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4   結婚式(3)

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 エスペランス様はアリアを抱いたまま階段を降りていく。

 ドレスは着たが、靴がない。どうしてだろう?

 エスペランスはもう地下を何階降りたか分からないほど、深く底に降りていく。


「重くないですか?」

「アリアは軽すぎる。もう少し健康的になろう」

「はい」


 確かに痩せてはいるけれど、ずっと抱いたまま階段を降りるのは大変だろう。


「もっと深くまで降りるのですか?」

「いや、もうすぐ着く」


 そう言ってから、ずいぶん降りてから、広い場所に出た。

 真っ暗だった場所にロウソクが灯った。

 アリアは真っ白なドレスを身につけているが、エスペランスは漆黒のタキシードを身につけている。薄暗く広い場所の中央に石の祭壇があった。

 エスペランスはその祭壇にアリアを載せた。

 下着を身につけていないアリアは、短いスカートから中が見えないように、足を閉じて、正座をした。

 エスペランス様は時間を気にしているようだ。少し早く出てきてしまった。ゆっくり階段を降りてきたが、まだ少し早いのだろうか?

「ここは私が祈る場所だ。特別なときしか使用しない」

「どんな時に祈るのですか?」

「魔界に異常が起きた時だな。今まで祈ったことはない。先代も先々代も祈ってはいないはずだ」

「魔界は平和なのですね」

「人間界がちょっかいを出してこなければ、問題はないな」

「魔窟ですか?」

「魔窟に済む魔物も攻撃されなければ、おとなしくしているだろうが、魔窟を襲いに人間が立ち入る。だから均衡が崩れる」

「冒険者達が、賞金稼ぎに魔窟に入る事が問題なのですね?」

「そうだ」

「人は欲張りだから……」


 平和に暮らせれば、問題も起きないのに、人間界では魔窟を攻める冒険者がいる。国から賞金が出て、毎日、魔窟の中に人が入る。


(そこにいるだけで邪魔にされるのは、わたしと同じだ。孤児院でも、プラネータ公爵家でも教会でも、わたしは規律を乱した聖女で特別な力を持った聖女の娘で、異端者扱いだった)


 今は魔界にいてやっと安らぎを感じている。


「アリア、始めるぞ」

「はい」



 エスペランスはアリアの前に立ち、一礼した。


「汝、我が妻になり一生を我と共に過ごすことを誓うか?」

「誓います」

「苦楽を共に過ごし、この魔界の為に力を注ぐことを誓うか?」

「誓います」

「血の交換をする」


 エスペランスはアリアの目の前で、手首に指を這わせると、手首を切った。血が滴り落ちている。


「この血を飲みなさい」


 アリアは祭壇に座ったまま口を開けた。

 口の中にいっぱい血が入ってきて、アリアはそれを飲み込んだ。

 唇は真っ赤になり、口の端から血が流れている。いつの間にか白いウエディングドレスは赤く色づいている。

 血は甘く、身体が熱くなってくる。

 手を掴んで、アリアは無意識に血を求めていた。

 目の前で、エスペランスが手首に指を這わすと、血が止まった。

 そっと身体を押されて、アリアは石の祭壇に横になっていた。

 足を抱え上げられると、硬く閉じた場所に熱く硬いもの当たり、それが身体の中に入ってきた。


「滴る一滴まで、血を私に献げよ」

「……はい」


 エスペランスとアリアはひとつに繋がった。

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