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第一章 双星(小型浸透怪獣ギラル 突撃衝角怪獣ザンダ 近接火砲怪獣ガンガル 登場)

発見~あるいはどこまでが必然でどこまで偶然だったのか当人達に判別できれば苦労はしない~

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「勇、やっぱりここにいたのか。雪奈ちゃんは無事かい?」

「一緒にいます。突然様子がおかしくなったと思ったら気を失ってしまって、それから本殿が崩れて……」

 穴の中を良く覗いてみれば、勇は巫女さん衣装の女の子を抱きかかえていた。このゲームのメインヒロインの一人で勇と翔の幼馴染である桜塚雪奈だ。
 巫女さん衣装なのは病院にいる両親に代わって神社の仕事を通学前にしていたからだろう。
 物静かで若干内気な性格の少女で、天藤兄弟との仲はどちらも良好だが、特に同い年の勇の方に昔から思いを寄せている。
 ただ勇は恋愛に関しては典型的な鈍感草食系男子のため、これまでの所二人に全く進展は無い。
 翔はそれを察して二人の仲を取り持とうとしていた節があったが、残念ながらゲーム中では成果を出せないままに死んでいる。

「様子がおかしくなった?」

「はい。何だか雪奈さんじゃないみたいな、何かに憑りつかれたような口調で、『護星の神像を目覚めさせ荒神と戦え』とか。それで」

「それで?」

「崩れた本殿の奥に、何かがあるんです。全身は見えないんですが、巨大な像……と言うよりも、まるで巨大ロボットみたいな物が」

「巨大ロボット?」

 戸惑い切ったような口調で言う勇に対して和樹はわざとらしくならないように相槌を返した。
 本当はゲーム中で雪奈がトランス状態に入る時はさらに宙に浮いたり謎の発光現象を起こしたりしていたはずだが、さすがにそこまで話しても信じてもらえないと勇も思ったのだろう。
 和樹は緩い傾斜になっている本殿の穴を降りて勇と合流した。
 ゲームの描写だけでは良く分からなかったが、本殿の下には建物の広さ以上の空間が広がっていて、その奥に半ば土に埋まった形で人型の巨大な像が鎮座している。
 全身はくすんだ青色で、白い二本の角が左右に生え、赤い宝石のような物が二つ目のようにはめ込まれた顔は無機質な仮面の様。角の高さを除いた顔だけでも四メートル以上の大きさがある。
 像と言っても仏像などとは全く違う、雄々しさと機能性を感じさせるまるで甲冑ような印象を受ける戦闘的な作りだ。
 和樹が思わずそのスターブレイバーの顔を見上げていると、勇の腕の中で雪奈が目を覚ました。
 巫女さん衣装に似合う長い黒髪と大きな瞳が印象的な、中々の美少女だ。

「うっ……あ、勇君。それに翔兄さんも」

 雪奈は目を覚ますとすぐ目の前にあった勇の顔に一瞬頬を染めたが、気を失う前の状況を思い出したのか、すぐ表情を深刻な物に変えた。

「雪奈さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫、です……けど何があったんですか。ここは一体……」

「ここは桜塚神社の本殿の地下ですよ。何も覚えてないんですか?」

「えっと、勇君と話してたら急に意識が遠くなって……」

 そこまで勇に答えてから、奥にあるスターブレイバーが目に入ったのは雪奈は唖然として言葉を失った。

「雪奈ちゃん、あれは何だい?巨大な像……と言うよりも巨大ロボットに見えるんだけど」

 和樹がそう訊ねても雪奈は戸惑ったように首を横に振る。

「分からないです……いえ、ずっと昔にこの土地に荒神が現れて暴れた時、それと戦った神様が神像の形で神社の地下に眠っている、そんな言い伝えは聞いた事はありますけど、まさか本当にこんな物があるなんて……」

