1 / 1
父が政府に殺された日、僕は最後に父の目を見た。
しおりを挟む僕の父は、死んだ。死んだというよりか、殺された。
僕の父は、政府に殺された。理由は、僕の父が政府の不正を密告しようとしたからだそう。しかし、僕は受け入れられなかった。
現在、僕は十一歳。父親が大好きな年頃だ。僕と父の家族関係は、とても良好。なのに…どうして突然僕の父はいなくなってしまったの?
父は新聞記者をしていた。僕は今、その会社のビルの屋上にいる。蒼がどこまでも広がる空を見ながら、僕は父が逝ってしまった日のことを思い出すのだった。
来ると知っていた。今、これが別れの時。
父が刑務所のようなところで、今からギロチンに首を通す前に、僕たちと最後の雑談をしていた。
「おお、凛。来てくれたのか」
もちろん来るよ。だって、父との最後の会話だ。それに、母は先に病気で亡くなってしまった。僕が来ないで、誰が来るんだ。
「と、父さん…」
「大丈夫だ。お前ならきっと俺無しでもやっていける」
そして、父は聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で言った。
「…生まれてきてくれて、ありがとな」
その言葉を聞いて、僕の目からは一粒の雫が零れ落ちた。
僕が涙を流している最中にも父は、処刑台に向かっていた。
ああ。
父とは色々な思い出があった。甦る記憶。僕の誕生日には一緒にケーキを食べたり。両親の結婚記念日は三人で外食したり。僕が病気に罹ったら、付きっ切りで看病してくれたり。
…思い出すだけでも、涙が溢れてしょうがない。しかし、父は僕に一度も涙を見せることなく、常に笑顔だった。
ついに訪れた、処刑の瞬間。処刑される直前に父は、僕の目をまっすぐと見ているのがわかった。
その時が、父の目を見た最後の日だった。
次に視界に広がったのは、赤だった。混じりっ気の無い、純粋な赤だった。あんなに気高く、強かった、僕の父が…。今、死んだ。
僕は嘆き、悲しんだ。その瞬間から僕の頭の中は、政府への、怒り、憎しみ、恨みが支配した。しかし、僕には力も、権力もないため、何も手は出せなかった。
その日の帰り見たのは、歪んだ夜空だった。そのまま歪み切って、こんな理不尽な世界を消して欲しいと思った。
また涙が出そうになったが、こらえる。
家に着いても僕は落ち着かなかった。もう、あの日は戻らない。そう考えるだけで、胸が締め付けられるような感覚になった。
あれから、数日後。僕は、父との思い出を忘れないようにするため、父の遺品を整理していた。すると、父がよく読んでいた本に手紙がはさんであった。
僕は驚き、恐る恐るその手紙に手を伸ばした。その手紙は、遺書だった。遺書にはこう書いてあった。
我が子へ
私はもう、行かなければならない
今、まさに、天に昇る瞬間だ
私は、お前に残りを託す
この世で、しっかりと生きろ
どんな辛いことがあろうとも
どんな理不尽があろうとも
未練を残したまま
諦めて、命を断ってはいけない
苦しさを乗り越え
何としてでも生き抜くんだ
絶対に私についてきてはいけない
頼んだぞ
父より
僕の目からは、いつの間にか涙が零れていた。涙を流しながら、父の遺書について考えた。
物事の終わりはいつ決めるべきなのか。自分でタイミングを決めるのには、勇気がいる。しかし、大抵の場合、終わりは突然やってくる。とは言っても。終わりを迎えたその時には、全力を尽くし満足しているから、もうこの世に未練は無い。
時は流れ、道は続き、現在に至る。父の遺書を見て、泣き崩れながらもここに来た。僕は、父の遺書を「未練を残したまま死ぬな」と解釈した。
今の僕には、未練も何も無い。もう此世には、何も無い。そう思いながら、ビルのフェンスを越える。そして僕は…身を投げた。
重力に従って、体が地面に近づいて行く。常人なら、きっと「怖い、死にたくない」と考えるだろう。しかし、僕は違った。僕は、気を楽にしながら宙に身を任せた。
もう此処で生きる意味も無くなった。今行くよ…父さん、母さん。これが後追いだってことは、分かってる。しかし、父さんと母さんの二人がいない世界なんて、耐えられない。
親不孝の息子で…ごめんね。
父さんの意思を無視してごめんね。母さん…待たせてごめんね。
これが…最後の我儘だよ。そうして、僕の意識は消えていくのだった。
父さん……。母さん……。今、行くよ。
願わくば、天でも幸せな家庭を築けますように…。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる