悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   

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9   婚約について

1   リリーとシオン

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 リリーはビエントに頼んで宝石箱と、金庫を一つもらった。
 さすが王宮だけあって、すぐに欲しい物が出てきた。
 モリーに頼んで金貨をしまうための袋を作ってもらった。頑丈な布で作ってもらったので、底が抜けたりはしないだろう。頼んで30分もしないうちに30枚以上の袋を持ってきてくれた。
 旅行鞄を開けて、洗濯物と使いかけのシャンプー等を取り出して、リリーはメリーに手伝ってもらいながら、片付けを始めた。
 ビエントは構って欲しそうにソファーに座っていたが、片付けが先だ。
 体に付けた杖やロットはリリー専用なので、リリー以外は触れない。新しい王冠とマント取り出して、ビエントとモリーとメリーに見てもらう。

「ラストアタックを取ったのですわ」

 リリーはワンピースの上から、王冠とマントを着けて、三人に見せる。

「これも専用なのか」
「はい。私以外は触れられません」

 リリーはビエントの前に立った。ビエントが触れようとしても触れられない。

「すごいな。王冠も素晴らしく美しい」
「落としたのは、人を食べてしまう獰猛なコウモリでしたけれど」
「なんと恐ろしい」

 ビエントは素直に驚いている。

「これは私の戦士としての勲章です」
「トルソーをお持ちしましょう。それに着せて、お部屋に飾りましょう」

 凜々しいリリーの姿を見て、モリーが言った。

「それがいい。片付けてしまうより、飾ったらいいだろう」

 リリーは見せたら、それを脱ぐと畳んでテーブルに置いた。王冠もマントの上に置いた。

「ビエント様、シオン様はもしかしたら魔術は苦手ではないですか?」
「ああ、あいつに魔術の才能はない」
「最後のボス戦で、シオン様が魔術を放って、危険な事が置きました。もう少し魔術に力があったら、もしかしたら、私もシオン様も無事ではなかったかもしれないほど、危険な事をなさって、最後に騎士団長がシオン様に注意をなさったんですけれど、少しも反省した様子はなく、寄宿舎の中から出て行かれたのですけど、あの後王宮に戻られたのでしょうか?」
「いや、まだ戻ってはいない。シオンが規律を乱したのか?」
「はい。戦法は何度も相談して決めた物でしたし、念のために戦う前に確認もしましたが、シオン様が勝手な行いをいたしました。シオン様は他にも毒ガスを吐き出す魔物のボス戦でもマスクもはめられないのに、無理矢理入られて、アトミスに対して奴隷だからマスクをはめろと命令されました。アトミスは、二人で出会った時も、アトミスに対して奴隷として、一生、シオン様を守るためにいるのだとおっしゃっていたとか。アトミスは酷く傷ついておりましたから、マスクは、私が無理矢理はめましたが、シオン様はアトミスに対して、愛情の欠片もない態度をしていらっしゃいますの。アトミスが戦場に向かったのも、この戦いを早く終わらせ、シオン様と婚約破棄をしていただきたいためだと言っておりましたわ。光の魔術師だから、アトミスを選んだとも言っておられました。国王陛下や王妃様はどうしてアトミスをシオン様の婚約者にしたのでしょう。ビエント様なら知っているかと思ってうかがっています」

 ビエントはしばらく黙っていたが、隠してもリリーなら暴いていくだろうと思い口を開いた。

「シオンは魔術の才能がないから、シオンが倒れたとき、光の魔術師が近くにいれば救ってもらえるだろうとアトミスを選んだと聞いた」
「ダンジョンがなくなった今は、もう魔法で戦う事はなくなりました。そうしたらシオン様の婚約者でいる必要はなくなったのではないでしょうか?アトミスを傷つける事ばかりを口にするシオン様と一緒にいる必要はないと思いますの」
「リリーに対してもシオンは無礼な事を口にするのか?」
「私はチビと言われる程度ですわ。雑用のような運搬係を押しつけられたのは腹が立ちましたが、私以外にできる者がいなかったのですから、仕方がありません」
「弟が無礼な真似をして、申し訳なかった」
「私のことはいいのです。確かに、私の方が年下ですから、気に入らなかったのでしょう……アトミスは、国王陛下に婚約破棄の話を持っていくと、アトミスの父が伯爵家の中で阻害されるのではないかと、それも心配しておりますの」
「父上に話してみよう」
「間に入っていただけたら、とても助かります。アトミスは婚約の笛も、既にはめておりません。悲しみに食事も喉を通らないほど、心を傷めていますわ」

 リリーはアトミスの苦悩をビエントに話した。
 きっと力になってくれると信じている。






 リリーの部屋には白いワンピースに杖を装着して、マントと王冠を纏ったトルソーが置かれた。
 凜々しい姿は、リリーの宝物になった。
 荷物はモリーとメリーが手伝ってくれて、金貨も金庫に入れられた。モリーとメリーは旅立つ前に預けた金貨5枚を返そうとしたけれど、それは二人に差し上げた。異国まで連れてきてしまった恩もある。モリーとメリーがいてくれるだけで、王宮での寂しさは少なくなる。

