悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   

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6   王宮での暮らし

2    お召し物

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 鞄の中には、2着のワンピースが入っている。
 靴は1足だ。
 リリーは部屋の中で片付けを始めた。
 クローゼットを開けて、ワンピースとドレスカバーから出して、ドレスをかける。
 ドレス用の靴を棚に置く。
 旅行鞄に金貨やお金を仕舞い、鍵をかける。持ち運び用のバックを畳んで置くと、思い出の詰まったポシェットはベッドの横にかけた。小物入れにちょうどいいだろう。

 大きなクローゼットは、部屋一つ分ほどあり、魔法道具を置いても邪魔にはならない。誰でも触れる杖とロットに触れる。ビエント様はなかなかお目が高い。リリーがいいと思っていた物を選んでくれた。どれもそれほど変わらないが、色や質感が違う。杖とロットは部屋の端に並べて寝かせた。本当は立てて置きたいが、入れ物がないから仕方がない。
 ボスがドロップしたアクセサリーを取り出して、宝石箱に入れていく。魔力の高い物から順に並べていく。クズのようなアクセサリーは普段使いにすればいい。並べたら、いっぱいになってしまった。

「リリー、デザイナーが来たよ」

 ノックがするとビエントが部屋に入ってきた。

「ビエント様、杖を置く場所がないの。入れ物を作ってくださいな」
「わかったよ。今はドレスと洋服だね」
「……はい」

 リリーは背が伸びた。靴も窮屈になってきた。

「まず、寸法を測らせていただきますね」

 デザイナーはクローゼットの扉を開けて、リリーを連れて中に入った。

「もうよろしいですよ」
「靴が窮屈になってきました」
「成長期ですからね」

 足のサイズも測り、リリーはビエントの横に座ってから、デザイナーの椅子がないことに気付いて、ドレッサーの椅子を持ってきた。

「これに座ってくださいな」
「わざわざ申し訳ございません」

 リリーはビエントの横に座って、デザイナーの話を聞く。

「普段着のワンピースに靴とバック。社交界用のドレスとイブニングドレスが最低いりますね」
「今のドレスが気に入っているんですけれど、見ていただけますか?」
「はい」

 リリーはクローゼット中に入り、自分でドレスを着る。
 静かに出てきて、デザイナーの前に立った。

「なかなか素晴らしいドレスでございますね」
「……はい」
「裾が短くなっていますが、他は大丈夫そうですね。成長期なので、胸元をいっぱいに出してみましょう。後は裾にレースを継ぎ足せば着られるでしょう」
「お願いしてもいいですか?」
「もちろんだよ」
「お願いします」

 リリーはまたクローゼットの中に戻ると、ワンピースに着替える。ドレスを持って出てくる。

「どんな色がお好きですか?」
「白が好きです」
「すべて白い色では面白くはないでしょう。素敵な青い瞳をしていらっしゃるので、瞳の色に合わせた綺麗な青はどうでしょう?」
「青にはいい思い出はないけれど……」

 デザイナーは色見本を出して、青でもいろんな青を見せてくれた。

「青いスカートに胸元を白くする方法もございます」
「その方がいいわ」

 ビエントが青い布をリリーに、順にあてがっていく。

「リリーの瞳は明るい青をしているから明るい色が似合うのではないか?」
「そうでございます」

「殿下少しおかしください」と、色見本をデザイナーが手に持ち。色目を選んでいく。

「こちらか、こちら。どちらでもお似合いになると思います」
「私もその色が似合うと思ったのだ」

 ビエントとデザイナーが選んだ青は、とても綺麗な青だった。
 確かに瞳と同じ色目をしている。
 制服が青だったせいか、青い色に対して、以前ほど拒絶感は抱かなかったが、ドレスはやはり青は避けたい色だ。
 少し落胆して、色合わせはビエントに任せることにする。

「ではビエント様が選んだ物でいいです」

 デザイナーがリリーを見ながらドレスのデザインを描いている。

「こんな感じは如何でしょう?アクセントに白い色が入り、すべて青よりも顔色が明るくなります」
「今まで着たことのないデザインです」
「では、これにしてみるか?」
「はい」
「ドレスがないとお披露目会も開けないからな」
「お披露目会ですか?」
「パーティーを開く予定だ」
「両親を呼んでもいいですか?」
「もちろん、そのつもりだ。国境は危険がなくなった」
「私が飛べば、数時間で戻ってこられます」
「わかった、連れて来ていい」

 大勢を運べるのに、両親を迎えに行けないと言われたら、リリーはビエントに文句を言っただろう。
 一人で飛んで20分で行けるのに、馬車で来てもらうと何ヶ月もかかってしまう。ぷんぷん!

「ありがとうございます」
「イブニングドレスは殿下とお揃いのミッドナイトブルーで如何でしょうか?」
「お揃いなの?」
「いずれ結婚するのだろう」
「なんか実感が湧かなくて……」
「同色にしてくれ」
「畏まりました」

 色見本で見たら、落ち着きのあるいい色だった。
 ブルーと言われると、やはりいい思い出がなくて戸惑ってしまう。

「あとは普段着だ。白い色でもいいぞ」
「デザイン画はありますか?」
「たくさんありますよ」

 デザイン画を見ている間に、デザイナーがリリーをモデルにデザインを描いている。
 三枚ほど描いてくれたデザイン画を見て、それにした。

「どんな色を思い浮かべて描かれたのでしょうか?」
「淡いピンクと、白色と水色です」
「それでいいです。あとミッドナイトブルーで一着作ってくださいますか?ストールとお揃いで」
「リリー、また屋敷を抜け出すためか?」

 リリーは心の中で、舌を出す。
 ビエントと内緒のデートをした時も、紺色のワンピースに同色のストールをしていた。
 今のところ、抜け出す予定はないけれど……。

「この髪はとても目立つので、隠したいときもあるのですわ」
「わかりました。どのワンピースにもストールをつけましょう」
「ありがとうございます」


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