありがとう。それから、レインを連れてきてくれてありがとう。すごく心細かったの」


 アルクは一つ頷いた。


「お子は、ブルーリングス王国の最初のお子であるから、王として見届ける義務がある。それに、王妃を一人で、放置しておけば、王妃に愛想を尽かされてしまうと言ったら、手紙を送った翌日に、中央都市に向かっておりました。王妃が妊娠中は、レインフィールドは一生懸命に国を造っておりました。私が証人になりますので、お側にいなかったことを許してくだされば、嬉しく思います」


 アルクは私がレインを怒って、喧嘩でも起こさないように配慮をしてくれている。

 レインは、そうね?

 何度も私を独りぼっちにした前科があるから、心配しているのだろう。


「レイン、王子を産んだご褒美をください」

「何が欲しいのだ?」

「キスと私にお小遣いを少しでいいのでください」

「また、小遣いを渡すのを忘れていたな」

「はい。公園の草むしりは、赤ちゃんを抱えてできないので」

「必ず、今度こそ忘れないよ」と言いながら、キスをくれた。

 産湯に浸かった赤ちゃんは、アリスさんの造った産着を着て私の部屋に連れてこられた。

 私のベッドの横に寝かされて、私は横になったままで赤ちゃんを見る。

 綺麗なブルーアイをして、綺麗な白銀です。

 目は二重で、赤ちゃんらしい愛らしいお顔をしています。


「可愛いわ」


 レインも優しいお顔をしています。


「レイン、抱いてもいいですよ」

「今はニナが抱いておればいい。痛かったご褒美だ。無事に産まれて良かった。アルフォード王子がニナの腹に座ったと聞いたときは、もしかしたらと不吉な想像をしたが、元気な子で良かった」

「私も怖かったの。お腹で赤ちゃんが動かなくなったから」


 レインは赤ちゃんを抱いた私ごと抱きしめてくれた。


「レイン、皆にお披露目をしてください」

「そうだな」


 レインは赤ちゃんを抱いて、まずアルクに見せた。

 アルクの後は、私の侍女達に見せた。

 皆さん、可愛いと言ってくれた。

 ゴードン王子より、一回り小さな王子だ。

 けれど、私が産んだ赤ちゃんの方が、何倍も可愛い。

 レインが赤ちゃんを抱いている姿を見て、私は安心した。

 二人の愛の結晶。まず一人目だ。

 ホッとして、私は少し眠ったようだ。

 目を開けると、お兄様とサーシャとレアルタがいた。

 国王陛下と王妃様と姫様に混じって、アルフォード王子がいた。


「ニナ妃、ごめんなさい」

「怒ってはいません。でも、お部屋で走り回っていて危ないですね?」

「もう部屋で走ったりしません」


 アルフォード王子が紳士らしく、お辞儀をした。

 私はアルフォード王子を責めたりしない。


「ニナ妃、予定より早い出産になってしまった。息子が迷惑をかけた。すまなかった」と国王陛下と王妃が頭を下げた。

「私もノックだけで、部屋に入ったので、注意不足でした」


 互いにしこりは残してはいけないので、私も頭を下げた。

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