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第四章
1 お家騒動 1
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☆第四章は女の子の話になります☆
……………………………………………………
「最後のお別れになるかもしれません」
医師は申し訳なさそうに、頭を下げて家族にその場を譲った。
「ビオニエーレ、死ぬな」
お父様が、愛娘の手を握った。
私、死ぬのね。
「……おにいさま」
「どうしたビオニエーレ」
「レユールお兄様のことを、ずっとお慕いしていました」
私は死亡宣告を受けたので、ずっと心に想っていたことをお兄様に告げた。
レユールお兄様は何も言わずに、ただ頷いた。
私は幼い頃から、原因不明の病に冒されていて月の半分以上をベッドの上で過ごす生活をしてきた。
優しく賢いお兄様が、とても眩しく見えていた。
そこに想ってはいけない感情が、目覚めて来ていた。
お兄様と口づけをしてみたい。恋人になってほしい。
最近の私は、ずっとそんなことを想っていた。
けれど、今回の高熱はどうしても熱が下がらない。
体力も限界だった。
食事も食べられなくなって、医師からとうとう見放されてしまったようだ。
どうか、お兄様を愛してくれるお方が現れますように。
私は眠りに落ちていった。
目を閉じた私の両手に、両親とお兄様の手が触れている。
儚い恋だった。
どうか次に生まれ代わることができるなら、健康な体で、お兄様ともっと一緒にいられますように……。
私は死んだ。
そこに神様が立っている。
「すまないな。おぬしの死ぬ番ではなかった。隣の婆さんのロウソクと間違えてしまたわい」
そこには、大量なロウソクが火を灯していた。
私のロウソクは、もう消えかかっている。
その隣のロウソクは長くて、煌々と光り輝いている。
ロウソクは人の寿命のようだ。
「私は人の身代わりになって、病気と戦い、命を落とすのですか?まだ、たった17歳なのに?」
「すまぬな?」
「命を返してください」
私は神様に掴み掛かった。
年老いた神様は、白髪の髪を整えて、コホンと咳払いをした。
「そなたの病気も他人の病気が集まっておったようだ。風向きが少々悪い位置に置かれていたせいだと分かった」
「なんで、神様のミスで殺されなくてはならないの?」
「すまん、すまん」
「謝ってないで、私を生かせてください。私、幼いときから何もしたいことができていないの。このまま死ぬなんて嫌よ」
魂の私は、今までで一番、動いて、たくさん話したような気がする。
「ロウソクを足してやろう」
神様をユサユサ揺すっていたら、神様が嘘のような事を言った。
「約束よ。すぐにロウソクを足して、少々の事では消えないように、しっかりしたロウソクよ」
「分かったよ」
神様は太くて長いロウソクを取り出した。
そのロウソクに、消えかけの私の魂の灯火を灯すと、消えかけていたロウソクの上に重ねた。
「ねえ、神様、私のお兄様のロウソクはどこにあるの?」
「ここじゃ。名はレユール・シメトリーナだな?」
「そうよ」
神様は、ロウソクの前に連れて行ってくれた。
お兄様のロウソクは短くなっていた。
まるで数年後には死んでしまうように。
「神様、新しいロウソクはどこですか?」
「こら、擽るではない。ふぁふぁっふぁ」
私は神様の洋服の中を探って、私と同じ大きさのロウソクを奪った。
お兄様のロウソクの火を灯すと、重ねて立てた。
「こら、人の寿命を操作してはならぬ」
「間違えて私の命を奪おうとしていたのは誰よ?」
「わしじゃな」
神様は私のロウソクをお兄様のロウソクの横に置いた。
「これでお兄様は、私より長生きね?」
「そうさのう」
「私は、ちゃんと目覚めるんでしょうね?」
「明日の朝、健康な体で生き返るであろう」
「ありがとう、神様」
私は神様に、お辞儀をしてお礼を言った。
酷いことも言ってしまったが、誠実な神様に本当は感謝しているんだ。
何よりお兄様の寿命が長くなった事が嬉しい。
生き返っても、私より早く死んでしまう所など見たくはないし、寂しい想いはしたくない。
私の意識は、私の体に返された。
心臓の鼓動が、しっかり聞こえる。
私は朝日が昇るときに、目を覚ました。
私の隣には、私の手を握っているお兄様が、吃驚した顔で、私を見ている。
「お兄様、おはようございます」
「ビオニエーレ、目覚めたのか?」
「はい」
「昨夜、息を引き取ったはずでは?」
「私は生きていますわ」
私はゆっくり体を起こした。
「急に起きたりしては駄目だ。横になっていなさい。父上と母上に伝えてくる」
お兄様は、私をベッドに寝かせると、部屋を飛び出しって行った。
すぐに、お父様とお母様が部屋の中に入ってきた。
「ビオニエーレ、よく生き返ってくれた」
「神様が、間違えてしまったんですって」
「この子は、夢でも見ていたのかしら?」
お母様は泣きながら、私に抱きついてきた。
お父様も泣いている。
二人とも、きっとリビングで泣いていたのだろう。
お兄様の目も赤くなっていた。
「私の病気は治ったと言われましたの」
「そうか」
お兄様は、私の言葉を信じてくれた。
「医師に診てもらってから、起き上がりなさい」
お兄様は、私を見て微笑んでくれた。
「はい、お兄様」
私のお腹がグーッと鳴る。
「お腹が空きましたわ」
「すぐに用意させよう」
お父様は涙を拭きながら、部屋から出て行った。
……………………………………………………
「最後のお別れになるかもしれません」
医師は申し訳なさそうに、頭を下げて家族にその場を譲った。
「ビオニエーレ、死ぬな」
お父様が、愛娘の手を握った。
私、死ぬのね。
「……おにいさま」
「どうしたビオニエーレ」
「レユールお兄様のことを、ずっとお慕いしていました」
私は死亡宣告を受けたので、ずっと心に想っていたことをお兄様に告げた。
レユールお兄様は何も言わずに、ただ頷いた。
私は幼い頃から、原因不明の病に冒されていて月の半分以上をベッドの上で過ごす生活をしてきた。
優しく賢いお兄様が、とても眩しく見えていた。
そこに想ってはいけない感情が、目覚めて来ていた。
お兄様と口づけをしてみたい。恋人になってほしい。
最近の私は、ずっとそんなことを想っていた。
けれど、今回の高熱はどうしても熱が下がらない。
体力も限界だった。
食事も食べられなくなって、医師からとうとう見放されてしまったようだ。
どうか、お兄様を愛してくれるお方が現れますように。
私は眠りに落ちていった。
目を閉じた私の両手に、両親とお兄様の手が触れている。
儚い恋だった。
どうか次に生まれ代わることができるなら、健康な体で、お兄様ともっと一緒にいられますように……。
私は死んだ。
そこに神様が立っている。
「すまないな。おぬしの死ぬ番ではなかった。隣の婆さんのロウソクと間違えてしまたわい」
そこには、大量なロウソクが火を灯していた。
私のロウソクは、もう消えかかっている。
その隣のロウソクは長くて、煌々と光り輝いている。
ロウソクは人の寿命のようだ。
「私は人の身代わりになって、病気と戦い、命を落とすのですか?まだ、たった17歳なのに?」
「すまぬな?」
「命を返してください」
私は神様に掴み掛かった。
年老いた神様は、白髪の髪を整えて、コホンと咳払いをした。
「そなたの病気も他人の病気が集まっておったようだ。風向きが少々悪い位置に置かれていたせいだと分かった」
「なんで、神様のミスで殺されなくてはならないの?」
「すまん、すまん」
「謝ってないで、私を生かせてください。私、幼いときから何もしたいことができていないの。このまま死ぬなんて嫌よ」
魂の私は、今までで一番、動いて、たくさん話したような気がする。
「ロウソクを足してやろう」
神様をユサユサ揺すっていたら、神様が嘘のような事を言った。
「約束よ。すぐにロウソクを足して、少々の事では消えないように、しっかりしたロウソクよ」
「分かったよ」
神様は太くて長いロウソクを取り出した。
そのロウソクに、消えかけの私の魂の灯火を灯すと、消えかけていたロウソクの上に重ねた。
「ねえ、神様、私のお兄様のロウソクはどこにあるの?」
「ここじゃ。名はレユール・シメトリーナだな?」
「そうよ」
神様は、ロウソクの前に連れて行ってくれた。
お兄様のロウソクは短くなっていた。
まるで数年後には死んでしまうように。
「神様、新しいロウソクはどこですか?」
「こら、擽るではない。ふぁふぁっふぁ」
私は神様の洋服の中を探って、私と同じ大きさのロウソクを奪った。
お兄様のロウソクの火を灯すと、重ねて立てた。
「こら、人の寿命を操作してはならぬ」
「間違えて私の命を奪おうとしていたのは誰よ?」
「わしじゃな」
神様は私のロウソクをお兄様のロウソクの横に置いた。
「これでお兄様は、私より長生きね?」
「そうさのう」
「私は、ちゃんと目覚めるんでしょうね?」
「明日の朝、健康な体で生き返るであろう」
「ありがとう、神様」
私は神様に、お辞儀をしてお礼を言った。
酷いことも言ってしまったが、誠実な神様に本当は感謝しているんだ。
何よりお兄様の寿命が長くなった事が嬉しい。
生き返っても、私より早く死んでしまう所など見たくはないし、寂しい想いはしたくない。
私の意識は、私の体に返された。
心臓の鼓動が、しっかり聞こえる。
私は朝日が昇るときに、目を覚ました。
私の隣には、私の手を握っているお兄様が、吃驚した顔で、私を見ている。
「お兄様、おはようございます」
「ビオニエーレ、目覚めたのか?」
「はい」
「昨夜、息を引き取ったはずでは?」
「私は生きていますわ」
私はゆっくり体を起こした。
「急に起きたりしては駄目だ。横になっていなさい。父上と母上に伝えてくる」
お兄様は、私をベッドに寝かせると、部屋を飛び出しって行った。
すぐに、お父様とお母様が部屋の中に入ってきた。
「ビオニエーレ、よく生き返ってくれた」
「神様が、間違えてしまったんですって」
「この子は、夢でも見ていたのかしら?」
お母様は泣きながら、私に抱きついてきた。
お父様も泣いている。
二人とも、きっとリビングで泣いていたのだろう。
お兄様の目も赤くなっていた。
「私の病気は治ったと言われましたの」
「そうか」
お兄様は、私の言葉を信じてくれた。
「医師に診てもらってから、起き上がりなさい」
お兄様は、私を見て微笑んでくれた。
「はい、お兄様」
私のお腹がグーッと鳴る。
「お腹が空きましたわ」
「すぐに用意させよう」
お父様は涙を拭きながら、部屋から出て行った。
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