「魔法学校の事を調べてくる」と言って、いったんビエントはリリーの部屋を出て行った。その間に、リリーは片付けを進めた。

 ビエントが帰って来て、国王陛下と王妃様にご挨拶に向かったが、「お疲れだったね」と労われたのかよく分からない言葉が返ってきた。それ以上、何も言われなかったので、すぐに部屋から退出した。ビエントが「申し訳ない」と謝ったが、リリーはその程度にしか思われていないのかと思っただけだった。

「ビエント様、私、王宮にいてもいいのでしょうか?婚約は継続されているのでしょうか?」

 疑問ばかりが浮かぶ。

「私は本気でリリーと結婚を考えている」
「信じていいのでしょうか?なんなら私が年頃になるまで実家に戻っていましょうか?国王陛下も王妃様も私の存在を大切に思っていないように感じます」
「私がリリーを想うだけでは駄目なのか?」
「信じていいのでしょうか?」

 話しながら、部屋に戻っていくと、シオンが制服姿で戻ってきた。

「シオン、話がある」

 ビエントはシオンの顔を見て、シオンを足止めした。

「父上と母上に挨拶に向かうところだ」
「規律を守らず、ダンジョンで危険な真似をしたと聞いたが」
「攻略できたんだから、それでいいじゃないか?」
「魔法学校の生徒の90人を犠牲にして、何をしたかったのだ?一人は亡くなったぞ」
「弱いからだだろう?」

 シオンは何の感情を持っていないように答えた。

「シオンは守られていたのだろう?」
「王子を守るのは側近の役目だ」
「それで側近の家に隠れていたのか?今回の処罰を避けるために。今回のダンジョンへの参加はシオンが指揮を執ったと聞いた。魔術学校の校長は責任を取らされて、退職になったぞ」

 シオンは体を斜に構えている。

「指揮を執っただけだ。何が悪い」
「指揮を執るというのは、預かった命を最大限に守る義務も出てくる。そこは考えて行ったのか?」
「勝手に倒れていく者までは責任は持てない」
「その責任を取ることが、指揮を執ると言うことだ」

 ビエントは弟に責任について、話して聞かせるが、シオンには聞く耳がないようだ。
 廊下で話していたので、国王陛下と王妃も出てきた。

「シオン、お帰り。無事で良かったわ」

 王妃は今まで聞いたこともない猫なで声で言って、シオンを抱きしめる。

「初めての指揮はきちんと執れましたか?」
「母上、魔法学校の生徒、参加者100人のうち、90人が負傷。そのうち一人が亡くなりました。話では無茶な戦い方をしたと」
「騎士団の方は助けてくださらなかったのですか?」

 王妃がリリーを睨む。

「シオン様が、手出し無用とおっしゃったのですわ」

 リリーは正直に答えた。

「毎日、魔物と戦い、戦術を練って挑んでいきましたが、シオン様は私たちの手を拒絶なさった結果でございます。今回の魔物は以前の魔物より凶暴で毒も持ち、人の体を一瞬で骨に変えるほどの恐ろしい魔物もいました。騎士団でも毎日の狩りで死者が出るほどで、色々対策を練って、やっとダンジョンへの攻略ができるようになったのです。突然現れて、指揮が執れるはずありません」

 リリーは捲し立てるように話した。

「そうだよ、突然、指揮なんて執れるはずがないさ」

 開き直ったようにシオンが言葉を発した。

「そうだね、俺にできることは、死んだ生徒のところにお悔やみに行くことくらいだろう」

 そう言うと、母の腕から出て、今、帰ったばかりの廊下を戻って行く。

「どこに行くの?シオン」

 王妃はシオンの後を追う。

「騎士団の殉職者はいくら払うんだ?チビ」
「シオン、リリーは私の婚約者だ。その呼び名は私を愚弄したことになるぞ」
「いくらですか?オネエサマ」

 シオンは棒読みでお姉様と言った。
 リリーは不快に思ったが、殉職者のところへ行くのなら、答えなければならない。

「金貨100枚よ」
「父上、金貨100枚いただきます」
「シオン、私も一緒に行こう。指揮を執ったのがシオンならば、国王の私も頭を下げなければならない」

 シオンはきょとんとしている。

「国王が頭を下げるのか?国で一番偉いのに」
「シオン、おまえは間違っている。国で一番偉いのは国民だ。国民があっての王族だ。息子が失敗した作戦に巻き込まれて亡くなったのなら、親として責任を取らなくてはならない」

 国王陛下はどうやらまともなようで、リリーは少し安心した。
 シオンは国王に連れられて、階段を降りていく。
 執事を呼び、金貨100枚を用意させている。
 国王の側近に、殉職者の家を調べるように指示を出している。

「リリー、部屋に戻ろう。アトミス嬢の事は改めて国王に話そう」
「お願いしますわ。明日、アトミスの家に行ってまいります」
「行っておいで。アトミス嬢も心配しているだろう」
「ええ」

 ビエントと国王陛下が、まともな考えの持ち主で良かった。リリーはビエントに手を引かれて、リリーの部屋に向かった。



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