1 / 1
俺たちはどうなるのだろう、そんなこと誰にもわからないっすよ
しおりを挟む
俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今日も相変わらずスライム退治。
数匹退治してしょぼい報酬を冒険者ギルドで貰って、安い宿屋で寝る。
正直、毎日がつまらない。
ベッドで寝転び天井を見つめながら、俺は相棒にぼやく。
「おい、俺たちはこれからどうなるのだろう」
「そんなこと誰にもわからないっすよ」
「このまま、本当にスライム退治で人生が終わってしまうのだろうか」
「まあ、終わるんじゃないすか」
相棒が気の抜けた声で返事した。
「おい、はっきり言うなよ」
「けど、実際、そうなるんじゃないすかね」
「あのなあ、このまま毎日しょぼくれたスライムの顔を見ながら、死んでいくんだぞ。それでいいのかよ、お前は!」
「まあ、そういう人生もあるっていうことじゃないすか……」
なんだか、隣のベッドで横になってる相棒は眠そうだ。
おっさんのぼやきなんて聞きたくないのだろう。
けど、このままでいいのかと、やはり俺は思う。
「おい、俺はもうおっさんだから、もうしょうがないとしても、お前はまだ若いだろ。もっと頑張れよ」
「いくら頑張っても、ダメな奴は何をやってもダメっすよ」
「そんなこと言っていたら、あっという間に俺みたいなおっさんになってしまうぞ」
「うーん、それは嫌っすねえ」
「だったら、もっとやる気出せよ」
「そっすね……けど、とりあえず、今日は眠いっす……明日から頑張ることにしまっすよ」
「おいおい、それが毎日続いて、いつの間にか年寄りになっちまうんだぞ」
「けど、結局、みんなそんなもんじゃないんすか」
「ドラゴン倒して、有名な冒険者になろうとかしないのかよ。このまま無名のスライム退治専門の冒険者で終わっていいのかよ」
「でも、この前に遺跡で会った有名な冒険者だった人ですけど、俺っちは一切知らなかったすよ。結局、誰もが老いるし、死から逃れられないし、そして、みんないつかは忘れられるんすよ」
本当にこいつはやる気のない奴だなあ。
とは言え、俺もいい加減に過ごしてたら、気が付くとおっさんだ。
時間は戻らない。
ああ、若い頃が懐かしいなあ。
体も元気、やる気もあった。
今はベッドで寝るのが一番の楽しみだ。
「全く、なんでこんな人生を送ってしまったのだろう」
「だから、ほとんどの人はそんな風に考えながら死んでいくんすよ」
「お前、すっかり諦めてないか」
「諦めてはないすよ。ただ、リーダーみたいに大冒険するとか考えてもしょうがないっすよ。冷静に自己分析すると、まあ、とりあえずスライム退治しているのが一番かなと」
「お前、夢が無いな」
「リーダーみたいに大冒険して、なぜか美少女と仲良くなるとか妄想しているよりはましっすよ」
「うるさいぞ」
「まあ、人間いつ死ぬかわかりませんすよ。『人は皆、時の定まぬ死刑囚』って言葉もありますよ。偶然、生まれて、偶然、死んでいくんすよ」
何だか、相棒は哲学的なことを言ってるけど、やっぱりおっさんのぼやきなんか聞きたくないし、さっさと寝たいだけかもしれない。
ああ、何もかも嫌になってきた。
「何だか何もかも嫌になってきた。もう俺、自殺しようかなあ。何か、楽に死ねるいい方法はないだろうか」
「ちょっと、リーダー、元気出してくださいよ。自殺とかカッコ悪いっすよ。腐っても冒険者なんだから。つーか、俺っちを巻き込むのはやめてくださいよ」
「巻き込まないよ。でも、死ねば全て楽になるんだと思ったりもするんだなあ」
「だったら巨大ドラゴンに突っ込んで死んだらどうすかって、そんな機会、くたびれたおっさんのリーダーには一生こないっすね。依頼はスライム退治ばかりなんだから」
「うるさいぞ」
ふう、ため息をつく俺。
つまらん人生だ。
すると、その時、建物が揺れた。
地震だ。
かなりでかい。
焦った俺はすばやく起きる。
ううむ、腹がつかえたが、何とかベッドの下に潜り込んだ。
しばらくして、地震がやんだ。
相棒はベッドの上でのんびりとしてやがる。
「おい、地震の時はすばやくベッドの下に潜り込めって前に言っただろ」
「ちょっと大きかったけど、まあ、地震ごときで騒いでもしょうがないんじゃないすか。だいたい、さっき自殺しようとしていたリーダーは、なんで、助かろうとしてるんすか。落ちてきた屋根に押しつぶされて、あの世に逝ったら、事故死ってことで自殺よりはカッコいいんじゃないすか」
「うるさいぞ」
確かに、さっきまで自殺したいとか言っていたのに地震ごときで慌てふためいてしまった。
結局、死にたくないってことか。
「いや、死にたくないのではない。どうせならカッコよく死にたいんだ」
「だから、スライム退治でカッコよく死ねないっすよ」
「そうだよ、だから大冒険をするんだよ。財宝だ! 美少女だ!」
「はいはい、俺っちはもう寝るっすよ」
毛布にくるまりすっかり眠ってしまう相棒。
しかし、何とかならないものだろうか。
俺は冒険者として、一度でいいから栄光がほしいんだ。
よし、絶対に一度は大冒険するぞ。
そう心に決めて、ベッドにまた寝転ぶ俺。
それにしても、最近、地震が多いな。
〔END〕
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
そして、今日も相変わらずスライム退治。
数匹退治してしょぼい報酬を冒険者ギルドで貰って、安い宿屋で寝る。
正直、毎日がつまらない。
ベッドで寝転び天井を見つめながら、俺は相棒にぼやく。
「おい、俺たちはこれからどうなるのだろう」
「そんなこと誰にもわからないっすよ」
「このまま、本当にスライム退治で人生が終わってしまうのだろうか」
「まあ、終わるんじゃないすか」
相棒が気の抜けた声で返事した。
「おい、はっきり言うなよ」
「けど、実際、そうなるんじゃないすかね」
「あのなあ、このまま毎日しょぼくれたスライムの顔を見ながら、死んでいくんだぞ。それでいいのかよ、お前は!」
「まあ、そういう人生もあるっていうことじゃないすか……」
なんだか、隣のベッドで横になってる相棒は眠そうだ。
おっさんのぼやきなんて聞きたくないのだろう。
けど、このままでいいのかと、やはり俺は思う。
「おい、俺はもうおっさんだから、もうしょうがないとしても、お前はまだ若いだろ。もっと頑張れよ」
「いくら頑張っても、ダメな奴は何をやってもダメっすよ」
「そんなこと言っていたら、あっという間に俺みたいなおっさんになってしまうぞ」
「うーん、それは嫌っすねえ」
「だったら、もっとやる気出せよ」
「そっすね……けど、とりあえず、今日は眠いっす……明日から頑張ることにしまっすよ」
「おいおい、それが毎日続いて、いつの間にか年寄りになっちまうんだぞ」
「けど、結局、みんなそんなもんじゃないんすか」
「ドラゴン倒して、有名な冒険者になろうとかしないのかよ。このまま無名のスライム退治専門の冒険者で終わっていいのかよ」
「でも、この前に遺跡で会った有名な冒険者だった人ですけど、俺っちは一切知らなかったすよ。結局、誰もが老いるし、死から逃れられないし、そして、みんないつかは忘れられるんすよ」
本当にこいつはやる気のない奴だなあ。
とは言え、俺もいい加減に過ごしてたら、気が付くとおっさんだ。
時間は戻らない。
ああ、若い頃が懐かしいなあ。
体も元気、やる気もあった。
今はベッドで寝るのが一番の楽しみだ。
「全く、なんでこんな人生を送ってしまったのだろう」
「だから、ほとんどの人はそんな風に考えながら死んでいくんすよ」
「お前、すっかり諦めてないか」
「諦めてはないすよ。ただ、リーダーみたいに大冒険するとか考えてもしょうがないっすよ。冷静に自己分析すると、まあ、とりあえずスライム退治しているのが一番かなと」
「お前、夢が無いな」
「リーダーみたいに大冒険して、なぜか美少女と仲良くなるとか妄想しているよりはましっすよ」
「うるさいぞ」
「まあ、人間いつ死ぬかわかりませんすよ。『人は皆、時の定まぬ死刑囚』って言葉もありますよ。偶然、生まれて、偶然、死んでいくんすよ」
何だか、相棒は哲学的なことを言ってるけど、やっぱりおっさんのぼやきなんか聞きたくないし、さっさと寝たいだけかもしれない。
ああ、何もかも嫌になってきた。
「何だか何もかも嫌になってきた。もう俺、自殺しようかなあ。何か、楽に死ねるいい方法はないだろうか」
「ちょっと、リーダー、元気出してくださいよ。自殺とかカッコ悪いっすよ。腐っても冒険者なんだから。つーか、俺っちを巻き込むのはやめてくださいよ」
「巻き込まないよ。でも、死ねば全て楽になるんだと思ったりもするんだなあ」
「だったら巨大ドラゴンに突っ込んで死んだらどうすかって、そんな機会、くたびれたおっさんのリーダーには一生こないっすね。依頼はスライム退治ばかりなんだから」
「うるさいぞ」
ふう、ため息をつく俺。
つまらん人生だ。
すると、その時、建物が揺れた。
地震だ。
かなりでかい。
焦った俺はすばやく起きる。
ううむ、腹がつかえたが、何とかベッドの下に潜り込んだ。
しばらくして、地震がやんだ。
相棒はベッドの上でのんびりとしてやがる。
「おい、地震の時はすばやくベッドの下に潜り込めって前に言っただろ」
「ちょっと大きかったけど、まあ、地震ごときで騒いでもしょうがないんじゃないすか。だいたい、さっき自殺しようとしていたリーダーは、なんで、助かろうとしてるんすか。落ちてきた屋根に押しつぶされて、あの世に逝ったら、事故死ってことで自殺よりはカッコいいんじゃないすか」
「うるさいぞ」
確かに、さっきまで自殺したいとか言っていたのに地震ごときで慌てふためいてしまった。
結局、死にたくないってことか。
「いや、死にたくないのではない。どうせならカッコよく死にたいんだ」
「だから、スライム退治でカッコよく死ねないっすよ」
「そうだよ、だから大冒険をするんだよ。財宝だ! 美少女だ!」
「はいはい、俺っちはもう寝るっすよ」
毛布にくるまりすっかり眠ってしまう相棒。
しかし、何とかならないものだろうか。
俺は冒険者として、一度でいいから栄光がほしいんだ。
よし、絶対に一度は大冒険するぞ。
そう心に決めて、ベッドにまた寝転ぶ俺。
それにしても、最近、地震が多いな。
〔END〕
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる