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2.チョコチップ
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「何を根拠に。そして、そんな私の前に現れたこと、さっぱり意味がわからない。」
「君の目を見ればそんなことはすぐにわかる。だから君の目の前に現れた。私は信じていないものの前に現れるんだ。明日に希望を抱き、何かを信じ、強く生きたいと思う者にこそ天変地異が襲い、命を奪う、なんてのはよくある話だね。残念だが、それが自然の道理なんだ。疑心暗鬼にマッチの火が消えるのをただ黙って見ているような君の前に、頭のいかれた老人が現れ、変わった能力を授けると言う。実に合理的な話だろう。」
中学校に入ったばかりの時、マイナスにマイナスを掛けたらプラスになると、ある数学教師は言っていた。彼は唇の下に大きなほくろを付けていたので、生徒からチョコチップと呼ばれていた。
数学は人生に応用できるものだと思っていた。そうでなければ学ぶ意味なんてない。私の人生は灯のない街道を歩いてきたようなものだったが、そんな暗闇でも歩いていれば、きっと活気に満ちた繁華街に出られると信じていた。しかしそんなことはなく、マイナスにマイナスがプラスされただけだった。中学3年生に上がる時には、数学もチョコチップも嫌いになっていた。
しかし何故だろう。老人の言葉は妙に私を納得させた。彼がもしセールスマンだったら、今頃手の届かない額の壺を買っていたかもしれないし、彼がもし宗教勧誘だったら、今頃彼の宗教を強く崇拝していたかもしれない。
何がそうまで思わせたのか明らかではないが、今目の前にある数式だけは信じられた。
不合理の不合理は、合理なのだ。
「君の目を見ればそんなことはすぐにわかる。だから君の目の前に現れた。私は信じていないものの前に現れるんだ。明日に希望を抱き、何かを信じ、強く生きたいと思う者にこそ天変地異が襲い、命を奪う、なんてのはよくある話だね。残念だが、それが自然の道理なんだ。疑心暗鬼にマッチの火が消えるのをただ黙って見ているような君の前に、頭のいかれた老人が現れ、変わった能力を授けると言う。実に合理的な話だろう。」
中学校に入ったばかりの時、マイナスにマイナスを掛けたらプラスになると、ある数学教師は言っていた。彼は唇の下に大きなほくろを付けていたので、生徒からチョコチップと呼ばれていた。
数学は人生に応用できるものだと思っていた。そうでなければ学ぶ意味なんてない。私の人生は灯のない街道を歩いてきたようなものだったが、そんな暗闇でも歩いていれば、きっと活気に満ちた繁華街に出られると信じていた。しかしそんなことはなく、マイナスにマイナスがプラスされただけだった。中学3年生に上がる時には、数学もチョコチップも嫌いになっていた。
しかし何故だろう。老人の言葉は妙に私を納得させた。彼がもしセールスマンだったら、今頃手の届かない額の壺を買っていたかもしれないし、彼がもし宗教勧誘だったら、今頃彼の宗教を強く崇拝していたかもしれない。
何がそうまで思わせたのか明らかではないが、今目の前にある数式だけは信じられた。
不合理の不合理は、合理なのだ。
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