転生したら聖女でした。聖女として生きてきます

綾月百花   

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3   王妃様の誕生日パーティー

5  王妃様の誕生日パーティー(5)

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 翌朝、アリエーテはイグレシアの寝顔を見ていた。
 よく眠っている。
 動いたら起こしてしまいそうで、もう何時間も、こうして寝顔を見ている。今日は教会に行けなかったが、アリエーテの一番の患者はイグレシアだ。穢され、傷つけられた心を癒やしたい。


 私はアリエーテの心が満たされているのを感じて、じっと身を隠している。
 なんて優しい心を持っているのだろう。
 あのまま犯されるかもしれないのに、男性の前でドレスを脱ぎ、同じベッドに入るのも不安だっただろうに。すべては愛する人のために、ベッドに入り、ずっと抱きしめている。
 私の好きな彼が、病気になったとき、アリエーテと同じ事ができるだろうか?
 目が覚めるまで、じっと身を凝らし大切な人を抱きしめることは難しい。一瞬ならできるかもしれないが、アリエーテは、もう何時間も同じ姿勢で抱きしめている。


 アリエーテより深い緑の瞳が開くと、アリエーテは嬉しそうに微笑んだ。

「ずっと一緒にいてくれたんだね?」
「約束したもの」

 イグレシアは宝を抱きしめるように、アリエーテを抱きしめるが、イグレシアのお腹が鳴る。

「お腹が減ったのね」
「ああ、お腹がペコペコだ」

 アリエーテは微笑んで、イグレシアの手を掴んで、起こそうとするが、反対に引き寄せられ、イグレシアはアリエーテとキスを交わし、ガウンの上から、鎖骨と胸の間にある聖女の証に口づけをした。
 アリエーテの柔らかな胸に触れて、そっと手を引っ込めた。

「触れてもいいのよ」
「今は止めておこう。僕の体調が万全ではない。途中で眠ってしまうのは失礼になる。でも、見せてくれるか?」

 イグレシアはアリエーテのガウンをはだけると、美しいアリエーテの裸を見つめた。

「なんて、美しいんだ」
「恥ずかしいわ」
「目に焼けつけておこう」

 しばらくアリエーテの裸を見ていたイグレシアは、アリエーテにガウンを着せた。

「隣の部屋に風呂場がある。顔も洗えるだろう。使ってくれ。僕は別の部屋を使おう」
「ありがとう、イグ」

 ベッドから降りると、バスルームに案内して、女性ものがないことに気付いた。

「侍女を呼ぼう」
「一人でできるわ」
「僕の大切な姫だ。甘えてくれ」

 アリエーテは微笑んだ。
 普段のイグレシアに戻っている。後は体力を取り戻すだけだ。



 侍女が呼ばれ、アリエーテは朝風呂に入った。
 昨夜、メイクを落としていなかったので、メイクを落としてもらい、頭も体も磨かれるように洗われた。新しい下着をもらい身につけると昨夜のドレスをそのまま身につける。髪も綺麗に結い上げられ、リボンで飾られる。預けてあったバックに下着を仕舞い。イグレシアが来るのを待つ。
 イグレシアは程なく来て、ダイニングに誘われた。



 ダイニングは大きなテーブルがあり、誰もいなかった。使用人が料理を持ってくる。
 イグレシアは食事を摂っていなかったので、柔らかな消化の良さそうな料理が並べられた。一緒に並べられた料理を食べると、イグレシアは嬉しそうに、微笑んでいる。

「ずっとここで暮らさないか?」
「服がありませんわ」
「ドレスも服も作ろう。アリエーテの部屋も造りたい。どうだろう?」
「教会で病気の人を治しています。今日は休んでしまいましたが。予約を取って診ています。午後からは洋服屋で働いています。デザイナーをしているの」
「一日中働いているのか?」
「はい。今までは時間があったので」
「結婚はできないのか?」
「結婚が決まったら、洋服屋の仕事は予約者だけで行い。その後は退職しますが、聖女の仕事は続けさせてください。教会が駄目なら、王宮の近くに小さな建物を私にください。私に与えられた使命です」

 アリエーテは、自分の聖女の証に触れた。

「分かった、準備をしよう」
「ありがとうございます」
「寒くはないか?」
「少し寒いですが、大丈夫です」

 季節は冬だ。肩の出たドレスは寒い。

「僕の上着を着てくれ」

 ニットのカーディガンを脱いで、肩にかけてくれる。

「イグが風邪を引くわ。今はまだ体調が良くないはずよ」
「この部屋は暖炉がある。暖かい」
「それならいいですけど」

 肩から温かさが体を覆う。イグレシアの優しさだ。
 優しさが嬉しいとアリエーテは思っている。
 出されたお茶を飲んで、ずいぶん体が温かくなった。

「別れがたいな。このままここに置きたいが、アリエーテにはやることがある」
「イグにもやることがありますわ。体調を整えて議会にも出なくては……」
「そうだな。アリエーテをなくしたと思い、すべてが嫌になってしまったのだ」
「私もイグに会えなくて、とても寂しかったの」
「もう寂しい思いはさせない。約束をしよう」

 力強い言葉に、アリエーテは微笑む。

「約束してください」

 強く抱きしめられて、その心地よさに目を閉じる。

「家まで送って行こう」
「お願いします」

 イグレシアが立ち上がったので、アリエーテも立ち上がり、カーディガンを返す。
 外に出るならコートがある。使用人が持ってきたコートをイグレシアが着せてくれる。

「馬車の手配を頼む」
「畏まりました」

 使用人はダイニングから出て行く。
 馬車の手配はすぐにできて二人で宮殿の廊下を歩いて行く。

「殿下、コートをお召しください」
「ああ、ありがとう」
 
 イグレシアに素早く着せて、使用人は頭を下げて、立ち去った。

「結婚したら、私がコートを着せてもいいかしら」
「もちろんだよ」

 宮殿の外は雪がうっすらと積もっていた。

「これは寒いわけだ」
「本当に寒いですわね」

 抱き合うように馬車に乗って、体を寄せる。
 ふと目が合うと、イグレシアが口づけをしてきた。触れあうキスから、だんだん貪るようなキスに変わる。キスが初めのアリエーテは苦しくて、イグレシアにしがみついた。

「早く、結婚しよう」
「はい」

 馬車の中で二人は抱き合っていた。

「帰したくはない」
「また会えますよね?」
「すぐに会いに行こう」
「午後の仕事を早めに辞めます」
「そうしてくれ」
「はい」

 すぐに家に着き、イグレシアは家にいた父と母に挨拶して、体を治してもらったとお礼を言って帰って行った。

「お姉様、イグレシア様とエッチなことをしてきたんでしょ?」
「プリュームとは違うわ。イグレシア様はプリュームのせいでお加減を悪くされて、ベッドで寝たきりだったのよ」

 アリエーテは逃げだそうとしたプリュームの腕を掴んだ。

「イグレシア様の手紙を返しなさい」
「分かったわよ」

 プリュームは部屋に戻ると、大量な手紙を、アリエーテに渡した。

「どの手紙も同じよ」
「手紙を勝手に読んだのね」
「だって、毎日来るんですもの」
「プリューム、婚約破棄になるわよ。そんな恥知らずな事ばかりしていたら」
「もう、返したわ」

 プリュームは自分の部屋に逃げ込んだ。
 アリエーテは部屋に戻ると、一枚ずつ手紙を読んだ。大量な手紙は、プリュームが家に戻って来てから毎日書かれていた。心のこもった手紙を読みながら、アリエーテはイグレシアの優しさを感じていた。



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