悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   

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12   結婚

1   国王の訪問

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「父がご挨拶に伺いたいと言っておりますが、連れていてもよろしいでしょうか?」

 夕食の後のお茶の時間にビエントが父に、伺いを立てた。

「アストラべー王国の国王様ですか?我が家は構いません。ビエント様のお父上だ。気軽に遊びに来ていていただいて構いませんよ」

 リリーの父は、我が娘の婿になったようなビエントに対して、気軽に承諾した。

「ありがとうございます」
「いつ来られるのだろう。食事の準備をしなくては……」
「父上はいつ都合がよろしいでしょうか?」

 いつでも家にいるように見えて、リリーの父はこれでもかなり多忙な生活をしている。
 国の議会の委員長をこなし、金鉱山の頭もしている。
 夕方には必ず家に帰っている家族想いの優しい父親だ。仕事に対しても手際がいいのだろう。ビエントはリリーの父のようになりたいと思っている。娘の洋服も一緒に選んで、毎日、食事は一緒に摂っている。リリーの家に通うようになり、理想の夫、理想の父親というものが見えてきた。
 リリーの兄は父の不在中は、威厳を持って家長の代わりをしている。なんと凜々しい跡取り息子だろう。ハスタに対しても、ビエントは尊敬していた。妹を大切にして守ろうとしている。短気な父親を宥めるのも上手く、習うところが多い。
 ハスタは最近、ビエントのことを兄上と呼ぶようになり、家族として受け入れてくれている。
 優しく温かい家族だ。

「来週の初めは連休を取っている」
「では、その日に伺うように父に伝えておきます」
「緊張しますわね」
「お義母様、父は挨拶に伺うだけです」
「ええ、でも国王様ですもの。ねえ、リリー」
「はい。私もあまりお目にかかったことがなかったので緊張します」
「一緒に暮らしていたのに、申し訳ない。今は母がいないので、父も以前より身軽に動けます」
「あら、お母様は、どこかに旅行中ですの?」
「ええ、そんなところです」
「まあ、いいわね。旅行もずいぶん行ってないわね」
「そのうち連れて行ってやる」
「まあ。嬉しいわ」
 
 リリーの母は、嬉しそうに微笑んでいる。

「父上、たまには夫婦みずいらずで、出かけてはいかがですか?我が家は僕が守っていましょう」
「ハスタお兄様、なんだか格好いいわ」

 リリーがハスタを構っている。

「リリー、うるさいぞ」

 家族みんなが声をあげて笑っている。
 この家庭は温かい。リリーの手を握ると、リリーは可愛く微笑んだ。
 リリーはいつの間にか、身長も高くなり、女性らしい体つきになり以前より美しくなった。

「従者はどれくらい連れて来られる?」
「側近の二人だと思います」
「それでは、側近の方の分も用意しよう」
「ありがとうございます」

 ビエントは頭を下げた。







 翌週の約束の日に、約束の時間に国王陛下と側近の二人がリリーの家に着いた。
 ビエントが迎えに行った。四人で空を飛んで降りてきた。

 リリーは庭に出ていた。

「国王陛下いらっしゃいませ」

 リリーは上質なワンピースを着て、礼儀正しくお辞儀をした。

「リリー嬢、美しくなったな」
「ありがとうございます」

 リリーはにっこり微笑むと「こちらへどうぞ」と国王陛下を家の中へ招いた。


「いらっしゃいませ」
 使用人が並び、その先にリリーの両親がいた。

「お邪魔をする」

 国王はリリーの両親の前まで進むと、深く頭を下げた。

「いつも息子が世話になっております。リリー嬢は美しくなられた。ダンジョンの攻略の後は、功績も称えず、妻が酷い虐めをして、恥ずかしく思っております。お体を壊したと聞いたときは、本当に申し訳ないと思い、謝罪に伺いたいと思っておりましたが、体調が良くないときに伺えば、迷惑をかけると息子に言われ、謝罪が遅くなったこともお詫びしたいと思います」
「頭をお上げください。娘はもう元気になりました。お気遣いいただきありがとうございます」

 父親同士が頭を下げ合っている。
 大勢になることを見越して、ダンスホールになる広間に、机が出されている。

「どうぞ、ささやかですが、お昼の準備をいたしました。お席にどうぞおかけください」

 使用人が席に案内していく。上座に国王を招いて、話ができるように対面に両親が座り、ハスタとリリーと並ぶ。
 向かいには、国王とビエントが座り、側近が二人並んで座った。

「今日は、改めてリリー嬢とビエントとの婚約の話と婚礼の話をしたく訪問しました」

 リリーの両親は頷いている。

「ビエント様は既に息子同然です」
「そう言っていただけてありがとうございます。リリー嬢を我が息子の嫁にいただきたい」

 国王陛下は深く頭を下げた。

「我が妻からも、次男からも、必ずビエントと共に守りますので、どうぞよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」

 リリーの両親は深く頭下げた。

「支度金として、金貨100枚お持ちしました。どうぞお納めください」

 側近が立ち上がり、金貨の入った鞄を父の元に持ってきた。

「ありがとうございます」

 いったん父が受け取り、使用人が準備したテーブルに置いた。

「ささやかですが、どうぞお召し上がりください」

 会食が始まって、リリーはビエントを見つめた。ビエントもリリーを見ていた。二人は微笑みあって、交換し合った指輪に触れる。
 日程の話は、二人に決めさせようと話し合っていた。




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