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第50話:演劇『ドラゴンキラー』を見に行く
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さて、アナスタシアさん主演の舞台『ドラゴンキラー』をみんなで見に行くことにした。年休やら非番やら、いろいろと調整して、あたしとリーダー、バルド、サビーナちゃん。但し、アデリーナさんが忙しくて来れないので、仕方なくロベルトを誘う。
国立劇場に行くと長蛇の列だ。
北地区の警備隊員が入口に一応居るけど、なんとなくおなざりの身体検査及び荷物検査。
あたしは、袖にナイフを隠しているんだけど、あっさり通過する。
やる気ないね。
あたしに言われたくないだろうけど。
けど、事前に北地区警備隊大隊長に電話でちょっと聞いたら、初日から二週間経ったが、今のところ怪しい奴は見つからず、異常は無いようだ。
単に嫌がらせで、手紙を送っただけかもしれないな。
今日は千秋楽。
一応、客席の端っこに、つまらなそうに警備隊員が何人か立っている。
あくびしてる隊員もいるぞ。
やる気無し。
あたしと同じだな。
あたしたちは最前列の席だ。
リーダーの隣に座ろうとしたら、なぜかロベルトが先に座りやがった。
ったく、このチャラ男はもっと周りに気を使えと勝手に怒るあたし。
あれ、舞台の端っこの方に、私服で目つきの鋭い連中が何人か隠れているぞ。
いや、あれは北地区の自警団員だな。
警備隊員より張り切っている感じ。
給料を貰っているほうがあくびして、貰ってない方がやる気を出しているぞ。
不思議ですなあ。
ボランティアなのに、ご苦労様です。
劇場は超満員だ。
立ち見客までいるぞ。
人気あるんだね、アナスタシアさん。
演劇が予定の時間通り始まった。
肝心の劇の内容は、全てアナスタシアさん演じるあたしが仕切っている。
最初は、シアエガ湖近くの洞窟のモンスター退治。
舞台上では、あたしを演じているアナスタシアさんがかっこよく、モンスターたちをバッタバッタと斬り倒している。
実際は、誤ってバルドにちょっと殴られたのを奇貨として、気絶したふり。そして、宿屋でさぼっていただけ。
モンスターなんぞとはいっさい出くわさなかった。
あれ、そもそも、何て言うモンスターを退治しに行ったんだっけ。
忘れちゃった。
何だか難しい名前だったとしか記憶がない。
いや、確か、結局そのモンスターは他のパーティが先に退治したんだよなあ。
それで、仕方無く、あたしらのパーティはすごすごと戻って来たんだっけ。
で、なぜか新聞ではあたしらが倒したことになっていた。
不思議だなあ。
あのパーティって、どこに行ったんだろう?
その後、ドラゴンにやられたんだっけ?
急にいなくなっちゃったんだよなあ。
記憶が曖昧だ。
何でギルドは新聞社に伝えるとき、間違えたんだろう。
ちと、気になる。
けど、四年前の話だからなあ。
さて、お次は冒険者ギルドが盗賊団に襲撃される。
あたしを演じるアナスタシアさんが、またかっこよくギルドの主人を助けて、盗賊団を斬りまくっている。
実際のあたしは、賭博場で大敗して用心棒と大喧嘩になって、店から放り出されて草むらをゴロゴロと転がっていただけ。
その間に、ギルドの主人はあえなく殺されちゃった。
盗賊団がドラゴンペンダントを落としていったことは無視。
で、盗賊団を追跡してたら、ドラゴン出現。
一旦、撤退し、軍隊登場。
その後、なぜか、一般人のあたしが軍隊の作戦会議にも参加して、指導までしている。
いいのかよ。
確か、その時は、あたしはドラゴン秘儀団の宿屋の主人を捕まえて、情報省員に引き渡し、その後、二階のベッドで横になってホラー小説を読んでいたはずだ。
ドラゴン秘儀団メンバーで、裏切者だがイケメンのロミオ少佐役も出てきた。
けど、この劇では真面目な軍人役で、アナスタシアさん演じるあたしと、昔、恋人だったという設定だったりする。
どんどん事実と離れていくぞ。
場面が変わって、シアエガ湖周辺で戦闘になる。
リーダーやバルド、アデリーナさん、サビーナちゃんを演じている役者たちも大活躍。
普通のドラゴンを倒したりしている。
実際は、大きい岩の陰に隠れていただけやんけ。
赤ひげのおっさん役なんか、なぜかあたしの名前を叫んで、カッコよく死んでいるぞ。
実際はレッドドラゴンが現れたら、真っ先に逃げ出したのに。
こうやって、神話が作られるのだろうか。
「プルム大隊長以外は全員似てますね~」
ロベルトがヘラヘラしている。
劇のプログラムで、ロベルトの頭をパシパシと叩く。
「痛い! 痛い!」
ロベルトがうるさく喚くので、劇場の職員に注意されてしまった。
それにしても、アナスタシアさんのような美人にあたしの役をやらせるとは、嫌味としか思えない。完璧美人の情報省参事官のクラウディアさん役をやればいいのにと思うけど、この劇、情報省やドラゴン秘儀団とか裏の人たちは、全く出てこないんだよなあ。
まあ、極秘事項ですけどね。
さて、ラスト近くにレッドドラゴン登場。
なかなか良く出来ているなあ。
迫力あるぞ。
カッコいい横顔のドラゴンだ。
頭と前脚くらいしかないけど。
けど、実際のレッドドラゴンは、こんなにカッコよくはなかったな。
バカでかいだけで。
顔は平面的で目も垂れていたぞ。
レッドドラゴンもカッコ良く伝説化するんかいな。
ロミオ少佐役はアナスタシアさんをかばって、戦死。
泣かせる場面ですな。
ロミオ少佐が死ぬ寸前にアナスタシアさんとキスなんぞしたりしてる。
あたしはキスなんぞ一回もしたことがないぞー!
さて、激怒したアナスタシアさんがレッドドラゴンに挑む。
クライマックスですな。
まあ、他の観客には受けているけど、事実と全然違うので、あたしはしらけてしまった。
しらけると、どうでもいいところに目が行く。
レッドドラゴンの前脚をうごかしている黒子さん、いまいち動きが悪いな。
もう少しちゃんと稽古しなさい、千秋楽だってのに。
あれ、なんか変だぞ。
キラリと光るものを持っている。
黒子はそんなもの持つ必要ないだろ。
おかしいぞ。
なんでドラゴンの前脚の黒子役がナイフ持ってるんだ。
え、まさか、ストーカーか。
舞台では、見事、アナスタシアさんがレッドドラゴンを倒して、大喝采。
ストーカーが近づいて来た。
手にナイフを持っている。
まずい、袖に隠してあるナイフを投げようとしたが、他の役者さんに当たると危険だ。
「やい! ストーカー!」
あたしは舞台に駆け上った。
ストーカーがアナスタシアさんを刺そうとするのを、止めようとして、格闘になった。
観客席は混乱状態。
舞台の端っこにいた北地区自警団員や警備隊員が駆けつけてきて、ストーカーと一緒にあたしまで袋叩きにする。
リーダーたちが舞台に上がり、何とか助け出された。
捕まった男は、やはり単なるストーカー。
アナスタシアさんとは握手も一回しかしていないそうだ。
しかし、それでアナスタシアさんと恋人になったと、勝手に妄想していたらしい。
まあ、あたしも妄想は散々やっているから、あんまり人の事は言えないけどさ。
けど、失恋しても相手を殺そうとかはしないぞ。
アナスタシアさんが恐縮している。
「プルムさん、助けていただいたのに、本当に申し訳ありません」
「アハハ、いいですよ、別に。大したケガじゃないし」
それに、この劇、あたしがリーダーに振られる場面がないしね。
そこはいいんだけど。
劇場から帰る時、さっき気になっていたことをリーダーに聞いてみた。
「確か、洞窟のモンスターって、他のパーティが退治したんですよねえ」
「そうだね。洞窟に入ったら、そのパーティの一人が出てきて、もう倒したよって言われて、がっくりした記憶があるなあ」
「その後、そのパーティって、どこに行ったんですか。ドラゴンにやられたんですか?」
「いや、その後、見てないなあ。もう、ドラゴン騒ぎで、それどころじゃなくなったよ」
うーん、リーダーも見てないのか。
まあ、今さらしょうがないね。
どうでもいいか。
あたしの恋愛とも全然関係ないし。
それにしても、寮に帰って、ふて腐れるあたし。
殴られたことじゃなくて、嫌なことを思い出しちゃったからだ。
あの後、リーダーに振られたんだよなあ。
リーダーは気づいてないけど。
ああ、なんて寂しい人生だ。
どうでもいいや。
もう寝るぞ!
冷たいベッドで一人。
やっぱり、寂しい……。
国立劇場に行くと長蛇の列だ。
北地区の警備隊員が入口に一応居るけど、なんとなくおなざりの身体検査及び荷物検査。
あたしは、袖にナイフを隠しているんだけど、あっさり通過する。
やる気ないね。
あたしに言われたくないだろうけど。
けど、事前に北地区警備隊大隊長に電話でちょっと聞いたら、初日から二週間経ったが、今のところ怪しい奴は見つからず、異常は無いようだ。
単に嫌がらせで、手紙を送っただけかもしれないな。
今日は千秋楽。
一応、客席の端っこに、つまらなそうに警備隊員が何人か立っている。
あくびしてる隊員もいるぞ。
やる気無し。
あたしと同じだな。
あたしたちは最前列の席だ。
リーダーの隣に座ろうとしたら、なぜかロベルトが先に座りやがった。
ったく、このチャラ男はもっと周りに気を使えと勝手に怒るあたし。
あれ、舞台の端っこの方に、私服で目つきの鋭い連中が何人か隠れているぞ。
いや、あれは北地区の自警団員だな。
警備隊員より張り切っている感じ。
給料を貰っているほうがあくびして、貰ってない方がやる気を出しているぞ。
不思議ですなあ。
ボランティアなのに、ご苦労様です。
劇場は超満員だ。
立ち見客までいるぞ。
人気あるんだね、アナスタシアさん。
演劇が予定の時間通り始まった。
肝心の劇の内容は、全てアナスタシアさん演じるあたしが仕切っている。
最初は、シアエガ湖近くの洞窟のモンスター退治。
舞台上では、あたしを演じているアナスタシアさんがかっこよく、モンスターたちをバッタバッタと斬り倒している。
実際は、誤ってバルドにちょっと殴られたのを奇貨として、気絶したふり。そして、宿屋でさぼっていただけ。
モンスターなんぞとはいっさい出くわさなかった。
あれ、そもそも、何て言うモンスターを退治しに行ったんだっけ。
忘れちゃった。
何だか難しい名前だったとしか記憶がない。
いや、確か、結局そのモンスターは他のパーティが先に退治したんだよなあ。
それで、仕方無く、あたしらのパーティはすごすごと戻って来たんだっけ。
で、なぜか新聞ではあたしらが倒したことになっていた。
不思議だなあ。
あのパーティって、どこに行ったんだろう?
その後、ドラゴンにやられたんだっけ?
急にいなくなっちゃったんだよなあ。
記憶が曖昧だ。
何でギルドは新聞社に伝えるとき、間違えたんだろう。
ちと、気になる。
けど、四年前の話だからなあ。
さて、お次は冒険者ギルドが盗賊団に襲撃される。
あたしを演じるアナスタシアさんが、またかっこよくギルドの主人を助けて、盗賊団を斬りまくっている。
実際のあたしは、賭博場で大敗して用心棒と大喧嘩になって、店から放り出されて草むらをゴロゴロと転がっていただけ。
その間に、ギルドの主人はあえなく殺されちゃった。
盗賊団がドラゴンペンダントを落としていったことは無視。
で、盗賊団を追跡してたら、ドラゴン出現。
一旦、撤退し、軍隊登場。
その後、なぜか、一般人のあたしが軍隊の作戦会議にも参加して、指導までしている。
いいのかよ。
確か、その時は、あたしはドラゴン秘儀団の宿屋の主人を捕まえて、情報省員に引き渡し、その後、二階のベッドで横になってホラー小説を読んでいたはずだ。
ドラゴン秘儀団メンバーで、裏切者だがイケメンのロミオ少佐役も出てきた。
けど、この劇では真面目な軍人役で、アナスタシアさん演じるあたしと、昔、恋人だったという設定だったりする。
どんどん事実と離れていくぞ。
場面が変わって、シアエガ湖周辺で戦闘になる。
リーダーやバルド、アデリーナさん、サビーナちゃんを演じている役者たちも大活躍。
普通のドラゴンを倒したりしている。
実際は、大きい岩の陰に隠れていただけやんけ。
赤ひげのおっさん役なんか、なぜかあたしの名前を叫んで、カッコよく死んでいるぞ。
実際はレッドドラゴンが現れたら、真っ先に逃げ出したのに。
こうやって、神話が作られるのだろうか。
「プルム大隊長以外は全員似てますね~」
ロベルトがヘラヘラしている。
劇のプログラムで、ロベルトの頭をパシパシと叩く。
「痛い! 痛い!」
ロベルトがうるさく喚くので、劇場の職員に注意されてしまった。
それにしても、アナスタシアさんのような美人にあたしの役をやらせるとは、嫌味としか思えない。完璧美人の情報省参事官のクラウディアさん役をやればいいのにと思うけど、この劇、情報省やドラゴン秘儀団とか裏の人たちは、全く出てこないんだよなあ。
まあ、極秘事項ですけどね。
さて、ラスト近くにレッドドラゴン登場。
なかなか良く出来ているなあ。
迫力あるぞ。
カッコいい横顔のドラゴンだ。
頭と前脚くらいしかないけど。
けど、実際のレッドドラゴンは、こんなにカッコよくはなかったな。
バカでかいだけで。
顔は平面的で目も垂れていたぞ。
レッドドラゴンもカッコ良く伝説化するんかいな。
ロミオ少佐役はアナスタシアさんをかばって、戦死。
泣かせる場面ですな。
ロミオ少佐が死ぬ寸前にアナスタシアさんとキスなんぞしたりしてる。
あたしはキスなんぞ一回もしたことがないぞー!
さて、激怒したアナスタシアさんがレッドドラゴンに挑む。
クライマックスですな。
まあ、他の観客には受けているけど、事実と全然違うので、あたしはしらけてしまった。
しらけると、どうでもいいところに目が行く。
レッドドラゴンの前脚をうごかしている黒子さん、いまいち動きが悪いな。
もう少しちゃんと稽古しなさい、千秋楽だってのに。
あれ、なんか変だぞ。
キラリと光るものを持っている。
黒子はそんなもの持つ必要ないだろ。
おかしいぞ。
なんでドラゴンの前脚の黒子役がナイフ持ってるんだ。
え、まさか、ストーカーか。
舞台では、見事、アナスタシアさんがレッドドラゴンを倒して、大喝采。
ストーカーが近づいて来た。
手にナイフを持っている。
まずい、袖に隠してあるナイフを投げようとしたが、他の役者さんに当たると危険だ。
「やい! ストーカー!」
あたしは舞台に駆け上った。
ストーカーがアナスタシアさんを刺そうとするのを、止めようとして、格闘になった。
観客席は混乱状態。
舞台の端っこにいた北地区自警団員や警備隊員が駆けつけてきて、ストーカーと一緒にあたしまで袋叩きにする。
リーダーたちが舞台に上がり、何とか助け出された。
捕まった男は、やはり単なるストーカー。
アナスタシアさんとは握手も一回しかしていないそうだ。
しかし、それでアナスタシアさんと恋人になったと、勝手に妄想していたらしい。
まあ、あたしも妄想は散々やっているから、あんまり人の事は言えないけどさ。
けど、失恋しても相手を殺そうとかはしないぞ。
アナスタシアさんが恐縮している。
「プルムさん、助けていただいたのに、本当に申し訳ありません」
「アハハ、いいですよ、別に。大したケガじゃないし」
それに、この劇、あたしがリーダーに振られる場面がないしね。
そこはいいんだけど。
劇場から帰る時、さっき気になっていたことをリーダーに聞いてみた。
「確か、洞窟のモンスターって、他のパーティが退治したんですよねえ」
「そうだね。洞窟に入ったら、そのパーティの一人が出てきて、もう倒したよって言われて、がっくりした記憶があるなあ」
「その後、そのパーティって、どこに行ったんですか。ドラゴンにやられたんですか?」
「いや、その後、見てないなあ。もう、ドラゴン騒ぎで、それどころじゃなくなったよ」
うーん、リーダーも見てないのか。
まあ、今さらしょうがないね。
どうでもいいか。
あたしの恋愛とも全然関係ないし。
それにしても、寮に帰って、ふて腐れるあたし。
殴られたことじゃなくて、嫌なことを思い出しちゃったからだ。
あの後、リーダーに振られたんだよなあ。
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ああ、なんて寂しい人生だ。
どうでもいいや。
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