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7 婚礼
1 引っ越し(1)
しおりを挟むアリエーテはお洒落をして、イグレシアが向かえに来るのを待っていた。
アリエーテにお洒落を教えたのは、由香だ。薄化粧をして、お洒落なワンピースを身につけると、髪をハーフアップにしてリボンを付ける。由香が自作した髪飾りもあり、どのお店にも売っていない品もある。わずかに香水をつけて、バックにはシルクのハンカチが入っている。
身支度を終えると、リビングに降りていく。
今日もプリュームが遊びに来ている。真っ新にしてしまったパズルを悩みながら作っている。
「アリエーテお姉様、手伝ってくださいな」
「壊したのは、プリュームよ」
「だって、こんなにたくさんのピースをはめるのは大変よ」
「イグが来るまでよ」
「お姉様、ありがとう」
アリエーテはパズルの端を埋めていく。一度作った物なので、なんとなく分かる」
「まず、端から埋めていくのよ。そうしたら、枠ができるでしょう?」
「それが難しいのよ」
「絵を想像するのよ」
「しているわよ」
一人で埋めるより二人の方が埋める速度が速い。
アリエーテはプリュームが埋めているエリアのピースをプリュームの近くにさりげなく置いていく。
プリュームがタクシスとパズルをするのを嫌がるのは、タクシスがさっさと埋めてしまうからだ。アリエーテはプリュームが満足できるようにピースを埋めていく。
「お姉様と一緒だと、早く埋まるわ」
アリエーテは微笑む。
生まれる前から一緒にいた妹のことは、何も言わなくても分かる。
プリュームの近くにピースを置いていく。
「アリエーテお嬢様、殿下がお越しです」
「はい」
アリエーテは手に持っていたピースをさりげなくプリュームの近くに置くと、席を立った。
「では、行ってくるわ。どれくらい埋まっているか楽しみね」
「行ってらっしゃい、お姉様」
アリエーテは外で待っているイグレシアの所に急いだ。
「アリエーテ、おはよう」
「イグ、おはようございます。お待たせしました」
「今日は両親を紹介してから、アリエーテの部屋を見てもらいたい」
「私のお部屋があるんですか?」
「僕の部屋と夫婦の部屋とアリエーテの部屋がある」
「なんだか贅沢ね」
「アリエーテは僕と結婚すればいずれ王太子妃になる。国賓の相手もしなければならないし、きっと忙しくなるだろう」
「忙しくなることは嫌ではないけれど、聖女の仕事は続けられますか?」
庭園のバラ園を見ながら、馬車が止められた敷地に向かう。
「聖女様は、この間のモレキュール王国の感染の祈りの後、亡くなったことになっている」
「まあ……、私は死人なのですね」
つい驚いて、大きな声をあげてしまった。
「政治に聖女の力を利用したくはないのだ。幸い、各国が聖女様死亡の新聞を出して、他国からお悔やみの手紙が届いているんだ。それは嘘だと言わなければ、勝手に亡くなったと思い込んでくれる」
「病気の人を治すこともできないの?教会には通いたいのだけど……」
イグレシアが馬車に乗り込み、手を引かれる。馬車に並んで座ってイグレシアはアリエーテの手を握ったまま、じっと見つめてくる。
「教会には時々通えるようにしよう。警備の者を付けさせてもらうが、国王とも相談した。我が国の国民に病気の者がでれば、治安も悪くなるだろうと……。今まで通り、予約制で決まった者だけ診るようにしよう」
「良かったわ」
「だが、優先は僕の妻としていることだ」
「ええ、わかったわ」
馬車はすぐに王宮へと到着した。
イグレシアが先に降りて、アリエーテの手を取る。
「さあ、これからアリエーテの家になるんだよ」
「実感が湧かないわ。ここには聖女として来たことはあるけれど……」
天井に天使が描かれたエントランスを通って、そのまま階段を上っていく。
(パーティー会場に行くのとは違う道だわ。謁見の部屋とも違うのね)
「今日は両親が待っているんだ」
「わざわざお迎えくださるのですか?」
「大袈裟に取らなくていいけど、緊張はするよな?僕もアリエーテの両親と話をするときは緊張するからな」
アリエーテはクスクス笑った。
「緊張していたの?」
「そりゃ、嫌われたら嫌だし。ヘタレた王子だと思われたら、顔も合わせられないよ。プリュームの事もあったしね」
今度は苦笑が浮かぶ。
(イグはプリュームに襲われて、心の病気になってしまったものね。悪いのはプリュームだから責められないわ。イグは誠実すぎて病気になってしまった……)
イグは今年、26歳になる。私は19歳になるのね。
子供の頃の約束を守り続けてくれた誠実な王子様だ。
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