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2 奔放なプリューム
5 奔放なプリューム(5)
しおりを挟む夕食の時間、プリュームは侍女に起こされて、ダイニングに入っていった。
父も帰宅しており、久しぶりに顔を見るが、父は顔を見るなり、「後で部屋に来なさい」と命令して、それ以降、話しかけて来なかった。
隣に座るアリエーテがとても美しかった。風呂上がりなのに、髪を綺麗にセットして、外出していた時の洋服とは違うお洒落なデザインの黄緑のワンピースを着ていた。瞳と同色で、とても美しい。髪にも共布で作られたリボンが付けられている。リボンの中央にはアクセントで赤い宝石が付けられている。
プリュームは姉から奪ったワンピースを着ている。あの時は、すごく美しいと思ったワンピースなのに、今のアリエーテの洋服のデザインは初めて目にする物だ。斬新で新鮮で、今、持っている服をすべて見ても、このワンピース一枚には敵わない。
プリュームは悔しかった。
乱雑に食事を摂り、色の濃いトマトソースのおかずを、その洋服にわざと飛ばした。
「プリューム、食事のマナーがなっていませんよ。私の洋服にお料理が飛んで来ましたわ」
「……ごめんなさい」
アリエーテはすぐに席を立ち、ダイニングから出て行った。その後から侍女が付いていく。
新しい洋服に着替えて、モリーに指示を出す。
「食器用洗剤でシミの部分をもみ洗いしてください。できなければ教えてください」
「畏まりました」
着替えをすませたアリエーテはダイニングに入り、食事途中の料理を食べてしまう。
まあ、今度は綺麗なピンクのワンピースね。髪飾りはそのままだけれど、中央の赤い宝石のお陰で、とても似合っているわ。
1度目は許されても、2度目は両親が怒り出すだろう。
洋服を汚すことを諦め、おとなしく食事を摂る。
今まで洋服に無頓着だったのに、急に綺麗になって、どうしてでしょう?
微かにいい香りもする。これは香水だろうか?今までは清い体でいなければと、何も付けたことはなかったのに、香水の香り方もちょうどいい。薄すぎず濃すぎない。食事の邪魔にならず、人が不快に思うほどでもなく、気に留めなければ気にならない程度だ。
私は、まだ香水は持っていないわ。
「ごちそうさまでした。お父様、お母様、先ほどの洋服を見て参りますので、お先に失礼します」
「すまないね。プリュームは食事のマナーをやり直した方が良さそうだ。家庭教師を付けよう」
「いりません。そんなの!」
プリュームはとんでもないことを言い出した父に、急いで拒絶の言葉を発する。
「それでは、お休みなさいませ」
「おやすみ」
アリエーテは素早く席を立ち、ダイニングを出て行った。
「プリューム、食べ終わったのなら、私たちの部屋に来なさい。タクシスはお部屋に戻っていなさい」
「分かりました」
タクシスはダイニングから出て行った。
「さあ、プリューム。わしは、今日は顔から火が出そうほど恥をかかされたよ。陛下に呼び出され行ってみれば、プリュームのことだった。殿下を襲ったとは本当か?殿下はアリエーテと初めてを向かえようと規律正しく暮らしてきたそうだ。プリュームに襲われて、生殖反応に異常を来し、今では女性を抱くことも難しくなってしまったそうだ。王宮に乗り込んで、なんと恥知らずな事をしてきた」
「お姉様の婚約者を奪い、私が王太子妃になりたかったのですわ。でも、今日、アルシナシオン様とデートをして、やはり私にはアルシナシオン様しかいないと思えました。殿下にもお姉様にも悪いことをしたと思っております」
「それは誠の心か?嘘偽りはないのか?」
「ありません」
「それなら、さっさと嫁に行ってくれ。おまえは首をはねられてもおかしくない事を起こしたんだ。国中に恥を晒すのは、それほど先ではないだろう」
「私が邪魔なのですか?」
「我が家の恥だ。アリエーテと殿下の心も汚し、二人の関係が元に戻るのかも心配だ。世継ぎの問題も出てくる。おまえのふしだらな行為は、タクシスにもいい影響を与えない。自分がどれほど恥知らずな事をしてきたか理解できたか?」
「私にも聖女の証があります」
「生まれたときから育てているが、プリュームには聖女の証はなかった。それは他国へ赴いてタトゥーをしてきたな」
父は立ち上がると、本棚から1冊の本を取り出した。本を開くと隣国の国で流行っているタトゥーの絵柄を見せる。
まったく同じの絵柄は、プリュームがその本を持ち出して、真似てもらったからだ。
そこまでバレているなら、もう聖女とは名乗れない。この先、偽物の聖女と言われ続けるだろう。果たして、そんな私と、アルシナシオンは結婚してくれるのだろうか?
「お父様の言うとおりでございます。アルシナシオン様が結婚を望んでくださるのなら、早めに結婚いたしましょう」
プリュームの策略は失敗して、自分の首を絞めただけだった。
「本当にごめんなさい」
「反省しているなら、自宅謹慎だ。家から出てはいけない。結婚が決まるまで自宅にいなさい」
「ずっと家から出てはいけないのですか?アルシナシオン様にお目にかかりたいのです」
「アリエーテは殿下と会ってはおらぬぞ。二人の仲を裂いておいて自分だけ身勝手に過ごすのか?」
「……」
「分かったのなら、きちんと謹慎していなさい。ペンサミエント公爵に婚礼のお願いをしてみるが、国一番の馬鹿者を嫁にもらってくれるか、はっきり言ってわからぬ」
アルシナシオン様とも結婚ができるか、分からないのか……。
自分の愚かな行いを初めて自覚した。
両親の部屋から自分の部屋に戻って、プリュームはソファーに座って膝を抱えた。
アルシナシオン様にお目にかかりたい。そして、逞しい腕に抱かれたい。
ああ、なんて寂しいのでしょう。
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