【完結】もう我慢できません、貴方とは離縁いたします。その夫は、貴方に差し上げます。その代わり二度と私に関わらないでちょうだい。

綾月百花   

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第4章

92 辺境区へ

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 侍女はマリアとラソがブルーリングス王国に来てくれる事になった。

 荷物を積んだ馬車は五台と多い。私とレイン、ウェントゥスと三人が乗った馬車とルーナとルーナの子守役の二人が乗った馬車が一台、私の侍女が乗った馬車が一台。8台の馬車が王宮の前に並んでいる。

 安全の為に、国王陛下は王宮騎士団から50名ほどの騎士を護衛に付けてくれた。


「ニナお姉様、お元気で」

「ニナ、元気でな」


 サーシャとお兄様がお見送りに来てくれた。レアルタは、「僕も旅立ちの準備をします」と私に言ってくれた。


「レアルタ、待っています」

「はい」


 レインは、国王陛下とエイドリックと別れの挨拶をしております。


「ニナ妃、元気でな」

「国王陛下、エイドリック王子、お世話になりました」


 私も頭を下げました。


「名残惜しいですが、出発をします」とレインは頭を下げた。

 馬車の扉が左右とも閉められた。

「出発だ!」と国王陛下の声がした。

 騎士が先頭を守る。ゆっくり馬車が動き出した。

 私はお兄様達に手を振る。

 馬車は改造をして、ウェントゥスが眠ったら、寝かせることができるようにベッドが置かれている。

 ルーナの馬車も同じだ。

 ベッドで遊べるようにしてある。眠れば、そのまま眠ることもできる。

 ウェントゥスとルーナは、約一年歳が離れている。

 正式な誕生日は分からないが、保護されたときは、新生児だったので、きっと産まれて直ぐに誘拐されたのだろう。

 両親は名乗り出なかったが、国王陛下は自分が作った名簿で目星をつけて訪ねていった。

 だが、両親は既に国を出たようだった。

 邸には、赤子のベッドが設置されていたので、確かであろう。

 伯爵家の姫であった。

 一斉取り締まりで捕らえられて、国外追放になっていた。

 国王陛下の調べでは、ブルーリングス王国の王妃の妹の三女の娘の子を祖先に持つであろうと聞かされた。

 私とレインは、敢えて、本当の両親のことを詳しく調べなかった。

 ルーナは、ルーナでいいと思った。

 将来、耳に入って傷つくことがないように、ルーナの子守役、私の侍女、この事を知る騎士にもルーナの出自は秘密にするようにと箝口令が出された。

 ルーナが親のことを知りたくなった時の為に、ルーナの父とレインが知り合いで、両親は病で亡くなったと嘘の出自を作った。

 血を分けた家族ではないが、ルーナは生まれた時から家族であると伝えるつもりだ。 

 将来、ウェントゥスにブルーリングス王国の色を持つ乙女が現れなかった時に、伴侶になれるように配慮もして、育てていくつもりでいる。

 ブルーリングス王国の純粋な血を持つ者は、少ない。

 お兄様は、血を残してくださった。

 レインは、国王陛下が調べた祖先のノートを写して、同じ物を持っている。

 追加の者が見つかれば、互いに共有される。

 国王陛下は、貴族のブルーリングス王国の血筋を持つ者に、できる限り、血を穢さずに残していくように話すと言っていた。

 ブルーリングス王国が誕生して、王家が継続して血を残す事ができるように力を貸してくれている。

 有り難いことだと、私はレインと話した。

 旅は順調に進んでいる。

 ブルーリングス王国に近づくにつれ、気温が低くなっていく。

 ウェントゥスとルーナに風邪を引かせないように、着る物で温度調節をして、自分達も上着を着たり毛布を着たりと身体を冷やさないようにした。

 馬で走ってくれている騎士も防寒具に着替え、寒くないように気をつけている。

 途中、宿で宿泊しながら、やはり3週間ほどで辺境区に到着した。

 騎士が守る馬車の長さは長い。宿場町でも見学している者が多かったが、辺境区でも民が外に出て手を振っているようだ。

 子供達は馬車を追いかけて、危ないから親に止められている。

 寒いので、窓は開けてはいないが、声がする。

 馬車は静かに宮殿の門の中に入って行った。馬車が止まったので、下りる支度をする。

 ウェントゥスが寒くないように、ウェントゥスを毛布でくるみ抱き上げる。

 扉が開けられると、冷たい風が馬車の中に入ってくる。

 レインは先に下りると、ウェントゥスを受け取ってくれた。

「王妃様、お手をどうぞ」とアルクが手を差し出してくれた。

「ありがとう」と、アルクの手を借りて、馬車を降りる。


 目の前には、宮殿の前庭がある。振り向けば、背の高い砦が見える。

 一見変わってないように見える宮殿も見上げる。

 砦の上からも、宮殿の外からも拍手が聞こえてきた。

 レインがウェントゥスを持ち上げている。

 走って追いかけてきた民も拍手をしている。

 馬車から降りたルーナの姿もお披露目になった。

 どちらもブルーリングス王国の色を持っている。

 レインが手を振り、私も手を振って、宮殿の中へと入った。


「宮殿の中は暖かいのね」

「ああ、暖房器具を最新の物に変更させた。全ての部屋ではないが」とレインが言った。

「皆さん、レインの帰りを待っていたのね?」

「ニナとウェントゥスの帰りを待っていたのだ」

「そうなの?辺境区にレインがいないと寂しいと思っていたのよ」

「こんな歓迎は受けた事もない」

「あら、そうなの?」


 ウェントゥスがぐずってきて、私はレインからウェントゥスをもらう。

 ウェントゥスは、私が母乳をあげているからか、私の腕の中が落ち着くようで、抱っこは私がしている。

 可愛いので、手放したくないのもある。

 宮殿の中に抱かれたルーナも入って来た。

 ルーナは子守が何度も変わっているので、抱っこしてくれる人がいればおとなしい。

 手間はかからないが、可哀想でもある。

 言葉も遅いので、言葉も教えていかねば、将来に響く。

 宮殿に勤めている者達が集まってきて、拍手をしてくれている。


「レイン辺境伯、王妃様お帰りなさいませ。第一王子の誕生、おめでとうございます」とレインの近衛騎士の代表が言葉にした。

「ありがとう。第一王子の名はウェントゥスという。皆、よくしてくれ。もう一人、ブルーリングス王国の姫を連れてきた。両親は病にて亡くなり、王宮にて保護していた姫だ。名はルーナという。ルーナもブルーリングス王国の血統を受け継いでいる。その時が来るまで、娘として育てるつもりでいる。皆、よろしく頼む」


 集まった者が拍手をした。

 その拍手の中を、レインは私の背中を支えながら歩いて行く。

 レインの近衛騎士が、ルーナの部屋を子守役に案内している。

 ウェントゥスは目をまん丸にしている。

 ビックリして、泣こうとしたが、泣くタイミングを逃したようだ。

 ウェントゥスは、私にしがみついている。

 階段は、落とさないように気をつけながら、レインも私を支えてくれている。

 私達は夫婦の部屋に入っていった。

 ルーナには、日当たりの良い部屋を与えた。

 ウェントゥスも時期がこれば、一人部屋になることを考えて配置をした。

 厩も大きくしたので、王宮から来た騎士達も馬を繋げるであろう。

 急いだ旅だったこともあるので、宮殿で休んでもらうつもりでいる。

 部屋は余るほどあるので、皆に行き渡るであろう。

 その夜は宴会になった。ご馳走が並び、お酒もふるまわれた。

 私は食事だけして、部屋に戻った。

 ウェントゥスを見てくれていたマリアとラソを食事に行かせる。

 今日は特別な料理が出ているので、食べてくるといいと思った。


「ですが、王妃様のお風呂がまだです」

「大丈夫よ。今日はお祝いをしているのよ。食事も特別な物が出ているわ。ルーナをこの部屋に連れてきて、皆と行ってくるといいわ」

「ご配慮、ありがとうございます」とマリアとラソが頭を下げた。


 そうして、ルーナが連れてこられた。


「ママよ。ママと言ってみて」


 ルーナに語りかけると、ルーナは「ママママ」と真似る。

 頭が悪いとか知恵が遅れている訳ではない。

 王宮では、そう言う者もいたが、ルーナは構ってもらえなかっただけだ。


「ママよ」と言って、抱きしめると、「ママ」と言って抱きしめてくる。


 離乳食を食べているが、ルーナにも乳を与えた。

 ルーナはしがみついてきて、乳を飲んでいる。

 しっかり飲むと、安心したように眠ってしまった。

 抱き上げて、背中をさすると、小さなゲップがでた。

 ベッドに寝かせて、ぐずりだしたウェントゥスを抱き上げる。

 おしめを替えて、乳を与える。

 幸い、乳は良く出る。

 ウェントゥスにも「ママよ」と教える。

 まだウェントゥスは言葉を話せないが、じっと私を見ている。


「可愛いウェントゥス」と頭も撫でる。


 ウェントゥスも眠ってしまった。

 私の部屋も夫婦の部屋も暖房がかかっている。

 電気で部屋を暖めているようだ。

 暖炉もあるが、暖房で暖かい。

 電気が急に止まった時に直ぐに切り替えられるように、暖炉の準備もされている。

 ウェントゥスを抱っこして、背中をさする。大きなゲップが出て、思わず私が笑顔になる。

 なんと愛らしいか。

 ルーナを奪われた母親は、さぞかし辛かったであろう。

 どこかで生きていて欲しい。そうして、ルーナの兄弟を産んで欲しい。

 きっとルーナを奪い返すために、賭博会場にいたはずだ。

 国王陛下は、捕らえた者を全て処罰してしまった。

 きっと泣く泣く、ルーナを手放したのだろう。

 誘拐かもしれない。

 他に兄弟はいなかった。血を残すために結ばれた夫婦だったはずだ。

 見付かれば、この地に住んで欲しい。

 正式な血族は少ない。

 どうして、あの時、国王陛下に願い出なかったのだろう。

 私も居たはずだ。

 でも、私は怪我をして、入院してしまった。

 ウェントゥスが助かって、ホッとしてしまったのだ。

 顔を殴られた痛みに、苦しんでいて、心に余裕がなかったのです。

 どうして、国王陛下に我が子ですと、申し出てくれなかったのだろう。

 産み落として、まだ身体も癒えてないのに、国を出て、何処に行ってしまったのだろう。

 諦めることができたのだろうか?

 私はウェントゥスを抱っこしながら、よく眠っているルーナのことを考える。

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