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え、いきなり三人も!?
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目が覚めると、そこには三人の少女が並んでいた。
中央に立つ金髪ロングヘアの少女。
年齢的には十代後半だろうか。キリッとした目鼻立ちをした、整った顔をしている。
対してその右側の少女。
黒髪を頭の高い位置に束ね、悪戯げな瞳を俺に向けている。頭からは小さな角が二本生えており、瞳孔も縦長く、その瞳はどこか爬虫類を思わせた。
最後に左側の少女だ。
彼女を少女ーーーーと言うか、人間としてカテゴライズしていいのか迷った。
白いボブを顎のラインまで伸ばし、瞳は赤く染まっている。筆頭すべきはその頭の〝位置〟だ。
本来あるはずである頭が首から上には存在しておらず、ひょいとバッグの様に小脇に抱えられている。首の断面は巻かれたマフラーで視覚できないが、そこからはモクモクと白いモヤが立ち昇っている。
「あ……えっと」
どう切り出していいか分からなかった。
目が覚めると目の前に美少女だと?
まだ寝ぼけた俺の頭では、このシチュエーションに適した小粋な台詞は出てこなかった。
それはそうと、俺の自慢の妻であるマリアは絶世の美女だ。自慢? ああそれもある。だがしかし、それを今言う理由は極めてシンプルだった。
そう、目の前の少女達はマリアに匹敵する美少女だからである。
いやいや俺、馬鹿を言ってんじゃないよ。どれだけ可愛い少女達でもマリアが最強なのは揺るがない。マリアしか勝たんなのだ。
「やっと、目が覚めたんだね」
「え?」
「ずっと待ってたんだよ……お父さん」
「……お父さん?」
お父さんーーーーお父さんだと?
確かに俺には娘がいるが、一人娘だしまだ一歳だ。なんだこれ、新手の美人局か?
「ど、どこかの家の人と間違えてるんじゃないか?」
「そんな訳ないわ、確かに私達は父さんの娘よ」
「じゃあ名前言ってみてくれ」
「名前? 私の名前はイリアで、父さんの名前はジル。母さんはマリアよ」
「合ってる……って、イリア? いまイリアって言ったか!?」
「そう。こっちが次女のリーゼに、三女のハクよ」
イリアはまさに、たったひとりの俺の娘の名前だった。
「……確かに、面影はあるが」
マリア似の金髪で幼いながらも目鼻立ちは整っていた。街を抱っこして歩けば周りから俺の娘じゃないと散々罵られていたくらいだ。
「俺の膝の上でお漏らししてたイリアが、一晩でこんな立派になったのか……」
「お、おもらしッ……!」
「あ、イリア姉赤くなってるよ?」
「……まっかっか」
「コホン! 貴女達は黙りなさい!」
頬を染めるイリア(自称)は慌てて話題を変えた。
「お父さんは大きな勘違いをしているわ。目が覚めたのは一晩じゃなく、その記憶から十六年後なの」
「じゅ……え、なんて?」
「だから、十六年よ」
「……ジュウロクネン?」
「そう、十六年経ったの。お父さんは突然意識を失って植物状態になり、そしてお母さんも二人を産んで姿を消したの」
「待て待て、話が噛み合わないぞ。俺が仮に植物状態だったんなら、どうやってお前の妹達を……その、なんだ」
子作り、なんて口に出来なかった。
しかしイリアはそれを察したらしく、モジモジしながら続けた。
「それは、その……えっと、割と大丈夫だったみたいよ? 夜中に……ギシギシ言ってたし」
「……oh」
マリア、君は意外と大胆な性格だったんだね。知らなかったよ俺。植物状態らしい時の記憶を死ぬ気で思い出そうとしたが叶わぬ夢だった。
「……で、でもおかしいよな!? 俺とマリアは人間だぞ。イリアはともかく、妹二人はどう見ても魔族との混血だろう!」
ドラゴンガールとデュラハン娘を指さす。
「ん? あたしら?」
「ボク達も、ちゃんとパパのこども」
何を言ってるんだとばかりに俺を見る。
いや俺なんか間違った事言ったか?
俺とマリアに竜人族の親戚も居なければ首無し騎士族の親戚も居ない。覚醒遺伝的なものもあり得ない筈だ。
「じゃあ確かめてみようよ」
「確かめる? どうやって」
「それは、こう」
ハクが俺の懐にダイブしてきた。続いてリーゼもなだれ込んで来る。
「ちょっ……お前ら!」
こんな年端もいかない美少女を両脇にだと?
マリアに操を立てた俺でも、流石にこの状況じゃあ愚息も反応しーーーー
「……ない、だと?」
「どう? とーちゃん」
この二人は確かに美少女だが、このピクリとも来ない不思議な感情。
込み上げてくる愛おしいと思える感情ーーーー知っている、俺はこの感じを知っている。
「これは……もしかして、父性!?」
間違いない。
これは愛娘に対する感覚そのものだ。
「まさか……本当に俺の娘、なのか?」
「だからさっきから言ってるじゃーん」
「パパ、しつこくて理解がおそい」
「ふむ……」
色々と思うところはある。
何でこんな状況になったのか、そしてどうすれば良いのか分からない。まあだがしかし。
ポツリと佇む長女に視線を向ける。
「せっかくだ。イリアもギュッてしとくか?」
「!? ……し、しなくてーーーーいや、せっかくだから、ちょっとだけ」
ちょこんとイリアが俺の膝に乗ってくる。
(まぁ、なんだ)
分からない事だらけだが、俺はいきなり三人娘の父親になった事を受け入れた。
中央に立つ金髪ロングヘアの少女。
年齢的には十代後半だろうか。キリッとした目鼻立ちをした、整った顔をしている。
対してその右側の少女。
黒髪を頭の高い位置に束ね、悪戯げな瞳を俺に向けている。頭からは小さな角が二本生えており、瞳孔も縦長く、その瞳はどこか爬虫類を思わせた。
最後に左側の少女だ。
彼女を少女ーーーーと言うか、人間としてカテゴライズしていいのか迷った。
白いボブを顎のラインまで伸ばし、瞳は赤く染まっている。筆頭すべきはその頭の〝位置〟だ。
本来あるはずである頭が首から上には存在しておらず、ひょいとバッグの様に小脇に抱えられている。首の断面は巻かれたマフラーで視覚できないが、そこからはモクモクと白いモヤが立ち昇っている。
「あ……えっと」
どう切り出していいか分からなかった。
目が覚めると目の前に美少女だと?
まだ寝ぼけた俺の頭では、このシチュエーションに適した小粋な台詞は出てこなかった。
それはそうと、俺の自慢の妻であるマリアは絶世の美女だ。自慢? ああそれもある。だがしかし、それを今言う理由は極めてシンプルだった。
そう、目の前の少女達はマリアに匹敵する美少女だからである。
いやいや俺、馬鹿を言ってんじゃないよ。どれだけ可愛い少女達でもマリアが最強なのは揺るがない。マリアしか勝たんなのだ。
「やっと、目が覚めたんだね」
「え?」
「ずっと待ってたんだよ……お父さん」
「……お父さん?」
お父さんーーーーお父さんだと?
確かに俺には娘がいるが、一人娘だしまだ一歳だ。なんだこれ、新手の美人局か?
「ど、どこかの家の人と間違えてるんじゃないか?」
「そんな訳ないわ、確かに私達は父さんの娘よ」
「じゃあ名前言ってみてくれ」
「名前? 私の名前はイリアで、父さんの名前はジル。母さんはマリアよ」
「合ってる……って、イリア? いまイリアって言ったか!?」
「そう。こっちが次女のリーゼに、三女のハクよ」
イリアはまさに、たったひとりの俺の娘の名前だった。
「……確かに、面影はあるが」
マリア似の金髪で幼いながらも目鼻立ちは整っていた。街を抱っこして歩けば周りから俺の娘じゃないと散々罵られていたくらいだ。
「俺の膝の上でお漏らししてたイリアが、一晩でこんな立派になったのか……」
「お、おもらしッ……!」
「あ、イリア姉赤くなってるよ?」
「……まっかっか」
「コホン! 貴女達は黙りなさい!」
頬を染めるイリア(自称)は慌てて話題を変えた。
「お父さんは大きな勘違いをしているわ。目が覚めたのは一晩じゃなく、その記憶から十六年後なの」
「じゅ……え、なんて?」
「だから、十六年よ」
「……ジュウロクネン?」
「そう、十六年経ったの。お父さんは突然意識を失って植物状態になり、そしてお母さんも二人を産んで姿を消したの」
「待て待て、話が噛み合わないぞ。俺が仮に植物状態だったんなら、どうやってお前の妹達を……その、なんだ」
子作り、なんて口に出来なかった。
しかしイリアはそれを察したらしく、モジモジしながら続けた。
「それは、その……えっと、割と大丈夫だったみたいよ? 夜中に……ギシギシ言ってたし」
「……oh」
マリア、君は意外と大胆な性格だったんだね。知らなかったよ俺。植物状態らしい時の記憶を死ぬ気で思い出そうとしたが叶わぬ夢だった。
「……で、でもおかしいよな!? 俺とマリアは人間だぞ。イリアはともかく、妹二人はどう見ても魔族との混血だろう!」
ドラゴンガールとデュラハン娘を指さす。
「ん? あたしら?」
「ボク達も、ちゃんとパパのこども」
何を言ってるんだとばかりに俺を見る。
いや俺なんか間違った事言ったか?
俺とマリアに竜人族の親戚も居なければ首無し騎士族の親戚も居ない。覚醒遺伝的なものもあり得ない筈だ。
「じゃあ確かめてみようよ」
「確かめる? どうやって」
「それは、こう」
ハクが俺の懐にダイブしてきた。続いてリーゼもなだれ込んで来る。
「ちょっ……お前ら!」
こんな年端もいかない美少女を両脇にだと?
マリアに操を立てた俺でも、流石にこの状況じゃあ愚息も反応しーーーー
「……ない、だと?」
「どう? とーちゃん」
この二人は確かに美少女だが、このピクリとも来ない不思議な感情。
込み上げてくる愛おしいと思える感情ーーーー知っている、俺はこの感じを知っている。
「これは……もしかして、父性!?」
間違いない。
これは愛娘に対する感覚そのものだ。
「まさか……本当に俺の娘、なのか?」
「だからさっきから言ってるじゃーん」
「パパ、しつこくて理解がおそい」
「ふむ……」
色々と思うところはある。
何でこんな状況になったのか、そしてどうすれば良いのか分からない。まあだがしかし。
ポツリと佇む長女に視線を向ける。
「せっかくだ。イリアもギュッてしとくか?」
「!? ……し、しなくてーーーーいや、せっかくだから、ちょっとだけ」
ちょこんとイリアが俺の膝に乗ってくる。
(まぁ、なんだ)
分からない事だらけだが、俺はいきなり三人娘の父親になった事を受け入れた。
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