「荒神、か。これが勇が聞いた護星の神像、かな。けどこれを目覚めさせろってのはどう言う事なんだ?」

「……兄さん、少し雪奈さんをお願いします」

 勇がそう言うと雪奈を離し、スターブレイバーの方に歩き出した。

「おい、勇?」

「実は、昨日夢を見てたんです。これと似た何かが呼んでる夢を。だからひょっとしたら……」

 勇がそう言ってスターブレイバーに近付き、その胸の部分の紋章のようなパーツに触れる。
 すると一瞬スターブレイバーの全身に光のラインが走り、中から圧縮した空気を吹き出すような音がすると胸の部分の装甲が開いて操縦席が顔を出した。
 操縦席は球形で、ペダルとレバーが二本ずつ、そして椅子とコンソールが設置された簡素な構造だ。

「……まさか動くんですか?これ」

「少なくとも勇には反応してるみたいだな……理由は分からないが」

 事態に付いて行けない雪奈の言葉を補うように和樹は言った。
 実は雪奈がスターブレイバーをこの地に残した種族の末裔であり、彼女が無意識の内に認めたスターブレイバーの操縦者に相応しい人間に反応しているのだが、これは終盤に明かされる壮絶なネタバレであり、今の所は当人すら知り様が無い事実だ。
 恋愛感情は別として、同じぐらい長い付き合いで、恐らく人格的にも信用はされているであろう翔もひょっとしたら操縦者としては認められているのではないだろうか、とは思っていたが話がややこしくなるので試してみようとは思わなかった。
 そこで一際激しい振動と咆哮が響いた。
 いつの間にかかなり時間が経っていた。ザンダがすぐ近くまで来ているらしい。
 だがここまでくれば後は勇が戦うように後押しするだけだ。
 どうやらザンダ出現のタイミングがずれても、勇がスターブレイバーに乗るまでの流れはある程度ゲームに則った展開になるらしい。何か修正力のような物が働いているのだろうか。
 これなら慌てて様子を見に来る事も無かったかも知れない。和樹がそう思った時、足元の地面に不穏な影が映った。

「兄さん!危ない!」

 和樹がそれに気付くと同時に勇が警告の声を発する。
 咄嗟に雪奈を抱え、姿勢を低くしながらその場を飛び退る。
 不快な咆哮。そして爪が風を切る音。鋭い爪がほんのわずかな差で今まで和樹と雪奈がいた空間を通過する。
 ギラル。本殿から飛び込むと同時に攻撃を仕掛けていた。

(二匹目!?それも狙いすましたように勇と雪奈がいる所に!)

 偶然か、それともこれもゲーム本来の流れを再現をしようとする修正力か、あるいはゲーム中で説明がなかっただけでそもそも最初から異星人は勇と雪奈を狙ってギラルを送り込んでいたのか。

「こ、この怪物は…!?」

 雪奈は青ざめてよろけ掛け、勇も慌てて乗り込みかけてスターブレイバーから降りてこちらに駆け寄ろうとしてくる。

「勇!来るな!」

 和樹は拳銃を抜くと同時に咄嗟に鋭い口調で勇をとどめ、雪奈をスターブレイバーの方へと押しやった。
 勇も十七歳の高校生としてはかなりスペックは高い方だが、ギラルは素手の人間が戦いに加わった所でどうにかなる相手ではない。
 ここで勇や雪奈が生身で戦いに巻き込まれて命を落とすような危険を冒す訳には行かなかった。

「え、けど……」

「こいつは僕が何とかする。お前はお前がやるべき事をやるんだ」

「僕が、やるべき事」

「分かってるだろ、勇。理由は分からないがお前はそのロボットに選ばれたんだ。あの巨大怪獣と戦って皆と雪奈ちゃんを守るために。だから、ここは任せて雪奈ちゃんと一緒に行け。雪奈ちゃんもそのロボットの中の方が多分安全だ」

 我ながら勢いに任せた発言だったが、それでも勇は一瞬迷った後、雪奈の手を引き、スターブレイバーへと駆け込む。
 ギラルが和樹を無視するようにしてその勇と雪奈へと飛び掛かろうとした。
 やはりこいつは勇と雪奈のどちらか、あるいはその両方を狙っている。
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