ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険

守 秀斗

文字の大きさ
27 / 82

第27話:吸血鬼対策会議

しおりを挟む
 翌日、警備隊本部に呼ばれた。

 あたしの他にアレサンドロ大隊長、セルジョ小隊長、リーダー、バルド、ロベルトの計六名。
 事前に赤ひげのおっさんから、例の二名の女性が殺された事件の資料を渡された。

 会議場に着くと、ルチオ教授、それにカルロさんとアナスタシオさんの兄弟がすでに座っていた。
 前の席に偉そうに座っているのは、警備総監かな。
 名前知らないや。

 その警備総監がアレサンドロのおっさんに声をかける。

「今回は極秘捜査なんで、よろしく頼む」
「人数が少ないと思いますが、大丈夫でしょうか」

 赤ひげのおっさんが意見を言った。
 確かに少ないなあ。
 こんだけの人数で大丈夫か。

「我々が居れば大丈夫です」

 ルチオ教授が胸を張った。
 えらい自信やね。
 大丈夫か、爺さん。

「吸血鬼ヴラディスラウス・ドラクリヤ四世は女性しか狙いません。昼間に行動できる吸血鬼はヴラディスラウス・ドラクリヤ四世だけであります。また、ヴラディスラウス・ドラクリヤ四世は一度行動を起こすと狭い地域でしか活動しません。よって、犯人はヴラディスラウス・ドラクリヤ四世であります」

 どうゆう論法なんだ、爺さん。
 根拠薄弱じゃね。

 だいたい、ケンカ番長は諸国を漫遊しているみたいだぞ。
 狭い地域でしか活動しませんって、どういうことだ。

 警備総監がアレサンドロのおっさんに質問している。

「現場の責任者は誰だ」
「プルム分隊長です」

 そうか、あたしが責任者か。
 面倒だな。
 さぼって昼寝が出来ないじゃないか。

「アデリーナ隊員とサビーナ隊員は参加しなくていいんですか」

 バルドが質問した。

「この吸血鬼は女性の血液を吸って殺してしまう。女性隊員には危険だ。男だけで捜査を行う」 
 
 警備総監がそう答えるんだけどさあ。

 何だと、あたしは女だぞ!
 思わず、あたしは発言した。

「あのー、私は女ですが」
「ああ、忘れていた、お前は女だったな。まあ、皆さん、プルム分隊長はかの有名なドラゴンキラーだから心配する必要は全くありませんよ、ガハハ!」

 大笑いの赤ひげのおっさん。
 何だと! 笑い事じゃないぞ、ふざけんな赤ひげ。
 このパワハラ及びセクハラオヤジ!

 あれ、みんなも笑ってる。
 何なんだよー! みんなバカにしやがって。

 おっ、アナスタシオさんは笑わないで、真剣な顔をしている。
 素敵。

 そして、今度はリーダーがルチオ教授に質問している。

「どうやって、吸血鬼を退治するんですか」
「十字架ですね。これが私が開発した十字架装填式クロスボウです」

 ルチオ爺さんが、変てこなクロスボウを皆の前で自慢気に掲げた。

「このクロスボウで先端を鋭く削った銀製の十字架を発射できます。回転式弾倉に十本こめられます」

 弓みたいなもんか。
 弓使いのサビーナちゃんが参加できればなあ。

 あれ、そう言えば、ケンカ番長は俺様には十字架は効果が無いみたいな事を言ってたぞ。
 大丈夫なんか?

「この間、支給されたライフル銃じゃダメなんすか。オイラ、本番で一度撃ってみたいんすよねえ」

 ロベルトが椅子を斜めにして後ろ脚だけで、体をゆらゆらさせながら発言してる。
 警備総監が出席している会議でもチャラ男はチャラ男。

「普通の銃弾では、多少止めることは出来ても、倒すことは出来ないでしょうな」

 ルチオ爺さんが発言した。

「ヴラディスラウスってのは、どんな風体なんすか?」

 ロベルトが聞いているけど、なんすかはないだろう、なんすかは。
 あたしも会議ではちゃんとした敬語で話すのに。

「プロレスラーみたいな巨体ですな」

 爺さんはそう言いながら、葉巻に火を点けた。

「そりゃあ、的が大きくて良さそうっすね」

 ロベルトがいつものようにヘラヘラして言った。
 能天気な奴だな。

 会議が終わって、ルチオ教授が警備総監と談笑しているあいだに、そっとアナスタシオさんに近づこうと思ったら、さっさと会議場から出てしまった。
 仕方がないので、カルロさんにこっそり質問する。

「この吸血鬼は、本当に、えーと、そのヴラディスなんとか四世なんでしょうか?」
「ヴラディスラウスが首都に潜入したのは間違いありませんね。目撃者もいます」

 背の高いカルロさんが、チビのあたしを見下ろしながらも、にこやかに答えてくれる。

「十字架は効果あるんですか」
「多分、無いですね」
「へ?」 

「ヴラディスラウス・ドラクリヤ四世には太陽光も効かないし、十字架も効果無いです」
「じゃあ、さっきの武器は何なんですか」
「うーん、まあ要するに弓矢だから、多少効果はあるんじゃないですか」

 何かいい加減だぞ。
 本当に高名な吸血鬼ハンターなのか、あの爺さん。

「ニンニクはどうですか」
「うーん、それは分からないですねえ」

 分からないのか。ニンニク復讐作戦は有効かもしれないなあ。ニンニクの詰め合わせをお歳暮でケンカ番長の自宅に送りつけるってのもいいなとあたしは思った。

「この吸血鬼の目的は強い奴と格闘するだけみたいですね。他はトマトジュースを万引きして飲むくらいです」

 何じゃそりゃ! ケンカ番長の奴、いっそのこと、格闘技世界一決定戦にでも出場すればいいのに。あと、万引きって吸血鬼がすることかね。まるであたしみたいじゃん。

「じゃあ、今回の二名の女性が殺された事件とは関係ないんですか?」
「その可能性はありますね」

「けど、ルチオ教授はヴラディスラウスで間違いないって、会議で発言してたじゃないですか」
「うーん、そうなんですけど、教授の学説や理論はちょっと古いんですよ。ヴラディスラウス・ドラクリヤ四世は、昔はうつ病で何百年も自宅の城に引きこもっていて、その間、たまに城の周辺のごく狭い地域しか現れなかったらしいんですけどね。外出するときは、なぜか昼間ばっかりだったらしいですが。それが最近、一念発起して武者修行の旅に出たみたいです」

 こらこら、学説や理論とか言ってる場合じゃないだろ、人の命がかかってるのに。

「何で、反論しないんですか」
「いやあ、あんまりルチオ教授に反論したくないんですよ。授業の単位落とされるかもしれないし」

 おいおい、単位と人の命どっちが大事なんだ。
 気さくというよりいい加減な人だな、カルロさん。

「まあ、首都に潜入したのは確かだと思うんですよ。目撃者もいますし。で、誰を狙っているのかと思ってたんですが、昨日、プルムさんと会った時、分かったんです。狙いは、かの有名なドラゴンキラーことプルムさんだなと」

 いや、もう一度狙われて倒されたから、あたしのとこには来ないんじゃないかと言おうとしたが、事情を説明すると、あたしが乙女ということがばれてしまう。

 うーん、どうしよう。

「実は、僕はヴラディスラウスの奴と戦ったことがあるんです。国内の各市対抗戦のアマチュアボクシングのチャンピオンだったんですが、いきなり真っ昼間の路上で勝負を挑まれたんですよ」
「え、本当ですか。それで、どうなったんですか」

「大怪我して、この顔面の傷が残りました。入院してたら、ついでに大学も留年です」
「あ、そうだったんですか。大変でしたね」
「だから、復讐してやろうと思ってるんですけどね。ボクシングジムで体を鍛え直しましたから。今度はボコボコにしてやりますよ」

 カルロさんはあたしの前でシャドーボクシングをする。

「シュッ、シュッ!」と短く息を吐きながら、シャドーボクシングをするカルロさんを見ながら、私怨で捜査に協力とはまずいんじゃねとあたしは思った。
 まあ、あたしもケンカ番長にニンニクをぶつけてやろうと思ってるけどね。

 けど、ボクシングで倒すって、もう吸血鬼ハンターでも何でもないじゃん。
 チンピラどうしの喧嘩みたいだぞ。
 吸血鬼ホラーのロマンチックのかけらもない。

 それにしても、ケンカ番長じゃないとすると女子学生やパン屋のおかみさんを襲ったのは誰なんだ? カルロさんにまた聞いてみる。

「では、ヴラディスラウスじゃないとすると、今回の被害者を襲ったのは、どういう吸血鬼なんでしょう」
「分からないですね。まあ、吸血鬼には変わらないようなので、何とかしますよ。それに、プルムさんがいればヴラディスラウスの奴も現れるので一緒に退治してやろうと思ってるんです。一石二鳥ですね」

 にこやかに笑うカルロさん。

 こら! あたしを囮にする気だったのかよ。
 何だかふざけた人だなあ、カルロさん。
 ケンカ番長の件はもう黙っておこうっと。

 え? お前もふざけとるって? この事件を利用して、イケメンのアナスタシオに近づくつもりだろって? すんまへん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...